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土星マンション/岩岡ヒサエ

2007年09月08日
4091883664土星マンション 2 (2) (IKKI COMICS)
岩岡 ヒサエ
小学館 2007-06-29

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地上35000メートルの上空の、土星の輪のように地球を取り巻くパイプのなかで生活している近未来の(遠い未来?)人類。パイプを磨く仕事をしている、主人公ミツと彼をとりまく人々の物語第二弾!
1巻のご紹介感想はこちらです。

何か大きな事件やドラマティックな展開があるわけではないけど、相変わらずしみじみさせてくれる物語。
閉塞感と開放感が、みょーにバランスよく入り混じってる感じですよね。

土星の輪のようなパイプの中で暮らしている、その閉塞感、そこまで地球の環境が破壊されてしまったという絶望感、でもそんなものにはとうに慣れてしまってる、しかしやっぱり根底に流れる虚無感みたいなもの…どこか諦めてしまった感じがしてて、決して「ほのぼの」だけではないと思うのですが、ミツたちの人間関係がひたひたと胸に迫るのかな?ミツたちがパイプの外に出て窓を拭いているから、開放感があるのかなとか・・・思います。
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土星マンション/岩岡 ヒサエ

2007年02月03日
4091883397土星マンション 1 (1)
岩岡 ヒサエ
小学館 2006-10-30

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「しろいくも」「花ボーロ」の岩岡ヒサエさんの第3弾。
今回はなんとSFです!ちょっとびっくり。
でも、あのほのぼのとした世界観は変わらずに。
もっと研ぎ澄まされている感じ。
そして、今まで読んできた中で共通して言えるのは、この人の持つ優しいユーモアセンスが、すごく心地よいと言う事。
とつとつとした素朴な味わいのある、決して派手ではないし、大笑いするような場面はないのだけど、ぷっと吹き出したりにんまり口元がにやけたり・・・そんな優しい笑いが、全編通して心地よいのです。

設定は、遠い未来?
地球は地上では誰も生活していなくて、地上35000メートルの上空に、土星の輪のように地球を取り巻くパイプを作り、人々はそこで生活しているのです。
パイプは3層に分かれてて、最上層はお金持ちの人たちが住むところ、中層は学校などの公共施設があり、最下層は一般庶民が住むところになっています。
主人公は、この最下層に住む少年ミツ、中学を卒業したばかりだけど職に着きます。亡き父親と同じ、窓拭きと言う職に。

はじめはあまり状況がよく把握できなかったのだけど、読むうちにおいおい分かってきます。
窓拭きってなんなのか
なぜミツが一人で暮らしているのか、
この世界で人がどう言う風に生きているのか
ミツの父親はどうして死んでしまったのか
ミツがそれをどう考えて受け止めているのか・・・
などなど。
一話一話、ゆっくりと読者に分かってくるのです。
ミツの父親は窓拭き仲間にも信頼されていたひとりで、その息子だからミツはみんなに受け入れられ守られるけど、それを快く思わないものもいたりして、ただ心地よいだけじゃないミツの世界。
そのなかで、だんだんと大きくなり、窓拭きとしても一人前になってゆくミツを心から応援したい。

個人的には、ミツの相棒でありよき理解者でもある仁さんが好き!
おじいさんと言うか結構トシとったおじさんなんだけどね。
いい味!こう言う人を描かせたらこの人上手いですね。「花ボーロ」でも益本先生とか面白かったし。

それにしても、上空35000メートルから見る世界って・・・どんなだろう。そして、そこで作業する過酷さって・・・。
遠い将来、実際にこんな世界になるんだろうか。
雲の上に思いをはせながら読んでみたり・・・。



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花ボーロ/岩岡 ヒサエ

2007年02月03日
4091885322花ボーロ
岩岡 ヒサエ
小学館 2005-11-30

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しろいくも」の花岡ヒサエさんの第2弾。
今度は、学校を舞台にした連作短編集となっています。
学校って独特の世界だと思うのだけど、その中で何気ない・・・ほんとに日常の何気ない出来事を、著者の視点で切り取ると、こんなにもホンワカあったかい物語の集まりになるのかなぁ。
登場人物たちは、そのお話ごとに変わっていく(脇役で登場したりする)のだけど、誰もが愛しいです。
全10話、16ページから20ページの短編ばかりだけど、どれもなんか心に残るしみじみした感じがいい!
殺伐としたイメージ先行の「学校」になってしまって久しいけれど、こんな空間であってほしい。いつまでも。

*教室の兎
小学校、森先生のクラスの子どもたちが兎を保護します。飼うか飼わないかクラスの中でも対立。反対意見の一人は、自分の情が移ってしまって離れがたくなるときの事を心配して反対している。(うん、気持ちは分かる!!)あるとき、夜間はダンボールの中に入れているはずのチーコ(兎の名前なのです)が朝には必ず外に出ている。ダンボールの上にどんな重石をしておいても必ず朝には、外に出ているのです。犯人探しが始まり、飼う事に反対していたサチオが疑われるのだけど・・・。
兎は自力で箱から出ていたのです!意外な方法で!(持ち手の部分の穴からそりゃもう、無理やり出ているんです。もりもりもり~~という感じで。それが可笑しいの!
チーコを飼う、保護しているつもりだったけど、チーコたちはどこでも自由に生きるということを目の当たりにして、クラスのみんなはチーコをただ見守る事にするのです・・・。

*オトノハコ
高校に入学したばかりの詔子。部活のことで悩み中。大好きなバレーは結局挫けてしまったので、なんとなく自分を見失って空虚なんですね。どうしてもバレーを引きずってしまい、前に進めない。詔子ちゃんの悩み具合なんかがリアルで、心に迫ります。そんな詔子が選んだ部活は?
この合唱部の部長さんが、いい味!!

*ウチマス
ウチダ君とマスダ君、あわせて「ウチマス」ですって。ぷぷぷ・・・。
すんごい大きい頭、というかヘアスタイル。アフロ?ぷぷぷ・・・。
いわゆる「不良」ですが、好感度100パーセントのふたり。
中学の終わりにバイク事故を起こして、それをちゃんと反省して「怒らない」ことにしているのです。
バイト先の店長に万引きを誤解されたりしながらも、怒らない日常。
すごい、このふたりは凄いです。好き♪

*坂の上
ふたたびさくら小学校。森先生が研修中の代行教師として退職した益本先生がつきます。久しぶりの子どもたちとの生活を、大いに楽しむ益本先生。
坂の上には駄菓子屋さんがあり、そこは益本先生にとっても思い出深いお店。先生は子どもたちをそこに連れて行くのです。そして、その感想文を20年後に提出しなさい、と言うのでした。

*悩める先生
筋肉体質の女になりたい芳本先生は、給食センターの島村さんといい感じに・・・。だけど、太った島村さんを時々ものすごく怖くなるのです。
その理由は・・・。
島村さんのキモチの「紅白饅頭」が愛しい♪

*童
ちいさい子どもの幻覚が見えてしまうタケオ。扉でもふたでも開けたらそこに、小さい子どもが見えるので、「開ける」のが怖い毎日。(でも、大きさは自由自在なの。小さい所には小さい姿で、大きなドアを開けたときは大きな姿で見えている。)
幼馴染でお隣の茶道部の部長のユカは、タケオくんのよき話し相手です。茶道部一筋のこのユカちゃんがなんとも味わいがある女の子で、彼女と接するうちに小さい子どもが見えなくなる?
彼女の明るさがタケオを救うのですね。

*花ボーロ
消えてしまった小さい子どもの事が気になるタケオ。
そして、受験を間近に控えて部活を止めなさいと言われているユカ。
屋上でのしみじみした会話が心に沁みます。
花ボーロ、食べながら・・・。

そのほかにも
*学びの庭
*夜の王国
*かまとりさんは空を飛ぶ
など、珠玉の10篇。
と、ほのぼのエピローグつき。
おススメです。
あさみさんからお借りしました。ありがとう♪


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しろいくも/岩岡ヒサエ

2007年01月30日
4091885314しろいくも
岩岡 ヒサエ
小学館 2004-11-30

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2005年に出版されているIKKICOMIXです。
中身は、同人誌に掲載された作品を中心に、散文的な叙情あふれる小編集になっています。
初出は、2000年あたりからいろんなタイトルの同人誌に発表されているようですが、表題作の「しろいくも」が、第6回イッキ新人賞「イキマン」を受賞。そして、月間IKKIの2004年7月号に掲載されました。
同じ年のIKKIの10月号には、「ホッピーズベア」という作品が掲載されています。
「在るところへ」という書き下ろし作品を含む、全14作品を収録した、著者の初のコミックです。


新人賞を受賞した「しろいくも」が、ものすっごく良いです。
これは泣けますよ~!
つれあいに先立たれた寂しさを抱えたおじいさんを、飼い犬のシロの視点から描いた作品です。
この、おじいさんが、おばあさんを亡くした喪失感に打ちひしがれつつも、おばあさんの遺したたったひとつのペットボトルを大事にすることで、日々シロといっしょにおばあさんの面影を追いながら生きてる姿が胸を打ちます。

最後はイヌも、老衰で死んでしまうのだけど、おじいさんはシロに託します。おばあさんが遺したペットボトルを。
シロがそれを手土産に、おばあさんの元へ・・・。

「死」をものすごく優しい視点で捉えた秀作ですね。
おススメ!!


「ホッピーズベア」も面白いです!
会社で同僚の女の人に振られてヤケになっている主人公がであったのは、着ぐるみの「クマ」!!
しかも、子ども。で、学校に行っている。
洋食屋の「ホッピー」を経営しているお父さんのために、人寄せのアルバイトをしているんです。
主人公から見れば、その仔グマの「あけび」さん(名刺を持っているのです)が、幸せには見えないんですよね。
だけど、あけびさんはちゃんと、自分が「しあわせ」だと、知っている。
「幸せは、幸せであることに気づいてないと、自分のところまで届かない」
そう聞いて、なにか気づいた主人公なのでした。
その後の「ナンパ」と「ばっさり」が、めっちゃ笑える!意表を付かれましたわ。(笑)

あと、よかったのは
夫婦が自分たちのいままでを振り返りながら、ふるさとへ帰る「おウチに帰ろう」
赤ちゃんは神様、という「ぶどう摘み」。人間って生まれたすぐのときは、きっと心も広くって綺麗で、純真で無垢で・・・それこそが「神」のような存在で、体が育てばそれだけ心が狭く小さくなってゆく・・・、そうかもなぁと、思ったしだい。
夫婦の時計の思い出を語る「骨董屋さくら堂」も。

全体にホンワカふんわりした絵柄で癒される、大人の絵本のような一冊です。
あさみさんにお借りしました。ありがとう~♪
siroikumo

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