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永遠の野原/逢坂みえこ

2005年12月21日
永遠の野原 (1)
逢坂 みえこ
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思い入れのある作品っていうのは、レビューをアップしにくいよね。
この作品はまさにそれです。
連載中ずっと「ぶ~け」を読んでいて、大好きだった作品の筆頭。

1988年11月号~1998年1月号まで
ほぼ隔月連載と言う形で「ぶ~け」に連載された。

あらすじは、主人公古屋二太郎(高校生)が、恋をしたり失恋したり、傷ついたり傷つけたりして成長する青春ストーリー。
というと、簡単すぎる紹介文だけど。

二太郎は、ぜんぜんかっこよくない。
僻みっぽかったり、いじけたり、独占欲が強かったり、自分に忠実な友達(石田太や紺野くん)にはちょっと傲慢じゃない?と思える態度をとったり…。
でも、それが本来の「ひと」のすがたなんじゃないかって、思える。多分そう。そこに、読み手は自分を重ね合わせて、同じように感じては感動したり落ち込みを共有したり出来る。
この物語のすばらしいところは、その「思わず共感してしまう」ほどの内面描写の優れた点だと思う。
そのため、ドラマチックな盛り上がりや、激しい流れのストーリー展開はない…と言ってもいいと思うんだけど、それでも目が離せなくなるのです。
そして、なんだか泣けるのです。

二太郎と、姉の一姫(少女ホモ小説作家)は二人暮し。(親とは事情があり別居)ふたりは愛犬のカキを半年前に死なせたばかり、二太郎はもう二度とペットは飼いたくないと思っていたのだけど、一姫が「みかん」と言う名の子犬をもらってきたので、仕方なしに飼い始めるのところから、物語は始まる。のだけど…。
このみかん、すっごく可愛いのだ!表情が豊かで、甘えん坊で、出来た犬じゃないところがまた可愛い。みかんを見ているだけでもこのマンガは楽しい!!
著者逢坂さんご自身が犬を飼ってらして、その体験がうまく描かれてるようで、わたしは犬を飼ったことがないけど、犬を飼う幸せや苦労ってこんな感じだろうな~って、疑似体験できてしまう。

そして、この物語のもうひとつの特徴は「片思い」である。
片思い…いや、片恋、と呼びたい(笑)。「片恋」がいーっぱい出て来るのだ。
それぞれの登場人物が「片恋」と共にとっても個性豊かに魅力的に描かれている。
二太郎が恋をする相手のマリ子。
二太郎の親友、石田太。
彼に片恋の野沢ひとみ。
ひとみを追いかける中井縫ノ介。
まだまだ、片恋中の登場人物わんさか!
純粋に相思相愛なのは、一姫と柳さんぐらいで、後は片恋のオンパレードなのだ。
それぞれの「片恋」やその切なさに共鳴しながら「青春」の苦しさ甘酸っぱさを思う存分、楽しめる作品!

それと、作家である一姫の創作者としての苦悩は、逢坂さんご自身のそれを投影させてあるに違いない。リアルで生々しい迫力は、まさに体験者が語るものではないでしょうか。悩める一姫の内面は読者としても興味深かったねぇ。
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[あ行のマンガ家]逢坂みえこ | Comments(2) | Trackback(0)
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