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天上の弦 9・10/山本 おさむ

2007年03月18日
4091806988天上の弦 9 (9)
山本 おさむ
小学館 2006-08-30

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4091808980天上の弦 10 (10)
山本 おさむ
小学館 2006-12-26

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「天上の弦」ココに完結です!

1~5巻までの感想はこちら
6、7巻感想はこちら
8巻感想はこちら

主人公の陳昌鉉が21年ぶりの帰郷。老いた母や妹と涙の再会です。日韓の国交回復によりようやく実現(昭和40年、1965年ですね)。
おかあさんは、陳昌鉉の生活の基盤が韓国ではなく日本にあると、言わずとも理解しています。母の偉大な愛情に感動の嵐。

そして、日本に戻った陳昌鉉は、ストラディバリウスの魅力・・というよりも魔力に取り付かれてしまい、寝ても醒めてもその「ニス」の事ばかり考えるようになってゆく。
この、ニスへのこだわりが陳さんの作るバイオリンが「東洋のストラディバリ」と言われるゆえんと言っても過言じゃないほどの熱の入れようで、執念のすさまじさに圧倒されます。
もちろん、家庭も子どももないがしろ。芸術家として成功する事が必ずしも一般的な幸せな生活と結びつくわけではないと言うか、はっきり言えばわたしだったらこんなだんなさん、ゴメンして欲しいと思う。素晴らしいのは奥さんのナミさんです。陳さんの好きなようにさせておいて、一度だけ怒ったのは子どもが怪我をした時だけ、という・・・。わたしならもうとっくに「いい加減にして!」と三行半じゃないか?
映画の「ビューティフル・マインド」とか杉原千畝さんの生涯を思っても、影になり日向になり支える奥さんのちからは、言葉じゃ言い表せない。こう言う奥さんを得た事が、彼らの幸せだったのじゃ?
まぁともかく、この奥さんの支えがあり、陳さんはニスの秘密に肉薄してゆくわけです。
赤ちゃんのウンチを見ればその色にニスの秘密があるんじゃないかと思ってみる。動物性のたんぱく質が秘密を握ると思えば、セミだのミミズだのをニスに混入させてみる。演奏者の楽屋に忍び込んで、ストラドの表面を舐めてみたり、裏版を持っている人がいると知ると押しかけて、裏版を貸してくれと迫ったり。どんなに苦労して、どんなに人から認められても自分ではストラディバリの足元にも及ばないと思いながら、染料を求めてペルーからメキシコからイタリア・・・!!どこまででも飛んでゆく。そのバイタリティは尊敬すると言うよりも、呆れるかな?そこまでする?みたいなね。


コンクールに自分の作ったバイオリンを出展する事に決め、製作に余念がない陳さんの元へお母さんの訃報が届き、韓国で葬儀を終えた陳さんは、バイオリンの為にお母さんをないがしろにしてきたという思いから、バイオリン製作への意欲をなくしてしまう。
救ったのはまたも妻の南伊さん。
夢にお母さんが出てきて、「しあわせだった」と言っていたと、陳さんに言うのです。

アメリカでのコンクールでは見事に、バイオリン、チェロ、ビオラの3つとも最終選考に残り(なんと1500挺のなかで!!)無名だっただけに注目を浴びます。
君は何者だ?
君の師匠は誰だ??
独学です。と言っても誰にも信じてもらえず。
強いて言うならアントニオ・ストラディバリかな。
と答える陳さん。読者なら深く納得する所です。

巻末に山本おさむ氏との対談が掲載されていますが、これも面白かった。一度陳さんのバイオリンの奏でる音を聴いてみたいものです。なんちって。

あさみさんにお借りしました。ありがとうございました。
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天上の弦 (8) /山本 おさむ

2006年05月08日
4091803296天上の弦 8 (8)
山本 おさむ
小学館 2006-04-27

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8巻出てますよ。まだのかた、お見逃しなくね♪

前回までの感想は

1~5巻までの感想はこちら
6、7巻感想はこちら

↑です。

さて、バイオリンを売るために東京へ出てきた陳昌鉉。
売れなくて、絶望していたところに現れたのが篠崎弘嗣だった。
家まで連れて行かれ、表札を見て日本の三大バイオリニストの一人であることに気付き、驚く陳。
家の中に招き入れられ、そのバイオリンでの演奏を聴かせられます。
一流の演奏家によって、自分の作ったバイオリンから見事な音が出るのを目の当たりにして(耳のあたりって言うのか?)感動するのです。
そして、篠崎との出会いは陳を絶望から救ってくれるのです…!!!

だけど、決して、昌鉉の作るバイオリンがガバガバ売れるようになるわけではない。相変わらず、楽器店前で、門前払いです。
そんな昌鉉に、篠崎の言う言葉が印象的です

「悩んでくれたまえ 陳君
 われわれ演奏者もバイオリンに命を託すんだ
 いいものを作るため
 もっともっと悩んでくれたまえ」

そんな昌鉉の作ったバイオリンで、ひとりの学生が芸大を受験します。
彼の使ったバイオリンは3000円。製作者は陳昌鉉、
くちコミで、その名前が広がりつつあるようです。


そして、今回、日本のストラディバリウスと呼ばれるまでの、大事なプロセスだと思うのだけど、ニスについて試行錯誤している姿が印象的!
このとき、「クレモナ」と言う都市の名前が挙がるけど、これって「耳をすませば」の聖司くんが目指した街ですね!!こんなところで嬉しかったり♪

そして舞台はいよいよ、21年ぶりの祖国朝鮮へ!!!
オモニの声が胸に響きます!!

9巻を楽しみに♪

あさみさんにお借りしました。ありがとうございました♪

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天上の弦・7/山本おさむ

2006年01月30日
天上の弦 7 (7)
山本 おさむ
4091871178


前巻で予想された陳昌鉉の淡い初恋が本格化して、いよいよ南伊(なみ)を本気で愛し始める。
自分のすべてを出し切って、バイオリンを作る、そのことが南伊へ想いを打ち明ける「資格」だと思う彼は焦るあまり、方向性を見失う。
そこで岩瀬という老人(このひとは鈴木バイオリンで、ネック部分の細工を担当する。このひとに、陳昌鉉はバイオリンの細工の指南を受けていたのだ)がヒントをくれる。
それは「無心」ということ。
「無心になって初めて仕事に花が咲く」と、老人は教えてくれる。
そして、ついに、ついに、満足のできるバイオリンが出来上がったのだ。
そのバイオリンで南伊に聞かせたのはベートーベンのロマンス。
そして南伊へプロポーズ。しかし…!!??

この7巻も激動の連続です。
結婚に至るまでも試練が一杯だったけど、新婚生活はやはり苦労の連続。
おまけに、ふるさとでは母親と妹が大変な目にあってると知り、とても冷静でいられません。
新婚のふたりが考えたのは、バイオリンを「売る」こと!

しかし、それも簡単に行くはずもなく…。

そこに現れた謎の人物篠崎。
篠崎さん!!何とかしてください!!読者一同心の叫びです。

8巻が待たれます!!!



6巻の感想は↓


天上の弦 6 (6)
山本 おさむ
409187116X


あらゆるものの中に音はある。
私が集めた唐桧や楓の木の中にも……

私は木を削り
その中に眠っている音を響かせてみせる!!



八方塞の陳 昌鉉がたどり着いた長野県の山奥。

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Hey!!ブルースマン/山本おさむ

2005年08月13日
Hey!!ブルースマン 1 (1)
山本 おさむ
4063289346


若い頃、ブルースと言う音楽に魂を奪われた
なにも考えず ああこんなカッコイイ音楽を俺もやりたいと思った
そして年を重ね 旅を続け 気が付けば50歳になっていた
自慢じゃねぇがこの年になって 俺達には金もねぇ
自分の家もねぇ
ゴルフなんかした事もねぇ
ただやりたかった音楽を捨てずにずっとやってきただけだ
満足もしてねぇ 後悔もしてねぇ
・・・(GIG1 The Last Live at Tokyo より)



西島(Vo.)内山(G.)松森(Dr.)ゴリ(B.)尾崎(Hrm.)
「ブルース・ファイブ」のメンバーたちだ。
西島の病気のためにやむなく解散という結論を選んだ5人は
東京のちいさなライブハウス「ルースター」で
最後のライブを行う。
そして5人は、今まで自分たちを支えてくれた全国の
小さなライブハウスやお客さんたちに「ありがとう」と
伝えるためのロードに出るのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どんぐりの家」「天上の弦」の山本おさむ氏が
またまた熱いメッセージを送ってくれました!
今回は「ブルース」だ。

50才の病気もちのおっさんが、ポンコツの車にスシ詰めになって
ホテル代にも事欠きながらも、全国のファンたちに
「ありがとう」と伝えるためにロードを続ける。
バンドのメンバーたちも過去を思い出し、対峙したりしながらの
最後のロードなんだけど
演奏する方、ライブハウスの経営者、往年のファンたち
いろんな思いが交錯して生み出される人間ドラマに
ホロっとさせられた。
20年、彼らはバンドを組んでブルースをやってきたのだけど
最後のロードで気づく事も多い。
今まで気がつかなったような、たとえばライブハウスの経営者などの想いやありがたさ・・・自分たちがいかにブルースがすきか・・・解散なんてしたくない・・・
そんなことに気が付いたり再認識しながら、トラブルに見舞われつつ、こなして行くライブの一つひとつが印象的です。

巻末に、「へぇ~ ブルースマン」
という往年の名プレイヤーたちを紹介するエッセイが載ってるのだけど
これは「永井“ホトケ”隆」氏が書いておられるのだけど
この人はこういう人らしい⇒コチラ
作品中にも、B・B・キングが来日した時に、前座を勤めたと言うエピソードが
主人公たちのタイバンの若き頃のエピソードとして挿入されている。

こういうのを読むと、ブルースも聴いてみたくなりますね!!
「へぇ~ ブルースマン」の中にはレイ・チャールズの章もあり!

楽しければ歌い、悲しければ歌う
人が生きているところに音楽がある。



ジャンルはともかく私も音楽が大好きだから(聴くだけ)
主人公たちの生き方にエールを送りながら読んだのです

あさみさんに回していただきました。
ありがとうございました!

Hey!!ブルースマン 2 (2)
山本 おさむ
4063289729

Hey!!ブルースマン 3 (3)
山本 おさむ
4063289915

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どんぐりの家/山本おさむ

2005年07月22日
どんぐりの家 [少年向け:コミックセット]
山本おさむ
B00007CBFW

圭子は生まれたときから、耳が聞こえなくて、知的障害もある。
人よりも発育が遅いと医師に相談した所、2歳3ヶ月でその事が分かる。
「この子は耳が聞こえません。知的障害もあります。
だから、しゃべれないし、読み書きも出来ない。
普通の学校にはいけないだろうから、そのつもりで」冷淡に言い放つ医師。
成長するにつれ行動範囲も広がり、目を離した隙に、人に家に裸で上がり込んだり、お店の品物を勝手に荒らしたり、警察沙汰になってしまったり、親は気が休まる時がない。家にいても、うち中を荒らしたり暴力を振るったり、自分を傷つけてしまったり、もちろん粗相も・・・。
夫はそんな家庭から目をそらしているかのように、お酒を飲んだり、妻に怒ったり。夫婦で落ち着いた時間も持てないありさまだ。
相談員には「この子はまだアナタを親として認識していません」と言われたりする。
「この子が私から普通の生活を奪っている、この子にとって私は何?」と疲れ果てたお母さんは悩む、逃げたいとさえ思う。
「なぜうちにだけ、こんな子が生まれたのか。なぜ」という叫びは悲痛だ。しかし、あるとき、喘息の発作を圭子が起こし、意識がなくなりかける。救急隊員が「声をかけて、呼びかけて!」と言う。
「この子にいくら呼びかけても耳が聞こえない」と思う母親を横に育児に非協力的だった父親が叫びだす。
「圭子~!圭子~~!」と。
すると、聞こえているかのように体をくねらせる圭子。それをみて初めてお母さんも「生きて!圭子!」と、心から思うのだ。このことがはじめて、家族に連帯感をもたらした。
ここから、圭子ちゃんを本当に愛している事に気づいたと言えるんだろう。初めて家族としての出会いが訪れた瞬間、それは感動的だった。
ここまでの話はほんの序盤です。
たった、1話にこれだけの内容がぎゅっと詰まっているのだ。
これからもまだまだこの家族の紆余曲折はある。それが、私たちに深く問題提起していて、考えさせられる。
障害があっても自分の子供だから可愛いのでは?とか、そばから見たら思うかもしれない。
あるいは「うちの子はこんな子どもじゃなくて良かった」と思うかもしれない。
実際、知り合いの教員で障害児を受け持っている人が(パートで)「うちの子どもは普通に生まれて着てよかった、ッて思う」と言っていた。
これを聞いて私は、それはあんまりその障害児の子達とその親御さんに対して失礼な言い方ではないかと思った。
だって、もしも私が親なら子どもの先生が、子供の事をそんな風に思っていつも接しているなんて知ったら、とっても悲しくなるに違いない。
しかし、そんなのは奇麗事なのかもしれない。
私だって表面はかっこいいことを言えても、心の中は同じだ。
たかが歯並びが悪いだけでそれが、苦になるし、また、ちょっと色が黒ければそれも苦になる、もっと指が綺麗だったら良かったのに、なんて思ったり。
成績だって、悪いと悩むし、思う通りに成長してくれないと、また悩む。
そんな私がいくら何を言っても、表面上でのことでしかない。
このマンガはとっても感動的だ。
涙が流れて止まらない。家族だけではなくて、子どもたちに関わる先生たちの奮闘や愛情も、すばらしい。2巻も3巻もやはりなけた。
でも、本当は「泣けたわ~」で、終わらせてしまってはいけないと思う。障害のある人も、同じように生きている。みんなどこかしら、違うんだ。私だってそうなんだ。それをもっと真剣に見つめる所からはじめなければならない・・・そう思う。難しいけど・・・。
マンガの中でも、障害児たちを取り巻く環境の厳しさが描かれている。まず、家族。地域、学校・・。教育、福祉。いろいろ、考えさせられた。ひどいなーとか、もっとちゃんとしてやれよ!なんて人事みたいに考えていたら、何にも始まらない。自分の生きる社会の事だと、心からそう思えない限りは。
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天上の弦/山本おさむ

2004年12月03日
天上の弦 5 (5)
山本 おさむ
4091871151

1929年、現在の韓国慶尚北道の小さな村で生れた少年、陳昌鉉。
お乳の出ない母親は、日に日に栄養失調で弱っていく我が子にお乳を恵んでもらうために、毎日山の向こうの隣村まで足を運んだ。
お陰で一命を取り留めた昌鉉だったが、お乳をくれた母親の赤ん坊が、突如死んでしまう。
もう、お乳をもらいに来ないでくれというその家のあるじ。
自分の子供が死んだのに、人の子供に乳をやることはあまりにも母親にとってむごい事だと。
死んだ赤ちゃんのために祈る昌鉉の母。赤ちゃんのために祈りながらも我が子昌鉉をお守りくださいと念じずにいられないのだった。
そのとき、天上から聞こえてきた美しい音、それは旅人が奏でるバイオリンの音色だった。そして、その音を聞いて全身で喜びを表す赤ん坊の昌鉉、それがバイオリンと昌鉉の出逢いだった。

「東洋のストラディバリウス」と呼ばれる名器を作り上げた稀代のバイオリン製作者、陳昌鉉氏。
その波乱の人生を描いた自伝「海峡を渡るバイオリン」(河出書房新社)を2002年に出版。
それを漫画化した作品が、本作だということです。
今5巻までを読んだのだけど、誕生から戦争、来日、終戦、そして戦後の混乱を生き抜き、バイオリン作りへの道を歩もうとするところまでが描かれている。
ここまでが既に波乱万丈の少年時代なのだ。
どのシーンもすごく印象的で感動せずにいられません。
お母さんの愛情も大きく感動的だし、日本人教師相川喜久衛さんとの出会いと分かれ。
日本の軍国主義が幅を効かせる韓国で、辛い思いをする昌鉉や村の人たち。
日本に渡って、教師資格をとろうとしても韓国籍だということがその夢を阻む。母親と誓った夢なのに。
そして、その絶望の中で、バイオリンを作ると言う目的を見つける。けれど、その夢もまた韓国人だということで思うようにならないのです。
また、母と妹のいる祖国でも、朝鮮戦争という同族人同士の悲惨な戦争が悲劇を生んでいる。

ただ、こんな暗い時代に、絶望的な状況に置かれながらも、いつも前を見て諦めず自分にできることに挑戦していく主人公や、遠く離れているけれどお互いに思い合いながら生きる母と妹の真摯な姿が、読者をひきつけて離しません。
とりあえず5巻までの感想まで。


海峡を渡るバイオリン
陳 昌鉉
4309014941

天上の弦―The life of a man who headed toward Stradivari (4)
山本 おさむ
4091871143

天上の弦―The life of a man who headed toward Stradivari (3)
山本 おさむ
4091871135

天上の弦―The life of a man who headed toward Stradivari (2)
山本 おさむ
4091871127

天上の弦―The life of a man who headed toward Stradivari (1)
山本 おさむ
4091871119

[や・ら・わ行のマンガ家]山本おさむ | Comments(1) | Trackback(0)
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