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アドルフに告ぐ/手塚治虫

2008年04月17日
アドルフに告ぐ (1) (手塚治虫漫画全集 (372))
アドルフに告ぐ (1) (手塚治虫漫画全集 (372))手塚 治虫

講談社 1996-06
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アドルフに告ぐ (2) (手塚治虫漫画全集 (373)) アドルフに告ぐ (3) (手塚治虫漫画全集 (374)) アドルフに告ぐ (4) アドルフに告ぐ (5) (手塚治虫漫画全集 (376)) 陽だまりの樹 (7) (手塚治虫漫画全集 (332))


かねがね、手塚先生の作品の一番は「ブラックジャック」か「火の鳥」か、と思ってましたが、本当にお恥ずかしい次第です。この「アドルフに告ぐ」は、本当に素晴らしい。感動しました。


時は第二次世界大戦に入るちょっと前ぐらい。言わずと知れたヒトラーもアドルフという名前ですが、日本にもアドルフという名前を持つ少年が二人、神戸に住んでいました。
一人はユダヤ人のアドルフ・カミエル、そして一人はドイツ人(母親が日本人)のアドルフ・カウフマン。物語は、ヒトラーの出生の秘密文書を手に入れたらしい弟を殺された、峠草平というジャーナリストの案内で進んでゆきます。
このヒトラーの出生の秘密文書をめぐって、日本・ドイツの戦争を舞台とした大河ドラマが繰り広げられるのです。
二人のアドルフは子ども時代、友情を誓い合ったのにその立場上、敵味方に分かれてしまいます。カウフマンの方は、ナチスの養成学校へ行きどんどんとヒトラーの思想やナチスに傾倒してゆくのですね。この物語の中では、一番と言っていいぐらい、彼の生き方に引き付けられてしまいました。
今でこそ、部外者だからこそ「ナチスに傾倒するなんて」と批判は出来ましょうが、その当時に当事者としてそこに生きていたら、自分もきっとカウフマンのように生きていたのではないでしょうか。。
峠とふたりのアドルフは不思議な縁で結ばれて、お互いの人生を絡ませていくのですが、その展開は目を離す事ができないほどスピーディで説得力のあるものでした。
そしてここに描かれている戦争と言うものの酷さ、容赦ない描写で「二度と戦争はしてはいけない」と再確認させてくれる、それはやっぱり手塚治虫さんが実際に体験したことを、ここに再現してくれたから。ものすごくリアリティがあるのです。

戦時中はユダヤ人は迫害され虐殺されましたが、その後、パレスチナ(イスラエル)をめぐっては、逆に迫害者でありテロリストになってしまった部分もあったということも、キッチリ描かれていて、本当の正義と言うのは一体なんだろうという深い問題提起をしていて考えさせられます。
自分が信じた正義を振りかざすということの恐ろしさが、余すことなく描かれている、真のヒューマニズムだと思いました。
もしも未読のマンガ読みさんがいらしたら、是非ともご一読を。
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[た行のマンガ家]手塚治虫 | Comments(4) | Trackback(0)

ブラック・ジャック (16)/手塚治虫

2006年12月11日
4253031757ブラック・ジャック (16)
手塚 治虫
秋田書店 1979-01

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16巻はかなり好きな作品が多い一冊。その中で印象的な物語を…。


147話:未来への贈りもの
若かりしB・J。研修医である。その病院に入院している二人の重病患者「筋萎縮性側索硬化症」の青年と「全身性エリテマトーデス」という病気の女性が病院内で恋愛して結婚する。
10年後のB・Jが、ソ連(!)のある博士に頼んで、人間冷凍保存機に入れ人工冬眠させる(未来なら治療法も見つかるだろうというので)と言う話なのだが。
不治の重病を持っているのに前向きに愛し合おうとする、二人の若者の健気さに涙が出た!!

さてその次の148話:海は恋のかおり
ある日突然B・Jの元へ、見るからに「港みなとを渡り歩いてる風来坊だぜ、まどろ~す♪」って感じの男の子が訪ねてきて、全身に掘り込まれてる刺青をとってくれと言う。
この少年にB・Jを紹介したのは如月めぐみ(→B・Jの心の恋人)だったのだ!なぜだ!なぜだ!と悩めるB・J。ストイックでクールな印象が薄れてちょっとファンとしては、めぐみにジェラシーなんだけど。
でも、この少年の切ない恋心に泣かされるのでした。

お次の149話:二人三脚
幼いころには父親と仲良く運動会で二人三脚をした少年だったが、今では顔を合わせればケンカばかり。その挙句にぐれた少年が、悪いグループに入ってしまい、B・Jのお金をゆすろうとする。
その場に行きがかった少年の父親も、グループの餌食にされてしまった。B・Jの家に突っ込もうと、少年もろとも父親も車ごと大破してしまったのだ。父親は即死だったが、少年は一命を取り留める。その足の骨は父親の骨を移植したのだ。母親から少年は手紙を受け取る。そこには父親の無骨で不器用な文字で「小さいときに二人三脚をした事が忘れられない。人生はひとりじゃない。二人三脚も必要だ」と書かれていた。
少年は涙を流しながら「お父さん、これからはずっと二人三脚だよ」とつぶやくのだった。

147でうるるん…と来て、148でポロポロっと来てお次の149!これで、決定!滂沱の涙がだ~だ~!!ですね!「泣かせ」の三段腹…じゃなくて三段構造ですね!!

ちなみにこの「二人三脚」ではピノコが「『ルーツ』を見た」と言っております。そっかー。ルーツ放映していたときだったんだね~。
「ルーツ」覚えてますか?皆さん。
クンタ・キンテですよ!懐かしいね♪
[た行のマンガ家]手塚治虫 | Comments(2) | Trackback(0)

七色いんこ/手塚治虫

2005年11月05日
4253038093七色いんこ (1)
手塚 治虫
秋田書店 1981-09

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1巻の収録タイトル
●ハムレット/シェークスピア
●どん底/マクシム・ゴーリキ
●修善寺物語/岡本綺堂
●電話/ジャン・カルロ・メノッティ
●ピーター・パン/サー・ジェイムズ・バリ

ブラック・ジャックに比べてカリスマ性が少ないような気がするけど、読めば読むほど味わい深い面白みのある作品です。
主人公の「七色いんこ」とは、代役専門の舞台俳優。どんな俳優の真似も出来て、舞台では観客の感動をわしづかみにする天才的な俳優だ。
でも、実はその裏の顔はドロボーなのだ!舞台の隙間に客席の金持ち連中から高価な宝飾品などを奪ってしまう。鮮やかな手つきで。
それが分かっていても、興業主たちはいざと言うときにいんこに代役を頼むのだった。

有名なお芝居になぞらえてその章が描かれているのだけど、なんともうまく出来てる話が多くって面白い!これは実はまだ若かった私にはそれほど魅力的な作品には写らなかったのだけど、今こうして読み返してみると構成の確かさやストーリーの面白さに加えて、ひとつひとつの演劇を西村博子氏、辻真先氏、辻啓子氏が解説されているが、この文章がまた読ませる~!

登場人物のなかではなんと言っても「演技する犬」の「玉サブロー」が面白くって可愛いね!!
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[た行のマンガ家]手塚治虫 | Comments(0) | Trackback(0)

ドン・ドラキュラ/手塚治虫

2005年11月04日
406173248Xドン・ドラキュラ (1)
手塚 治虫
講談社 2000

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これは「ブラック・ジャック」が一旦連載を終ったとき、次に連載された作品ですね。「ブラック・ジャック」とは全然違う主人公にしようと思ったと言う、手塚先生のコメントが印象的です。

主人公はドラキュラ伯爵。でも、ちょっと間抜けでドジ。すぐに灰になってしまったり…でもご心配なく、掃除機で灰を寄せ集めて、血液・パウダー(何の?)・ニカワを混ぜたものを灰にふりかけ、棺おけのふたをして3分たったら元通り!

そして、この伯爵、ホラーが大嫌い!ゾンビの映画の看板を見ただけで腰を抜かして震えてるのだ。「人間はなぜこのようなものにお金を払ってまで見たがるのか」と言ったりする。算数の教科書をみて「+」の記号を「十字架がいっぱい!」と怖がる。怖がりのドラキュラ伯爵、可愛いです(笑)
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どろろ/手塚治虫

2005年11月02日
4253062571どろろ (第1巻)
手塚 治虫
秋田書店 1974-09

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425306258Xどろろ (第2巻)
手塚 治虫
秋田書店 1971-11

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醍醐景光(平安時代の「延喜天暦の治」と呼ばれたらしい。のちの後醍醐天皇は自らこの人にあやかって名前を付けたとか?)が、自分の野望のために生まれる予定の我が子を48匹の魔人達に分け与えた。
そして生まれてきたのは、芋虫のような姿をした赤ん坊だった!!
景光夫婦は子どもを川に流す。
それを拾ったのとある医者は、その子どもに不思議なテレパシー能力があるのを知り、体を作ってやるのだった…。(この辺は、ブラック・ジャックとピノコの関係の前身では!!)
時は流れて、年頃になったその子どもは百鬼丸という名前と、腕に仕込んだ刀を医者からもらって旅に出る。
48の妖怪を倒して、自分の体の一部分ずつを取り戻すために…。
そんな百鬼丸の名刀を欲しがるのがタイトルのどろろだ。
どろろは刀目当てに百鬼丸について歩いてるのである。
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[た行のマンガ家]手塚治虫 | Comments(0) | Trackback(0)
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