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超少女明日香/和田慎二

2011年07月29日
4592128923超少女明日香 (花とゆめCOMICS)
和田 慎二
白泉社 1995-01

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4592128931明日香ふたたび (花とゆめCOMICS)
和田 慎二
白泉社 1995-02

by G-Tools


459212894Xふたりの明日香 (花とゆめCOMICS)
和田 慎二
白泉社 1995-03

by G-Tools



私にとっては、「超少女明日香」というのは、別冊マーガレットの作品なのですよね。
あんまり知らなかったんですが(^_^;)その後もシリーズはかなり続いていて、MFコミックスで「学校編」とか「式神編」とか発表されているのですね。
そちらのほうは全く知らないのですが、初期の「超少女明日香」と「明日香ふたたび」の2冊、手元にありますのでご紹介します。マーガレットコミックスでも出版されているのですが、よく見かけるのは白泉社の花とゆめコミックスで、ウチのもそれです。

明日香は、飛騨高山の砂神村の出身で、ある超能力の持ち主です。
自分の村を利権がらみの無駄なダム開発で沈められ、鉄砲水によって身内を含む住民を殺された恨みを晴らすために、ダム工事を請け負った田添建設の社長宅に、女中という形で入り込みます。
復讐する気満々の明日香ですが、田添家の人たちに近づき、愛着がわいてくる。
そして、本当の黒幕は芙蓉産業の社長、芙蓉夫人だとわかり・・・・!!
明日香の復讐の幕が切って落とされる!!

という話ですが、これは私はリアルタイムで別冊マーガレットで読んでいます。
今読んでもワクワクします。
冒頭、田添家にはじめて明日香が入り込んだ日のこと。
長男の一也(高校3年生)が、明日香のお手伝いさんとしての能力を試そうとして、荒れまくった庭の掃除を言いつけます。
内心「一日掛かっても終りっこない」と思ってるのに「ストップウォッチで時間を計る」と言います。(イジワルです)
でも、「ゴミはまとめてもやしておけ」と言い忘れたので、振り返ると、もう庭はぴっかぴか!!
タイムは15秒フラット!(笑)
次は、長女の悦子(高校一年生)のテスト。
がらがらでめぼしいものが何もなさそうな冷蔵庫を指差して、「何か作ってごらん」と言う。
すると、テーブルの上には超豪華ディナーが!!

この明日香の「超能力」が、すごくカッコよく見えて憧れましたっけ。
普段は明日香は「ちんくしゃ」なんですが、能力が最高潮に高まると変身するんですよね、超美少女に。
高圧電流の流れる門扉を素手で握り、一瞬、高圧電流にやられたか・・と思いきや、するするーっと「ちんくしゃ明日香」→「美人明日香」に変身するシーンは見応えあります。痺れる!!!
分身も出来て、5人に分かれて、テレパシーで連絡を取り合いながら活躍する。


方や悪者たち。芙蓉夫人とその4人の部下達、名づけて「四重奏(カルテット)」!
芙蓉夫人は情け容赦のない、私が好きな「心置きなく憎める」悪役です(笑)。
ほんとうにこう言う悪役を描かせたら和田さんはすばらしいです。
部下達の中には、刑事コロンボをモデルにしたとしか思えない人物もいて。
案外容易くこの4人は崩されることになりますが、少女マンガらしくそこにもロマンスありーの、決して残酷な形で排除するわけじゃないのも、いい感じです。

そして、明日香の超能力は、「自然を味方につけること」なんですね。
しまいには、土の奥深く眠っていた恐竜の化石が動き出して、それに乗って芙蓉夫人と言う悪役退治。
超~~~~~カッコイイ!!!!

それから、田添社長の秘書は八雲。
あの、もみあげの伸びてる八雲です。
スケバン刑事では信楽老の秘書をしていますね(*^_^*)

復讐を終えた明日香は高山に帰るのですが、ひそかに惹かれあっている一也との別れが辛い。
一也も明日香を行かせたくない。
切ないエンディングです。

アクションありラブロマンスありの傑作ですね!


和田慎二さんご本人によるあとがきでは、「メイキングオブ『超少女明日香』」として、超少女明日香の生まれたいきさつが書かれています。
当時、超能力モノが流行していたので、担当に「超能力モノを描いて」と言われても、「なんでも超能力で片付けてしまう超能力ものの流行には好意的ではなかった」んだそう。
和田さんはSFよりも童話が好きだったそうで、「メアリーポピンズみたいな話を描きたいと思っていた」ことを思い出し、そのイメージで作られたのが「超少女明日香」だとか。
そういわれてみれば、その家の子どもたちに手を焼きながらも気持ちを通い合わせて仲良くなっていく・・って言う辺り、似ている!と納得。


同時収録に「オレンジは血の匂い」
神恭一郎のシリーズです。
ウィキペディアによると、これが2作品目になりますか?

なんといっても印象に残っているのは、
同時に二つのオレンジを受け止めるのに、決して右手は使わず、左手でパパッと2個つかむシーン。
それを見て、オレンジを放ったカテリーナが「神・・やっぱりあなたぶっそうな人ね」と言うんですね。
常に危機ととなり合わせにいる人間は、決して両手をつかわない。
いつでも戦えるように右手を開けておく。
とくに拳銃を使うものは、それがプロの鉄則。
と言うわけで、それを知っているカテリーナが怪しいと疑いを持つシーンです。
これを読んで、みかんを妹に投げてもらい、左手で2個、受け止める練習をした人は多いのじゃないでしょうかね(笑)。








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[や・ら・わ行のマンガ家]和田慎二 | Comments(8) | Trackback(0)

時計じかけのオレンジジャム/和田慎二

2011年07月25日
4886530338時計じかけのオレンジ・ジャム (St comics)
和田 慎二
大都社 1993-07

by G-Tools
時計じかけのオレンジジャム

和田作品、続きます。

この本の存在は実は初めて知ったのです。
「恵子とパパ」シリーズをひとつに集めたものなんですね!
こんなコミックがあったなんて、すごく嬉しい一冊ですよね!

収録作品と、初出は以下のとおりです。

●パパ!   1971年別マ9月号
●パパとパイプ   1973年別マ6月号
●白い学生服    1974年別マ11月号
●パパにくびったけ    1975年花とゆめ17号
●バニラエッセンスの午後    1975年花とゆめ増刊号
●ライダーより愛をこめて    1976年花とゆめ増刊号
●時計じかけのオレンジジャム    1979年花とゆめ20・21号
●いとこにキッス     1982年花とゆめ増刊5月号
●ホットケーキ物語(番外編)    1972年別マ2月号

このほかに「まえがき」「あとがき」そして途中で「ライダーたちのこと」が挿入されています。

和田さんのデビュー作が、このシリーズの「パパ!」だそうです。
そのまえに、別マのマンガスクールで受賞して、その作品は雑誌に載らず、その代わりに同じ枚数(16p)のものを書けと言われたそうで、それが「パパ!」だとのことです。
私がどの作品を雑誌で読み、単行本で読んだのか、あまりはっきりとは覚えてません(^_^;)。
初期の作品と言う印象が強いけど、こうしてみると意外にも、1980年代まで続いていたんですね!!

肝心の内容はというと、母親がなくなったあと、作家の父親と恵子は3匹のネコ(ネコの名前は、ライダー1号、2号、V3・・・そして後にアマゾンも加わります)と一緒に暮らしていて、その日常にほんのちょっと特別なことが起きたときの事を描いている物語です。

「パパ!」では、恵子が、パパとある女性が一緒にいるところを見て、旧いアルバムの中の「パパの初恋の人」だと思いいたり、パパの不実にショックを受け、家を飛び出してしまうんです。
恵子は学校で写真部に入っていて(バレー部との掛け持ちなのだ!)写真部長のオサムさんといい感じ。この後も恵子と修さんの愛は変わらず、ずっと続いていきます。
家を飛び出た恵子が暴漢に襲われそうになっているところに、オサムさんとパパがやってきて、ふたりで不良どもをばったばったとなぎ倒していく、そして恵子の誤解を晴らす・・と言う物語です。
パパはタバコが大好きで、チェーンスモーカー。パイプでモクモクとタバコを吸っています。
今だったらきっとNGですよね。


「パパとパイプ」
あるとき恵子の前に若い女性が現れて「私があなただったかも知れない」と意味深な言葉を残します。
時を同じくして、パパの小説の連載打ち切りの連絡が次々と入ってくる。
その原因は、恵子が会った女性にあった。
その人は、パパが昔愛した人の娘さんだった??。
そしてその人が大金持ちらしくて、出版社に働きかけて、パパの連載を止めさせたと言うわけ。
パパが大事に持っているパイプのことを、その人が知っていたので(そのパイプを贈ったのは、その人の母親だと言うのだ)、恵子はてっきりパパが今でもその人のお母さんを愛していると思い込んでしまった。
傷つく恵子と、その女性を前にして、パパは昔のことを・・・恵子のママのことをどんなに愛していたか、どんなに今も大好きかを語って聞かせるのでした。。。。。。


「白い学生服」
山崎家に居付いている白い学生服を着た書生さん(って言ってもいいよね?)の近藤真吾。
かれがどうしてこの家にやってきたのかが描かれています。
そしてどうして彼の学生服は白いのかも。
戦闘服なんだそうですよ。
喧嘩相手の血で染まって真っ赤になるころには、真吾にたてつく輩は居なくなっている・・という意味だそうです。
で、真吾は山崎家をいたく恨んでいる。なぜか?
これもまたパパの恋愛がらみでして。
それについて、あんまり事情を知らない真吾がある誤解をして、勝手に突っ走って逆恨みして・・みたいな?
でも、恵子の優しく慈しみ深い性格に心を開いて・・・。
作家志望で、有望なのをパパも知っていたので、書生として預かることにしたんです。
誤解が解けた真吾の両親も、やり直すと言うことで、めでたしめでたし♪


「パパにくびったけ!」
髪の長いコケティッシュな転校生、桜田香織。
恵子がパパのために図書館で借りたい本が持ち出し禁止だったので困っていると、香織が助けてくれました。
「持っているから貸してあげる。その代わり、噂の素敵な書生を紹介して!」と言うのです。
しかし、香織が一目ぼれしたのは、真吾じゃなく、なんとパパだった!!
パパの妻の座、そして娘の座・・・ひょっとして奪われてしまう?・・と恵子は不安になってしまう。
そんな折恵子は盲腸炎で入院するんですね。
「香織さんがいてくれるのならあたしなんかいらないよね・・」
と傷つく恵子に、パパはママがどんなに望んで恵子を産んだのか、話して聞かせました。
愛されていることが分かって恵子も改めてパパのことが大好きになりましたとさ!


「バニラエッセンスの午後」
オサムさんといよいよいい感じの恵子。
二人のデートが心配でパパもこっそりあとをつけます。
恵子とオサムさんはデートでいちゃいちゃ膝枕など・・・♥
けしからん!と思うパパだけど、ママのことも思い出してしんみりと・・・。
ついついクセでタバコを吸い始めてしまった。最近パパの影響で喫煙を始めたライダー達まで!!
茂みからモクモクと煙を出したので、隠れてるのが恵子にばれてパイを投げられちゃいました。
・・・でも、ばれたのはライダー達だけ。パパは上手く逃げたみたい。
そして投げつけたバニラエッセンスの香りが立ち込めて、二人はもっと甘いムードになって・・キスを・・♥♥
家に帰ってみると、自分をつけたらしい痕跡があれやこれや残っていて、パパに染み付いている(恵子に投げられた)バニラの香りでばれてしまったのでしたとさ。


「ライダーより愛をこめて」
オサムさんと初デート初キスからこっち、少し険悪なムードの恵子とパパ。
恵子はオサムさんに夢中だし、パパは寂しくてしかたがないし・・・。
そんなとき、ライダー達が家出を??
最近の恵子とパパがけんかばかりしているから、出て行ってしまったのでは・・と、猛反省、泣きながら探す恵子とパパ。
必死で探してみると、空き地にいた!ライダー達が3匹揃って!!
・・・ん?
4匹います。
可愛いメスのシマ猫が捨てられていたのです。
恵子は縞模様だからと、アマゾンと名づけ、皆で仲良く家路につくのでした。


「時計じかけのオレンジジャム」
これは恵子が高校の成績不振で心配したパパが家庭教師をつけようとする話です。
ところがやってきた家庭教師の毬先生(住み込み)はママに似ていて、パパはどっきり。
手作りのオレンジジャムはパパの好みの味でした。
ついにパパは毬先生に求愛・・・!!!!!
でも、毬先生もパパを好きだといいながら「奥様の笑顔は消せません」と言う書置きを残して、家を出てしまったのです。
がっかりなパパ・・・・・・・・・・。
でも実はそれは、恵子のたくらみだったのです。
パパの好みの、何となくママに似た女性(役者志望)をつれてきたんです!
なんとも策略家の恵子ですね。
「パパの好みは知り尽くしている」というわけ。
でも、毬先生が去った後、やってきた家庭教師は超ハンサム!
恵子の好み・・!!?
それは実はパパがしくんで・・・・・・・こんなところでも親子だなーって言う話ね(笑)


「いとこにキス」
いきなり山崎家に押しかけ居候としてやってきた、いとこの薫子に振り回される話です。
薫子はレズで恵子を気に入ってモノにしようとたくらんでるんだけど、なかなか恵子が思うようにならないから、ついに写真部のオサムさんを篭絡して恵子をガッカリさせて男嫌いにさせようと、ヌードモデルになります。(もともとモデル)
でも、全然いやらしい目で見ない、写真家の目でしか薫子を見ないオサムに、降参するんです。
ここで特筆は、パパとママが駆け落ちで結婚したので、ママは自分の親族と付き合いがなかったということ。
薫子は結構ひどい女で、アマゾンを勝手に友達に譲っちゃう・・!
ライダー達は必死でアマゾンを探します。
その頃、なんとその家で、アマゾンに結婚の話が持ち上がり・・・・。
やっとライダー達がアマゾンの匂いを見つけたときは、協会でアマゾンは花嫁衣裳を着ていたのです・・!!!
これ、映画の「卒業」のパロディになっていて楽しい~!!


「パパとホットケーキ」
番外編です。なぜなら、ここではパパは死んでしまっているから。
ノッコちゃんっていう幼い女の子が、恵子にホットケーキを作ってくれるんだけど、恵子にとってホットケーキは、パパとの大事な想い出の味。パパが作るホットケーキ以外は食べないと決めていたんだけど・・・・・。

あとがきで、これが2作目の「恵子とパパ」で、これで終わりにするつもりだったということがかかれてます。
でも、ファンから抗議が上がったらしいですね。
なんでパパを殺したの~~って。
だから、シリーズが復活して、こんなに長く続いたそうです。

アクションやミステリーで長編を書くことが多かった。それととバランスを取るように、このシリーズでは思い切り優しい気持ちになって描いたとのこと。

「立ち止まらなければ 不幸は一瞬の通りすがり
 だからライダーたちはいつも元気いっぱい♡」

という和田先生の手書きの文字が、今だからこそ心にすっと沁みてきます。
自分の死も、いつまでも嘆いているんじゃないよ・・
というメッセージみたいにきこえるのは、きっと私だけじゃないですよね??


この本も七生子さんにお借りしました。
素敵で貴重な本を貸してくださりありがとうございました。。。

[や・ら・わ行のマンガ家]和田慎二 | Comments(0) | Trackback(0)

あさぎ色の伝説/和田慎二

2011年07月21日
4592110501あさぎ色の伝説 3 (花とゆめCOMICS)
和田 慎二
白泉社 1979-05-20

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和田慎二さん追悼の続きです

今度は新撰組の沖田宗司を描いた「あさぎ色の伝説」です。
このたび初めて読みました。
アマゾンでも高値がついていて、入手困難なのかな?
貴重品を貸していただきました。七生子さんありがとうございます(*^_^*)

「新撰組」というと、私はやっぱり木原敏江さんの「天まであがれ!」と、司馬遼太郎の「燃えよ剣」です。
(あんまり読んでないね・・・(^_^;))
今回読んだ和田さんの新撰組、物語は和田さん自身のフィクションのようですが、人物造形は司馬遼太郎の「燃えよ剣」などに影響されてると思いました。(こんにち新撰組や幕末の大抵の物語が司馬遼太郎のキャラクターらしいですが)
「燃えよ剣」みたいな、出来上がった物語の中でも、その合間に隊士たちはひょっとしてこんな風に暮らしていたんじゃないかなー・・と思えるエピソードが綴られています。
だから、新撰組としては多分、ここ!!っていう、芹沢鴨の粛清の場面とかもなく、総司が言葉で「私が切った」と言うだけだし、山南敬助の粛清も描かれてないし・・・。
沖田総司は労咳にかかっていると言う設定はあるけど、その死までは描いてない。
和田さんはもっと続けて描くつもりだったのか、それとも、あえて最後まで書きたくなかったのか?
「燃えよ剣」を読んだときは、あまりの血なまぐささにちょっと閉口したんですが、沖田総司も新撰組一番隊長としてかなりのことをしてきたと言う感じがしたけど、この「あさぎ色」では、そこまで残酷な描写はないです。無論、人を切る場面は何度も登場しますが。

「あさぎ色の伝説」は第一部 「試衛館の鷹」(コミックの1,2巻)と、第二部 「風のまつり唄」(3,4巻)に分かれていて、「試衛館の鷹」では、江戸小石川の道場「試衛館」での沖田宗次郎18歳の姿を描いています。

「試衛館の鷹」第一章

和宮(将軍家茂の正夫人)の付き人のひとりであるお姫様が、暴漢から救ってくれた沖田宗次郎に懐いてしまい、試衛館に居ついてしまう。その姫は実は高尾山で幼い頃に宗次郎と出会っていて、その想い出を内に秘めていたのだった・・・・と言う話です。合間に、もちろん、血なまぐさい場面も。この後の第二章で、宗次郎はまだ人を殺したことがない・・と言うのですが、話が前後しているのかな?ここで人を切り殺していますから。

第2章

宗次郎がはじめて人を切り殺し、剣に命をたくすということの意味を知った物語。
自分が切ったと思っていた相手が実は生きていて、怪我をした宗次郎は同じ養生所に入った。
チエという勝気な看護師(?)がいて、宗次郎も形無しである。
そこで人を殺した罪の重さに耐え切れず、気持ちを乱していた宗次郎は相手が生きていたことに安堵する。
しかし、相手は自分が死の病で余命いくばくもないと知り、宗次郎を教育するように、わざと切られて死んでいくのだった。。。。の巻
斉藤一ここで初登場らしいです。


第三章

原田左之介が富くじで大金を引き当てて、そのお金の使い道が、「宗次郎を男にする」って言う話。
遊郭へ繰り出して、・・・しかし徹底的に抵抗する宗次郎。
けっきょくはこざとという女郎さんと。
でも、そのこざとは、父親の急死で、吉原を仕切ることになった竜子が、女を捨てる前に一晩だけでも女として愛されたいと願って、宗次郎の前に現れた姿だった。。。。の巻

切ないラブストーリーの一章です。


第4章

ここでは土方歳三が主役。
物の怪のような幼女に取り付かれる物語。
その物の怪か、妖精か・・幼女が暗に示すのは、歳三へ「西へ行け」ということなのか。。。。の巻。


第5章

流行り病のはしかにかかってしまった宗次郎。
ふたたびチエのいる養生所に入院する。
重篤な症状になり、生死の境をさまよう宗次郎。
ふと現れた、姉に似た面影の女性・・。
彼女は懐かしさと慈しみに満ちた表情で宗次郎を見つめると、口移しで薬を与える。
ほどなく、病状は落ち着きを取り戻し、重篤を脱し次第に回復した宗次郎は、試衛館へ帰ることに。
その道すがら、宗次郎は山のほうに火の手が上がるのを見た。
そこでひっそりと一人で暮らしていた女性が労咳で死に、小屋も燃やされていたのだ。
その女は、青い薄衣のよく似合う美しい女だったと言う。
宗次郎の思い出に現れる青い薄衣・・・それは母親の思い出だった。
宗次郎を治してくれたのは母だったのだ。

そして宗次郎 元服。
沖田総司と名も改め前髪も落とし凛々しく成長した宗次郎の姿があった・・・・!!の巻。


番外編

舞台は京都。
すでに新撰組として名を馳せている総司たち。

父親佐平を殺されて独りぼっちになったお美津という少女に、「私が殺しました」と告白し、自分を憎むことで生きる力を与えようとする総司。お美津は健気にシジミ売りで生計を立てる。
しかし、佐平は桂小五郎たちの陰謀で殺された。仇を討つように総司は桂一派を切る。

土方は「自分が悪役になる」と決意し、総司は労咳がいよいよ発病。。。。の巻
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銀色の髪の亜里沙/和田慎二

2011年07月18日
銀色の髪の亜里沙

B000J8VOFI銀色の髪の亜里沙 (1977年) (集英社漫画文庫)
和田 慎二
集英社 1977-03

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4592128915銀色の髪の亜里沙 (花とゆめCOMICS)
和田 慎二
白泉社 1992-03

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さて、和田慎二さん追悼記事の続きです。
今回は、「銀色の髪の亜里沙」です。
この作品もかなり人気がある作品だと思います。
私もずっと再読したいと思っていたのですが、叶わずに・・・それがこのたび、ネッ友さんにお借りすることが出来まして、念願が叶い、読むことができました。すごくなつかしかった!!!読めて嬉しかった!!!
ありがとうございます七生子さん!


【あらすじ】
本条亜里沙は裕福な家庭で両親に愛され、幸せな少女だった。
13歳の誕生日には4人の親友・・美尾、マサコ、恵子、紅子達(彼女達の親はみんな、亜里沙の父親の会社の部下だった)を招いての楽しいパーティー。
しかし、その直後に父親が事故死してしまう。
2週間後には「亜里沙を元気付けるため」と称してのピクニックで、吐竜窟にやってきた亜里沙たち4人。
そこで亜里沙は、親友と思い込んでいた3人(美尾は来なかった)から恐ろしい真実を知らされる。
それは、3人が亜里沙を憎んでいたこと。そして亜里沙は吐竜窟へ突き落とされ、その間際に、亜里沙の父親の死は紅子の父親のたくらみだったことや、母親も同じように危ない目に合っているだろうことを教えられる。
抵抗の甲斐なく吐竜窟に転落した亜里沙。
しかし、亜里沙は生きていた。
水流をくぐり地下に打ち上げられた亜里沙を迎えたのは、何年もそこで暮らしている考古学者の夫婦だった。
考古学者から、自分をこんな目にあわせ、家族を奪った相手への憎しみを植え付けられた亜里沙は、その「復讐心」から生き残る力を得る。
光の当たらない地下は、少量のヒカリゴケによって生活できる程度の光があったし、目がない真っ白な魚やオオサンショウウオがいて、食糧も得られた。
考古学者夫婦は亜里沙を慈しみ、自分たちの持つ知識ややさしさを教育した。
月日は流れ、考古学者夫婦が死んだとき、亜里沙は白いオオサンショウウオの中に一匹、黒いものが混じっているのを見つけ、それが外からここへ入ってきたこと、外に通じる道があることを発見し、苦労の末に脱出に成功する。
地下で得たヒスイを元手に社会へ復帰を誓う亜里沙・・しかし、その髪は長年の地下ぐらしのために、総銀髪に変わってしまっていたのだった。
数ヵ月後、自分を貶めた元「親友」たちとおなじ高校に編入した亜里沙は、いよいよ復讐に着手するのだった。


【感想】
このお話は、一言で言うと、幸福の絶頂から奈落の底へ突き落とされた少女の復讐譚・・ということですね。
ものすごくインパクトのある物語で、読んだ人には深く印象に残っているはずです。
アレクサンドル・デュマの小説「モンテ・クリスト伯」に影響を受けて作られたのじゃないかと思うのですが、今改めて読み返すと、当時の印象よりもすこし小粒な物語だったかな~と思います。
まだ和田さんにとって初期の作品なので、後年の作品ほどのドロドロ・ギトギトした感じがなくて、割と記憶よりもあっさりとした復讐譚だなぁと思いました。
たとえば恵子は秀才で校内で一番の成績が自慢。でも、それが亜里沙に破られて、ついでに恋人にも去られて首吊り自殺してしまいます。マサコはそれをみて発狂。。。初めてこれを読んだ当時は、私も幼くカワユイ少女だったので(笑)それで溜飲が下がったのかもしれませんが、今となっては「手ぬるい!!!」なんて思ってしまいます(笑)。
信楽紅子に対する復讐は、しかし、凝っていて良いですけどね・・・・・。
想い出の仮面の裏に毒を塗り、その毒によって顔が破壊されるのを待つばかりの人生をほのめかす。それが嘘であれ本当であれ、顔が命の紅子は絶望して、こちらも自殺・・。これも手ぬるいとは思いますが、もっと手ぬるいのは一番の悪、紅子の父親には「紅子の死」が復讐だと言うオチ。
後年の和田さんだったらもっともっと読者の溜飲が下がるような、きつーーーいお仕置きをしてくれたんじゃないでしょうか。
これを焼き直して、もっとスケールの大きな作品を描くことも「アリ」だったんじゃないかな~~とか、いや、やっぱり「亜里沙」はそのままで残しておいて欲しい・・とか、色々思いますね。
しかし、物語としてはコンパクトによくまとまっています。
美尾との、キャンディの包み越しのキスなど、すごく印象深いです(笑)。
あと、亜里沙が地下から持ち出した「ヒスイ」は多分「水晶」ですよね。どうでもいいけど。




同時収録

「お嬢さん社長奮戦中」

父親は繊維会社の社長。仕事一筋で、娘である自分への愛情などないと思い込んでいたユミ。
しかし、父親の急死で社長の座に付くことになったユミ。父親の遺言だったのだ。
なれない仕事、7000万円もの借金、難題ばかりの毎日。
でも、仕事をこなし、借金を返すことの難しさを実感しては、逞しく成長していくユミ。
そして、会社の発明品「月光の絹」という繊維が完成した。
社長であった父は、ユミがその「月光の絹」で作ったウェディングドレスを着ることを楽しみにしていたらしいのだ。
それを知り、ユミは父親の愛情を実感する。
自分を社長に据えたのも、父親としてユミに逞しく生きて欲しいと言う願いがこもっていたのだ。
ユミは、父の真意を知り、社長として頑張っていくと決意するのだった。
 
※借金の相手が信楽老!!つねに悪人ですね(笑)


その他の収録
「冬の祭り」
「パパ!」



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呪われた孤島/和田慎二

2011年07月14日
norowaretakotou



追悼 第2弾です

収録作品
●「呪われた孤島」 初出 別冊マーガレット 昭和49年(1974年) 8~9月号
●「怪盗アマリリス」 同 昭和48年(1973年) 11月号


【あらすじ】
日本海にある人口若干100人の孤島は無医村だった。
そこにあるとき若くて美しい女医、日下部亜矢が赴任してきた。
総出で歓迎する島民達。
最初は島民と、少なくとも表面上は打ち解けている様子の亜矢だったが、徐々に正体を現し始める。
それは、村人から毟り取れる限りのカネを毟ろうとする、カネの亡者だったのだ!!
島には恐ろしい毒雲がいて、島民は手を焼いていた。
しかし、八千代菊という菊のエキスが毒を中和することを島民達は長い間の経験から知っていた。
女医の亜矢はそれに目をつけ、八千代菊を独り占めにした。
村長の小座蔵剛三は、亜矢の操る毒クモにかまれて瀕死の重態。
どうしても、亜矢の持つエキスが必要だ。
しかし、女医はエキスを欲しいのなら島の宝物である「小判」(※これは、その昔島の付近で難破した大名の船から引き上げられた千両箱に入っており、島民で分け合い、家宝としていたもの)を引き換えによこせという。
小座蔵剛三の娘の曜子は、島民に貸してくれるように頼むが、誰一人貸してくれるものはない。
そうして、剛三は皆が見守る中息を引き取ってしまう。
島民を恨む曜子。。。
しかし、剛三の遺言を見てみんなの真意を知ることになる。
剛三は、村の未来を憂い、愛娘の洋子に医者になるように遺言を残したのだ。
その学費は、剛三の意思に同調した島民全員が差し出した「小判」を換金したものだったのだ。
島民全員の後押しを受けて、この島から脱出し、医大に行く決意をする曜子。
しかし、亜矢はその計画を知り、断固として邪魔をするのだった・・・・。


【感想】
これはねーーーーよく出来た物語と思いますよ。
和田さんの作品の中でも旧いほうだけど、今読んでも全然古臭い感じがしない!
それどころかいまこれ、ドラマやノベライズにしても充分面白いものが出来るんじゃないの?と言う感じします。
(いや、実写化は反対なんだけども・・・)
亜矢という悪役と曜子というヒロインの闘い、これも勧善懲悪で読者の気持ちをひきつけます。
亜矢は例によって、徹底的に悪者に描かれていて、何も考えずに憎めるので気持ちいいぐらいです。
(前回書いた「左の眼の悪霊」でも、亜矢は悪役の名前でしたっけね)
父親を殺され、愛する島を踏みにじられたヒロイン曜子の復讐譚でもありますが、憎しみに駆られているわけではなく、あくまでヒューマニズムの域。
でも、いったん、にっくき仇と向き合えば、スタントマンも真っ青な活躍ぶりと、ナイフ投げの腕。
それもそのはず、そう言う場面に備えて、日ごろからダーツの腕も磨いていたのですからね!(笑)
女医にしても相当アクロバティックなことやるし(天井に潜んだり・・)この辺は、和田漫画ならではって感じですね。
医大で知り合った間久部ことマックという男子医学生とのロマンスもあるんだけど、曜子は恋愛に現を抜かしたりはしない!!いつだって島のことを第一に考えているのです。
だからロマンスはあっさりしたもの。そこも、やっぱり読者としては嬉しい感じですよね。
リゾート地として開発が行われることも決まり(でも、自然を残す方向で言うことなし!)曜子の弟茂も彼女が出来て、未来は明るい。

亜矢を好きだった遠藤は可哀想だし、殺された島のみんなも気の毒だけど、それを除けば、とても爽やかで後味のよいハッピーエンドです!



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左の眼の悪霊/和田慎二

2011年07月11日
4592116046左の眼の悪霊 (花とゆめCOMICS 和田慎二傑作集)
和田 慎二
白泉社 1975-10

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ささやかながら追悼の気持ちをこめて・・・。

収録作品
●「左の眼の悪霊」 初出 花とゆめ 昭和50年(1975年)第13、14号
●「校舎は燃えているか!?」 同 第15号
●「パパにくびったけ」 同 第17号
●リョーシャとミオ  不明 (処女作に近いそうです)



まず表題作「左の眼の悪霊」のご紹介を・・・。
和田作品に特徴的な、非少女マンガ的で、スケールの大きなサスペンスです。ホラー要素もあり。
神恭一郎が活躍しますので、「神恭一郎事件簿 3」にも収録されています。
「スケバン刑事」でおなじみの「黒メガネ」=「暗闇警視」もチラッと登場し、警視の「黒メガネ」のワケが紐解かれています。
そして特筆すべきは、和田慎二さんご本人が「岩田慎二」と言う名前で、主要人物として登場し、活躍していることです。

4840104891神恭一郎事件簿 3 (MFコミックス)
和田 慎二
メディアファクトリー 2003-04-23

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【あらすじ】
少年鑑別所を出所した潤子とケイ。鑑別所で知り合った二人は大親友。
皿洗いをしているときに、突然現れた弁護士によって、ケイが「ツグミ館」の相続人候補だと知らされる。
そして「ツグミ館」にやってきたケイと付き添う潤子の二人。
そこには、館につかえるシジマという不気味な老女と、相続権を持つ候補としての先客葉月亜矢、そして亜矢の雇ったボディガードの神恭一郎がいた。
亜矢の目は青い眼。
ツグミ館を相続するための資格は、当主織永家の血筋と青い眼だと言う。
そしてケイの眼もまた、左の眼だけが青いと言う「金眼妖眼(ヘテロクロミア)」なのだった。
真の相続者は、ケイと亜矢の二人がしばらく滞在し、どちらがふさわしいか見極めて、シジマの一存で決定されると言う。
ツグミ館の庭は、一面真っ赤なケシが咲き乱れ、青銅でできた大きな竜の像が数体と、ツボと短剣を持った不気味な石像が24体、森には眼をえぐり抜かれた犬の死骸があり、ツグミは潤子たちの目をめがけて襲う。そのうえ、ケシの下から不思議な歌が聞こえてくる。。と、得体が知れない不気味な出来事が続くのであった。
あるとき潤子が、恋人の「男なのに少女漫画家」の話を、神に聞かせているのを陰で聞いたケイはショックを受け、「開かずの間」に入る。そこで何かが起き、潤子たちがケイを見つけたときは、ケイは自分の右目をえぐりぬいていたのだった。
そのときからケイの様子が一転。気弱で優しかったケイの面影はなく、冷酷で威圧的になっていた。


【感想】
一言であらすじを書こうとしても難しい。
相変わらずの和田ワールド、色んな要素がぎっしりとてんこ盛りです。
もともとは、イギリス人であった先祖が信長に重用されて帰化して、一国一城の主となった。
それが織永家の始まりです。不遇にも城を潰され日本史から消されてしまった織永の魂は、いつしかここに王国を復活させようと機会を狙いつつ、地面の下に巨大帝国を築いていて、その魂=眼の悪霊は傀儡としての子孫を求めていて、ケイに白羽の矢が立ったということですね。
亜矢の碧眼はニセモノだったので・・・ケイの黒いほうの右目を抉り出し、目玉の悪霊はケイに憑依したんです。
ということで、サスペンス要素あり、女同士の友情あり、ゾンビィありのホラー要素ありの、ともかくてんこ盛り状態。
地下帝国への入り口などは、不気味な手のひらでできた階段で、こういうのを見ると本当にぞくぞくします。
地下帝国の様子がまた、インディジョーンズ張りのおどろおどろしさで(笑)。
200年かけてこれを作ったって、どんな執念・・・(笑)。
その中で逆さに吊り下げられてなお涼しい顔をしている神恭一郎!萌え!!(笑)
ガンさんこと、和田慎二モデルの岩田慎二少女漫画家の活躍で危ないところを逃れるあたり、憎い演出ですし。
潤子はやっぱり、女だてらに拳銃(ハジキと呼ぶよね~)を扱うし、度胸据わっていてカッコイイ!
人間のゆがんだ野心や欲望はとてつもない負のパワーを生み出す。打ち砕くのもやっぱり人間の「正義」なのかもしれません・・・というようなオチで、キレイにまとまりました!
これはファンなら必読の作品でしょうね。


当時、花とゆめで、この「左の眼の悪霊」と「校舎は燃えているか!?」言わずと知れた「スケバン刑事」の前身です・・・これと、一号あけて「パパにくびったけ」と読みきり作品を続けざまに発表していますね。どんだけ人気者だったか分かるというものですね。

またおいおい、和田作品のご紹介を続けていくつもりです。





[や・ら・わ行のマンガ家]和田慎二 | Comments(0) | Trackback(0)
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