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ブルー・ロージス―自選作品集/山岸 凉子

2007年06月08日
4168110508ブルー・ロージス―自選作品集
山岸 凉子
文芸春秋 1999-11

by G-Tools


文庫版の自選作品集です。
収録作品は↓です。

●パエトーン
●星の素白き花束の
●化野の…
●ブルー・ロージス
●銀壺・金鎖
●学園のムフフフ

●パエトーン
チェリノブイリ原発が爆発して史上最悪の事故となりましたが、当時広瀬隆氏の「危険な話」というのが一世を風靡しました。この本に感銘を受けたおりょーさまが絵解きという方法で反原発を語る一作。

●星の素白き花束の
絶世の美少女である母違いの妹を引き取った主人公の、戸惑いと苛立ち、そして妹と父親の衝撃の真実。

●化野の…
ある女性、歩いても歩いても中々家に帰れない、道中に出会った色んな不思議はいったい何を意味するのか…。

●ブルー・ロージス
自分が傷つく事を恐れて男性を正面から見られない女性、それをブルー・ロージスという。自分に自信がない主人公は、初めて出来た彼氏に誉めてもらう事で自信が出来て性格も明るくなるのだけれど…。

●銀壺・金鎖
画家とその妻がいた。画家は美しい妻と一緒になるために家族を捨てた。その妻もまた娘と夫を捨てて画家のもとへ来た。今画家が死にその妻も死に、二人の娘が、ふたりの元の家族の子供たちを呼び寄せる。それぞれが画家とその妻、そして自分の半生を振り返る。

●学園のムフフフ
クラスの注目を集めるしとやか美人の正体は!





今回初めて読んだのは「ブルー・ロージス」です。
イラスト画家の主人公、黎子(たみこ)は29年間彼氏のない生活。そろそろ本気で彼氏が欲しいと思っていたところに現れたのが、2歳年下の編集者、中嶋和久。カッコよくて一目で気に入った黎子ですが、和久もまた黎子が気に入ったようで、ふたりはすぐに恋人関係に。
しばらくは甘い時間が続きますが、やがて和久には妊娠までしている恋人がいる事がわかります。打ちのめされる黎子ですが、いつかはきちんと立ち直る事ができるのです。皮肉な事に、その立ち直るための自信をくれたのは和久だったのです。

これは、何気なく口にしている言葉が相手を呪縛したり、傷つけたりしていると言う事が根底に描かれています。そもそも、黎子はすごく自分に自信がないのです。それは幼いころから「何をやってもダメ」とか「妹を見てご覧、もっと上手だよ」などといわれ続けてきたので、それが「何事にも自信がない」性格を作り上げてきたと。
でも、和久と知り合い、ちょっとしたお料理も「美味しい!」と言ってくれたり「可愛い」と誉めてくれたり。それが黎子を明るく前向きな性格にしてゆく。
実家の法事に行くくだりがあるのだけど、ここで妹に「結婚するかも」と打ち明けると妹は何気なく「でも、姉さんの事だからすぐに離婚するかもね」と言うのです。これを「言ってはいけない言葉」と思わないこの妹、こう言う人はどこにでもいるし、また自分の中にもそんな部分があるかも。
自分の価値観のなかで苦労なく生きてきた人間は、価値観が違えば傷つく言葉も違うのだと言う事すら分からない…と、おりょーサマは言います。
山岸作品、不倫モノは多いけど中々こんな風に気持ちよい終わり方をするのはありません。この主人公は皮肉だけれど、和久からもらった自信があるから「また人を愛せると思う」と前向きな気持ちになります。
自分に自信を持つ事ができれば、自分を愛せる。そして自分を本当に愛する事ができる者が、他人を心から愛せるのだと。
そこにきちんとトラウマを払拭して立ち直ろうとする「人の強さ」が見えて深い感動を覚えます。

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アラベスク/まだまだ山岸凉子フェア!

2007年06月02日
ryoko



心優しいお友達から借りまくって、山岸凉子フェアーを続けています。「日出処の天子」は以前にも貸していただいたんだけど、2回目になる今回、よりいっそう皇子の孤独が見に沁み切なくなり母性本能をくすぐられ、そしてなおかつその「オレ様」ぶりに(圧倒的なオレ様ぶりですよね。千秋も負けるよね。。。って比べるのが間違ってるのか)くらくらさせられ…。読むのがもったいないくらいです。

で、今回お初なのが「アラベスク」と「ツタンカーメン」。「ツタンカーメン」はまだ読んでないんだけど「アラベスク」読みました。もう一気読み!!面白いっっっ!!!
やっぱりどこか「テレプシコーラ」に似ています。主人公のノンナがものすごく自分に対して自信がないところとか、姉がいて姉のほうが一見才能が豊かで母が期待を寄せている所など。

(というわけで、これからはちょっと「テレプシコーラ」のネタバレに関係する記述も出るかも知れず、「テレプ」未読の方はご注意くださいね。)


でも、ノンナはユーリ・ミロノフに見出されて、中央(レニングラード)に出てゆく事になり、華やかで栄光ある…だけど、とっても厳しいバレエの世界で心身ともに翻弄されつつ、ミロノフに見守られ指導されながら見事に開花してゆくのです。
べそべそ泣いてばかり、劣等感の塊のノンナがその劣等感とは裏腹に際立った才能を発揮して頂点までのし上がってゆく。これが自信満々の主人公であればこんなに面白く感じなかっただろうけど、ノンナの性格にどうにも引き付けられました。こんなに気が弱いと普通はイライラさせられるのだけど、それがそうじゃなくって応援したい気持ちになるんですよね~。
そのほかにも、この話の素敵なところは、嫌なやつがいない所じゃないでしょうか。最初にノンナに対してライバル心をむき出したり、嫌味な事を言ったりしたりしても結局はノンナにとって大事な「友達」になって行くのです。その点「テレプシコーラ」よりも気持ちの良い爽やかさのある物語だったと思う。
それに一番大事なのは、ノンナとミロノフのじれったい関係ですよ!もったいぶるのが好きだから、おリョー様は(レミル談)。まんまとその手に引っかかりじらされて翻弄されたよ。読者として!(笑)
また舞台が日本じゃなくロシア(当時はまだソビエト連邦でした)だから、スケールが大きい。日本が舞台だと親近感はあるので、そこがよいのだけどね。

物語は大きくは4つの流れに分かれます。


第一部

その1:ミロノフとの出会い。そして、キエフからレニングラードに行き、生涯の親友となるアーシャやマイヤと出会う。最初はヘタクソながらも見るものが見れば才能を感じさせる、宝石の原石を見せる。またミロノフの友達で映画監督のリジンスキーにも出会う。リジンスキーは映画「アラベスク」を撮るつもりなのだった。

その2:モスクワのボリショイに行き、ラーラと「瀕死の白鳥」をダブルキャストで競い合う。最初ラーラばかりが評判よく、ノンナは酷評しか書かれなかったけれど、公演が続くうち次第に演技がよくなり認められるようになってゆく。しかしやっかんだラーラの企みで、最後の日に全く良い演技が出来ず、映画の「アラベスク」の主役モルジアナはラーラに決まる。落ち込んだノンナは逃避行。家にも帰れず彷徨うノンナは見知らぬ街の年配のバレリーナ、オリガに助けられバレエへの情熱を取り戻す。オリガの息子のアレクがキュートですなムッフッフ♪
オリガの代役で舞台に立ったノンナの素晴らしい演技は誰もが目を奪われ、それが元でミロノフのところにノンナの所在が分かる。さっそくレニングラードに飛ぶミノロフ。
舞台の上で知らないうちに相手がミロノフに代わっていて、顔を見ずともミノロフの存在を確信するノンナ。舞台が終わってから噴水あたりでノンナを待ってるシーンは…萌える~~!!!
映画「アラベスク」の主役は結局ノンナに決まり、ラーラはあっさりバレエを捨てて去っていく。「天才はとんとん拍子に簡単に地位と名声を手に入れる。だから同じようにあっさりと手放すのだ」と。

その3:舞台はパリに。ノンナとミロノフの二人は、パリ・オペラ座バレエ団から客員舞踊手として招かれる。モダンバレエの洗礼を受けつつ、基礎から完璧な演技も披露して火花を散らす。
団員のマチューとロベールとはミラージュの演技やアラベスクを踊りあい自分たちにないところを吸収しあう。ロベールは「面白い顔」からは思いもつかないすごいダンサーなので「ふざけた顔からは想像もできない」などとノンナに言わしめる。
しかしマチューには辛い運命が。白血病だったのだ…。マチューはノンナに「影」の踊りを託して急遽舞台を降板、そのまま入院。ジゼルを踊りたい!その夢半ばにして逝ってしまう。兄妹が多いのも涙を誘うが、ロベールの悲しみも胸に迫る。ロベールはマチューの死を見取るよりも舞台で踊る事を選ぶ。そしてノンナは「私がマチューよ、マチューの心を踊るわ」と。ロベールは踊りながら「病院にかけつけないぼくを、君は怒らないね。舞台で死にたいと言ったきみだもの。今ぼくはきみと踊っている」と思い、またノンナは「マチュー見てて、いま私はあなたとひとつになって舞台に立っているのよ。あなたはやはり舞台の上で散ってゆく・・・」と思う。泣ける~~!!
ジゼルの衣装を着けて棺に横たわるマチューの姿にまた泣ける~~!!
そのあとノンナたちはソビエトに帰るので、また別れも泣ける。
が、戻った二人を待っていたのはミロノフに与えられた。ソ連邦人民芸術家賞だった。そしてノンナにもウラノワ特別賞が与えられたのだった。



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妖精王/山岸凉子

2007年05月19日
youseiou



念願の「妖精王」。お友達のお陰で読むことが出来ました。ありがとう!Mさま~♪

連載は、1977年(昭和52年)の「花とゆめ」9号から翌年の21号まで隔号で連載。「セイレーン」「ハーピー」など、この「妖精王」にも登場する妖精たちの短編も書かれていますが、集大成と言う感じでしょうか?

物語は、今読んでも非常に面白い胸が踊るドキドキわくわくのファンタジーです。絵はもちろん古いけどね、5巻という長さだけどあっという間に読めてしまいました。


主人公は『爵』と書いて「ジャック」と読みます。
日本人です。でも曾祖母がイギリス人なのです。
がり勉の受験生だったけど、肺をわずらい北海道の親戚に療養のために居候に来たジャック。最初は勉強の事が気がかりで、北海道にも親戚のいとこたちにも馴染めないんだけど、身の回りで不思議な現象がたびたび起きて、気をとられます。そのうちに風野 燐(ふうの りん)といういとこが現れ、初対面だけど妙に懐かしい気分にさせられたり。燐はじゃっくに角笛のペンダントをくれます。しかし、その角笛を奪おうとして登場した美女(その正体はダークエルフの女王クイーン・マブ)のせいでジャックは夢の中で危ない目にあいます。そこに助けに登場したのが風野燐、夢の中では「クーフーリン」と名乗ります。クーフーリンはジャックを助け「角笛を決して手放してはいけない」と言うのですが、しかし結局角笛はすぐに燐の愛馬ケルピーによって奪われてしまうのです。
角笛を探してジャックは「月影の窓」から不思議な世界へ入り込みます。そこが妖精たちの世界、ニンフィディアだったのでした。
小鹿の妖精プックと友達になったジャックは角笛を探すけれど、クイーン・マブが仕掛けた鶏頭蛇尾獣(コカトライス)に、プックが大怪我をさせられてしまいます。その怪我を治すには、黄泉の国に通じる井戸の番人、井冰鹿(イヒカ)に「悩む者」と言う薬を分けてもらわねばならない。大変な思いをしてなんとか井冰鹿のもとへたどり着いたジャックはそこで大事な角笛と引き換えに「悩む者」を分けてもらいます。
しかし、素直に「ありがとう」と言うジャックに、心を開いた井冰鹿は、角笛を返してくれるのでした。
さて、「現実の世界」に戻ったジャックですが、燐から自分が「妖精王」だと知らされます。
ニンフィディアはかつて妖精王ナッドとその子グィンとによって治められていたのです。そしてジャックがそのグィンが復活した姿だと、リンは言います。ジャックが「妖精王」なのです。クーフーリンはグインの第一の従者だったのです。

同じ頃、人間界でも地震が頻繁に起きたりして不穏。それはクイーン・マブがダークエルフと手を組み、人間界を支配しようとしているからでした。それを防ぐためには、クイーン・マブの「水の指輪」を奪わねばならないのです。
「水の指輪」とはクイーン・マブが「グィンが失った言葉」を水に閉じ込めて指輪にしたものなのです。
新しい妖精王としてジャックは、プックとともに魔州湖(ましゅうこ)を目指すのでした・・・・。


と、こんな感じの物語で
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[や・ら・わ行のマンガ家]山岸凉子 | Comments(1) | Trackback(0)

「テレプシコーラ」おめでとう!

2007年05月10日
第11回手塚治虫文化賞 マンガ大賞に山岸凉子さんの「テレプシコーラ」が選ばれました。おめでとうございます!!
審査員に萩尾望都さんが入っておられ、強力なプッシュをされたであろうと推察します。

山岸さんは「アラベスク」を完成させたあとはバレエのことを忘れておられたそうで、しかし、89年にローザンヌ国際バレエコンクールで熊川哲也氏日本人初の金賞を受賞したのをきっかけに「バレエマンガを描ける」と思われたそうな。
そこでせっせとバレエ教室を見学するとそこにはびっくりするようなスタイルの良い少女たちがバレエを踊っていいる。それをご覧になり、日本人の少女を主人公にする事に決められたそうです。

他にも小学館漫画賞や講談社漫画賞などもありますが、これらはやはり自社出版の作品に賞が与えられがちなので、メディアファクトリーの「テレプシコーラ」は不利だったかな?その点手塚治虫文化賞は結構出版社がばらついていて良いですよね。
はぁ~これでまた漫画が売れて品薄になるかも知れず、先に買っておいて本当によかったぁ!(笑)
本当に名作なので、未読の方は是非ともお読み下さい!
テレプシコーラ

ちなみに、「のだめカンタービレ」も候補に挙がってたらしいけどノミネートの時点で辞退されたそうです。
短編賞は森下裕美さんの「大阪ハムレット」
新生賞はのぞゑのぶひでさん(画)岩田和博さん(企画脚色)の「神聖喜劇」
みなさんおめでとうございます!
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GWに山岸凉子フェア

2007年05月06日
先日念願の「テレプシコーラ」を2~10巻まで「大人買い」しました。ラストまで一気に読んでしまいました。うーん、凄い内容だった。ああああ、山岸せんせー・・・。
GWにはマンガ好き仲間でもある妹たち(ふたり)が帰省したので、是非とも読みたまえ!と、読ませまして。
ヤツらが読み終えたら、3人で心置きなくネタバレを含めた感想大会が出来ると思って、「今5巻を読んどるな」「「しめしめ8巻か(何が『しめしめ』なんだか知らんけど、なんとなくそういう感じ)」「あ、10巻になったな!!」と横目でチェックを入れながら、読了の時を心待ちにしていたのですが、さて、3人『いざ』となったら感想が出てこない!
というか、読み終えた直後の妹二人は呆然としてしまい、感想なんか語るパワーは無い!!と言う感じだったのね。
「どうやった?感想は?」と、わたしが水を向けても「…う~~ん…う~~~~ん…」と唸るだけ。
まぁわたしはちょっと前に読み終えて、充分その余韻に浸り、そして2回も読み返したので、感想を述べようとする気持ちにはなれたのですが、妹にはまだまだ時間が必要だったようですね。
それでもしばし時間を経た後に、
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テレプシコーラ/山岸凉子

2007年04月25日
488991787X舞姫(テレプシコーラ) 1 (1)
山岸 凉子
メディアファクトリー 2001-06

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念願の「テレプシコーラ」をゲットしました!!
と言っても、実はまだ1巻だけなんです。
で、1巻を読んだ率直な感想は・・・・
めっちゃおもしろ~~~~~~~~~~~!!
まだたった1巻だけなんだけど、その面白さは半端じゃないです。
「ダ・ヴィンチ」に連載されていたんだけど、立ち読み程度に時々ちらちらっと覗いた事があり、いつになくカワユイ少女が主人公なのね・・・と、不思議な感じがしていて、世間の評判がそこまで良いのは何故なんだろうと思っていました。
が、やっぱりおりょーさま、さすがですね~♪
そろえます、そろえますとも!!
とりあえず今は決意表明だけ。(笑)
また、ちゃんとした感想は全10巻読んでからのことで・・・。

でも、一応1巻のあらすじを↓に。
ネタバレのため、未読の人はご注意くださいね。

4840104166舞姫(テレプシコーラ) 2 (2)
山岸 凉子
メディアファクトリー 2001-12

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4840104654舞姫(テレプシコーラ) 3 (3)
山岸 凉子
メディアファクトリー 2002-10-23

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4840104913舞姫(テレプシコーラ) 4 (4)
山岸 凉子
メディアファクトリー 2003-06-23

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舞姫(テレプシコーラ) 10 (10)
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[や・ら・わ行のマンガ家]山岸凉子 | Comments(2) | Trackback(1)
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