2007年06月29日
![]() | 海街diary 1 蝉時雨のやむ頃 吉田 秋生 小学館 2007-04-26 by G-Tools |
「吉祥天女」が映画化で話題の吉田秋生さんの、最近のマンガ、本のSNSで話題になっていたので読みました。
読み終えたとき、胸が暖まるようなほっこりとするような、それでいて清々しく爽やかで・・・。地味な物語なんですけどね。
●蝉時雨のやむ頃
物語は、三姉妹のところに、父親の訃報が入るところから。
父親と言っても、ずいぶん前に娘たちを捨てて、女性のもとへ行ってしまった父親なのです。
看護師の長女、幸は夜勤があるからと二女の佳乃と三女の千佳に、葬儀に出席するように言う。そして父親の終の棲家となった山形についたとき、ふたりを迎えに来ていたのは異母妹にあたる、すずという少女だったのです。
自分たちを置いて女の所に行った父親にたいして、彼女たちは当然良い印象を持ってなくて、また思い出も少なく、死んだからと言われても悲しくないし涙も出ない。その町で人に好かれていたらしい父親だけど、いくら好かれていたとしても、自分たちはその父親に捨てられたのだと思う佳乃。気持ちが伝わってきます。
でも、そんな彼女たちが父親の死を心から悼む事ができたのは、異母妹のすずのお陰だったのです。
すずの一番好きな場所が、父親の好きな場所でありそしてそこから見える風景は・・・。なんとなく「耳をすませば(ジブリ作品のほう)」を髣髴とさせるその風景が、読者のこころにも染み入るようなのです。父親の死を悲しむ姉妹たちに、「よかったね。お父さんの死を悲しんであげられて」と言う気持ちに。
結局、すずはこの3姉妹と今後ともに暮らすことになります。その顛末で、さち姉さんが大好きになりました!
●佐助の狐
やってきました、すずちゃん。「妹なんだから『ちゃん』はつけないよ」と、呼び捨てにするさち姉さん、やっぱり良いです!(自分が三姉妹の長女なんで、どの物語を読んでもやたら「長女」に肩入れしてしまうわたし(^^ゞ)。徐々にこの家に慣れて行くすずのものがたりでもあり、佳乃の恋人の正体は・・・と言う物語でもあり。
彼女たちが住んでいる家がすごく良い感じなんです。古い日本家屋なんですけど。玄関に行くまでに、竹の柵でできた壁のある長い通路があって(引越しのトラックは、玄関まで行けない)障子があり畳があり、ちゃぶだいがあって。床下には手作りの梅酒、その梅は庭にある梅の木からとれたもので。
そんな家に迎えられ喜んでいるすずちゃんに、幸せになってもらいたいモンです。
佳乃の恋人の正体が分かる顛末も面白い。
「あたりまえだと思ってることは案外あたりまえじゃないのかも知れない」多分きっとそうなんだろうな。
●二階堂の鬼
すずちゃんは地元のサッカーチームに入ることに。
あっという間にチームに溶け込むすずですが、入れ替わるように怪我から入院してしまったチームメイトがいます。
実はその子は、単なる怪我での入院ではなく・・・。
これ、かなり切ない話でした。
中学生だけどしっかりと前を見ている彼らが可愛くて可愛くて。
2巻の感想はこちらです。
![]() | 海街diary 2 (2) (フラワーコミックス) 吉田 秋生 小学館 2008-10-10 by G-Tools |
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2007年06月26日
イカロスの山 1 (1) | |
![]() | 塀内 夏子 講談社 2006-03-23 売り上げランキング : Amazonで詳しく見るby G-Tools |





またまた「山岳漫画」です。
学生時代は「山」を通じて、誰よりも強い絆で結ばれていたふたり、三上俊哉と平岡敬二。8年後、まだ現役で山に登り続けている平岡にたいして、三上は反対に山はやめて当時知り合った靖子と結婚して医師として働いている。ふとしたことで、平岡に会う三上夫婦。久しぶりの邂逅は3人になにをもたらすのか。
三上は平岡との再会がきっかけで山への情熱が再燃してしまい、山に登りたいと言う気持ちを抑えきれなくなります。また、靖子も平岡との再会で心がざわめくのを抑えられません。
そこに、全制覇されていると言われていた8000メートル級の峰14座のほかに、実は15番目の未踏峰があると言うニュースが山岳家たちの間を走ります。そのニュースに心穏やかではない三上。当然のように挑戦する平岡に、羨望と焦燥を隠し切れません。
そしてついに、三上も・・・。
三上と平岡の2人が15番目の未踏峰に挑むまでを、靖子と三上平岡の三者の心の揺れを織り交ぜながら描くものがたり。
「岳」を読んでしまうと、どうしても「岳」のほうに魅力を感じてしまう。主人公にも、ストーリーにも。とは言え、世界には8000メートル級の峰が14座あり、15番目の未踏峰に一番登頂目指して挑むという設定は、迫真のリアリティがあり引き込まれました。
山岳モノの中でも「岳」が「ヒューマン」なら、こっちは「青春」モノと言う感じでしょうか。
個人的に言わせてもらうと、この平岡や三上が山を目指す姿から、「生きる」ことと「生活する」ことの違いみたいなものを感じました。特に三上は、家族を置いて危険に身を投じるのですから。それも「趣味」ですから。(ここは「山」にたいして無理解かも知れず、山岳家の皆さんには読まれたくないところですが)
しかし、ちょっと「バガボンド」に見る武士の生き方みたいなのと相通じるところがあるような感じをどうしても抱いてしまいます。ここで、武蔵を引き合いに出すのもなんだか唐突ですが、どっちも「生死」スレスレの極限で生きていて、それは自分が「選んだ」ものであるということ。その生き様は、カッコイイ!!と思うと同時に「良いご身分だね」みたいな少しシニカルな視線を送ってしまうわたしです。バガボンドはめっちゃくちゃ、好きなんですけどね。家族もほっておいて好きな事をして、山で死ねば本望だと言う気持ち、自分よりも強い剣豪にかかって死ねれば本望だ、みたいな。似ていると思うんですよね。
と、こんな事を感じながらこの「イカロスの山」を読んだのでした。本編にあんまり関係ない文面になってしまってすみません(^^ゞ
しかし、6巻まで読んで、良い~~~~ところで次に「続く」になっているので、ギリギリ歯噛み状態です。
2007年06月26日
![]() | 天才柳沢教授の生活 25 (25) 山下 和美 講談社 2007-05-23 by G-Tools |
「天才柳沢教授の生活」、3年ぶりに新刊が出たそうです。これ、面白いですよね。全部読んでるわけではないけど、読むたびに感心させられます。時々ジーンとしたり・・・。「不思議な少年」もいいのですが、どっちも好き!
25巻には第177話~182話まで
●占いの検証
●大人って何でちゅか?
●教授にとっての罪と罰
●WILD BOY
●校庭を見ていた少年
●プリティな脅迫
が収録されています。
●占いの検証
朝のテレビ番組中の「今日の占い」に一喜一憂する家族(妻と娘)を見て不思議に思う教授。「彼女たちはその占いが当たったかどうかなど、夜になると考えもしない。何故検証もしないで信じようとするのか」と。そして占いの導くとおりに行動してみよう(検証)と実行するのだが・・・。
・教授らしくて、でも、ほのぼのした感じ!
●大人って何でちゅか?
華子に「大人ってなんでちゅか。」と問われた教授。散歩をしながら華子に語ったのは、論理的な頭脳があれば大人である、と思っていた昔の自分。教授のお父さんが、そんな子供時代の教授に見せたものは・・・。
・教授の子供時代が興味深い!
●教授にとっての罪と罰
ひきこもり気味の学生が教授に半年間欠席したのはなぜか、と訊かれて「なんとなく」と答える。教授は「なんとなく」と言う答えが納得できず、その理由を探そうとする。そして浮かび上がるのは、その学生とその父との確執。。。
・今回これが一番感動した。父と子モノってツボ。
●WILD BOY
最近頻繁にエサをねだる猫のタマ。お母さんは充分にえさをやっているので飢えているはずがないというのだけれど、教授には飢えているとしか見えない。そこでタマを観察して教授が見たものは??
・がんばれ、タマ!!(笑)
●校庭を見ていた少年
小学校時代、先生すら一目置く当時の教授を「そんなに頭が良いとは思えない」と言ってのけた同級生がいる。その同級生はいつも窓の外を見ていた。一見ぼーっと眺めているように見えたが、彼の頭の中は・・・。そしてその同級生と50年ぶりの邂逅で・・・。
・興味を持つって素晴らしい。
●プリティな脅迫
ケータイメールを始めた教授。学生や家族から受け取るメールの一つ一つにじっくりと向き合う。デコメや顔文字の一つ一つをじっくりと解読しようとする。メールのみのコミュニケーションに頼れば、失敗する事もあることを発見した教授が打ったのは・・・。
・最後のお母さんと節子の顔・・・!(爆)
あさみさんにお借りしました。ありがとうございました!
![]() | 天才柳沢教授の生活 第1期 全8巻セット 山下 和美 講談社 2002-11 by G-Tools |
![]() | 不思議な少年 (5) 山下 和美 講談社 2006-07-21 by G-Tools |
2007年06月21日
![]() | わすれな草 河 あきら 集英社 2000 by G-Tools |
「わすれな草」
集英社マーガレットコミックス1976・3初版発行
収録作品
●わすれな草 1975・3~4月号
●おみまいなあに? 1975・2月号
●5つのゆびの歌 1974・4月号
●鬼蛇山の謎 1969・7月号
全て 別冊マーガレット掲載作品
●わすれな草
酒飲みでDVクセのある義理の父親と二人暮らしの上原緋沙(うえはら ひさ)。高校受験を間近に控え受験勉強をしながら、画材屋でアルバイトをして学資を稼ぎ、なおかつ、父親のために家事一般をこなしている健気な娘です。
アルバイト先の画材屋の客であった北村裕介と知り合い、彼のひとなつっこさにあっという間に仲良くなる。そして、彼がそのとき偶然持っていたわすれな草を分けてもらう事になった。
が、それを町の不良たちに台無しにされてしまう。そのけんかの最中に電車に轢かれそうになった不良メンバーの一人、永沢護の命を危うい所で北村が救ったために縁ができ、緋沙の受験勉強を北村と永沢で見ることになって(永沢は緋沙の志望校の在学生、北村は卒業生)奇妙な三角関係が出来てゆく。
緋沙には小さい時に「チャー」と誰かに呼ばれた記憶、そして「わたしを忘れないで」と忘れな草の花言葉を言われた記憶があり、また護には幼いころに母親が妹を連れて家を出て行った記憶がある。護の記憶の中の妹の名前は「チャー」だった。護は護で、義理の母親や父親とギクシャクしていて幸薄い少年なのだった。(※「ひさこ」の愛称は一般的に「ちゃこ」となります。マーガレット→メグ、ロバート→ボブみたいなもんかな。この場合「緋沙」なので「チャー」になったのね)
さて、北村と緋沙は次第に惹かれあってゆくが、邪魔をするもの2グループ。ひとつは護の元グループのメンバーたち。緋沙や北村のせいで護がグループを離れたと根に持っている。
また片方は、緋沙の義理の父親とその悪い仲間。北村の家が地域の有力者である事を見込んで、北村に謂われない難クセをつけてお金をせびろうとしている。そして、緋沙の父親の暴力は日増しに酷くなるばかり。このままで緋沙は幸せになれないのだろうか・・・。
++++
河あきらさんのバッド・エイジ・シリーズ。
うっふっふ。好きなんですよ。この一連。
この「わすれな草」はもう、これでもか~!!というぐらい色んな要素がギューギュー詰めにしてあります。
ツッコミどころも満載なのですが、これが読者心をそそったのですねぇ!
・貧乏だけど向学心のある純情な少女が幸せを掴むまで
・金持ちで飽き性の放蕩息子が、少女との出会いで人生に真摯になる?
・金持ちだけど家庭内に複雑な事情を抱えるヤサグレ少年が、事件に合うことで親子の確執を取り除くことができる。
・DVを繰り返していた義父が娘への愛情を示す。
・生き別れた兄妹の再会。
・主人公16歳で結婚。
などなど、、、
ちょっと詰め込みすぎじゃないかと思うんですけどね。今読むとちょっと腹いっぱいすぎて、膨満感が・・・(^_^;)
しかし、16歳で結婚・・・て、それはいくらなんでも・・・。
昔はそんなにも「結婚」に憧れていたのかしら。

2007年06月19日
![]() | ちょべりぶ 1 (1) 玖保 キリコ 小学館 1998-01 by G-Tools |
お、掘り出し物です!(と言うかわたしが知らなかっただけかもしれませんね)ナンセンス?シニカル?ファンタジー?友情モノ?
全3巻、ギャグなのかと思っていたら最後に思いも寄らぬ感動が。
平たく言うと「ブタ版・アルジャーノンに花束を」と言う感じかしら。
私立藤の宮学院高等部に、季節はずれの転校生がやってきた。クラス委員の金田角子は担任に転校生の世話係りを仰せつかる。受験で忙しいこの時期にとんでもない迷惑を感じた角子だけど、先生が言うには「世話をすればどんな難関大学も推薦で入れるようにしてやる」とのこと。そしてやってきた転校生、後白河葉月は、後白河財閥の孫娘でありそして・・・ブタだったのです。
ブタであるという驚きよりもやっぱりこの漫画は、葉月のムチャムチャなまでの金持ちっぷりが面白い。校長たちも意のままに操るし(金に物言わせて)お店もすぐに買い取り(貸切、というレベルじゃないのです)カラオケはコンサートホールで満員の客席(拍手要員)の中で生演奏、衣装つき・・・とか。
タイトルの「ちょべりぶ」って今は死語でしょうけど、「ちょべりば」から来ているのでしょう。「チョーベリーバッド」の略で、一時はやり言葉でしたね。葉月はブタなので「バ行」の言葉が「ブ」になってしまうんです(ベートーベン→ブートーベン、バッグ→ブッグ、みたいに)が、、これ、薬の名前が「チョモランマ・ベリー・ブルーリーフ」で略して「チョベリブ」。この薬を飲み続けることで葉月はブタなのに人間の少女でいられるのです。
葉月がどうして後白河家に養女に入ったかというと「小さな村の農場で大家族とともに暮らしていたが、リゾート開発のためにそこにやってきたおじいさまが、わたしを見て『死んだ孫に似ている』と引き取った」という話。
この葉月(と、ミヨちゃん)のわがままやブタに振り回される角子。時々身の危険を感じながらだんだんと葉月との間に友情らしきものを育ててゆきます。
そして最後は・・・
後白河財団の経営悪化でグループ崩壊、葉月のおじいさんも亡くなり、葉月のドクターも死んでしまい、「ちょべりぶ」を作る人材も資金もなく、調合済みの「ちょべりぶ」を飲みきってしまったあとは、葉月は本来の姿に戻るのです。
最後はまったく「アルジャーノンに花束を」という感じで、かなりウルウルっときました。後白河財団のときに、元ボディガードとセラピストとして雇われてたエリザベス中村と石山岩男が、解雇された後も影で葉月と角子の生活を支えてるのもジーンとします。
金持ちワガママで憎たらしかった葉月がだんだん好きになってくるから不思議。角子同様、このままのほうが葉月にとっては幸せなんじゃない?と思いつつ、またいつかちょべりぶが復活して、後白河葉月になれると良いね!!と思わずにいられません。
![]() | ちょべりぶ 2 (2) 玖保 キリコ 小学館 1998-11 by G-Tools |
![]() | ちょべりぶ 3 (3) 玖保 キリコ 小学館 1999-10 by G-Tools |
2007年06月19日
![]() | のだめカンタービレ #18 (18) 二ノ宮 知子 講談社 2007-06-13 by G-Tools |
なんだかハラハラさせられる18巻でした。
そして、結構みんな「のだめ」なんだなぁと思わせられたり。
のだめの登場シーンが少なくってちょっと残念。登場シーンと言うよりも千秋との絡みのシーンが少ないと言うか?
しかし、あの調律のお兄さんの前に再登場した時の、千秋の着衣の乱れと動揺振り(←いちおう隠し文字)が気になりますねぇ。ムッフッフ♪
あと面白かったのはミルヒ。あたまがチクチクって、こどもか!
のだめがヨーダにのろける所とか。
のだめと執事の心の交流も。
しかし、最後のオマケ漫画のクロキンの戸惑いが一番笑えたかもしれません。
映画の「テルミン」まだ見ていないのですが、見たくなりました。
今度借りてこようっと!
その他二ノ宮知子さんの作品感想はこちらに。
2007年06月15日
岳 (1) | |
![]() | 石塚 真一 小学館 2005-04-26 売り上げランキング : Amazonで詳しく見るby G-Tools |





はいはいはい~!超オススメ出ましたよー♪
噂には聞いていましたが、感動の名作です。ネットうろうろしていて、山登りをする人たちにも非常にリアルさにおいても受けが良いようですし、かなり忠実に描いてある作品なのだそうです。
しかし、そんなことより何よりもともかく泣ける。
主人公は、島崎三歩。長野県小諸市出身のクライマーで、今は北アルプスで山岳救助のボランティアをしています。
山登り・・・死と隣り合わせのこの「趣味」というかなんと言うか。やる人にとっては命をかけてもやる価値のあるものらしく、やらないものにとっては魅力が全然分からないものです。
いや、分かるような気はする。きっともの凄い達成感や満足感、充実感が味わえるのだろうなぁ・・・と言う程度には。
でも、まさに「死」と向き合いながら何故山に登るのか、山登りをしないものは、のぼる人たちにそう問いたい。
その答えがこの「岳」にぎゅっとつまっている気がします。
中には「達成感」「充実感」なんていう言葉とは程遠い凄惨な悲しい事故もたくさん描かれてます。山岳救助の物語なので、事故そのものが「舞台」となってるといっても良いんです。
時には、手足があらぬ方向に向いてる死体、死体ならまだマシかも・・・(語弊があるかもしれませんが)生きてても手足が変な方向に折れ曲がっていたり、さらにはもげてしまったり・・・凍った髪や皮膚、凍傷、ロープで下半身が・・・などなど。
そんな極限の中だからこそ、シンプルに「命が大切」と思える。「生きる事」の美しさが感じられるし、たとえどんな局面でもで失われない人間らしさや思いやりの気持ちが感動を呼びます。
また残念ながら助からなかった場合には、遺された者の悲しみが胸に刺さります。特に息子を失った親の気持ちなどは涙無しには読めません。山で遭難したと聞いても、何十日経っていても、実際に死体を見てない限りは期待してしまうと言う気持ち、死体を見つけたときの気持ち、肉親の悲しみが丁寧にリアルに描かれていて、ほんとに泣けます。
そして、救助された人は自分のミスで仲間を死なせてしまう場合もあって、深い悔恨と悲しみに打ちひしがれる、そして助けに来てくれた三歩に「すみません」と言うのです。
でも、三歩はどんな遭難者にも決して声を荒げたり怒鳴ったり叱ったりしない。「よく頑張ったね」「もう少し頑張ろうね」「あやまらないでいいよ」「誰でも同じだよ」「また山においでよ」と言う温かい言葉で遭難者をねぎらい、受け入れます。そこに見える三歩の優しさ。優しい男はいくらでもいますが、そこに「大きさ」「広さ」「深さ」を兼ね備えている男はどれだけいるでしょうか。この主人公三歩は、それが備わっているです。カッコよくもないしハンサムでもないんだけど、その「優しさ」に惹かれます。
それに、危ない時、間一髪で助けに来てくれる、彼が来てくれたら安心だ、、って言うのはスーパーマンやヒーローたちと同じなんです。
どうして好きにならずにいられましょう??
山がすき、山登りが好き、そういうキモチや、極限の中で見える命の輝き、大切さ、リアルな登山の描写の迫力などが物語の魅力だと思う。それから見れば邪道かもしれないけどわたしは、三歩の優しさとか心の広さとか懐の深さに感動しました。
まったく・・・今まで「オレ様」大好き人間だったのに、ほんと、最近「優しい男」に弱いなぁ・・・。
19年の小学館漫画賞はこの「岳」では?
期待をこめて応援します。
あさみさんにお借りしました。ありがとうございました。
印象的なエピソードは
2007年06月14日
![]() | 君に届け 4 (4) 椎名 軽穂 集英社 2007-05-25 by G-Tools |
君に届け 1巻
君に届け 2巻
君に届け 3巻
4巻です。待ちに待ちましたよん♪
今回、くるみちゃんとの全面対決の模様。嫉妬だとかイジワルだとか、いや~な負の感情で押しまくるくるみちゃんですが、ともかく真っすぐでピュアですから、どんな姑息な手立ても爽子には通じません。そのあたりのくるみちゃんの苛立ちと、爽子の天然振りのギャップが面白い!!
そして、風早くんとのコトは・・・。
もう、きらきらきらきらっ・・・!と、光っています。
まばゆくて、もう、顔が勝手にニヤケてしまいます。
今回、龍のキモチもわかって、そっちもニヤケてしまいました。
今回受けたのは、(↓ネタバレなので反転です)
龍が「爽子」って呼んで風早君が嫉妬する所とか(龍も名前は覚えてても苗字をちっとも覚えてない辺り)龍が野球のボールをすんでのところでところでハッシと受け止めて爽子を助け、風早君が嫉妬する所とか、龍と爽子が一緒に喋ってて風早君が嫉妬する所とか・・・。ツボ!
あと、くるみちゃんのつるぴかお肌に嫉妬するやのちんとか。(笑)
龍も今回かなり良かったですね!ボールの場面も、「千鶴ひとすじ」「内緒な」って言う所とか。でも、一番はやっぱり風早君だから♪
最後に爽子がくるみちゃんに言ったり思ったりしたこと、本来わたしなどヒネクレ人間は「偽善だ」と冷めてしまいそうなのですが、爽子だったらこれもありで。素直に物語を受け止められます。こう言う流れの場合、描き方を間違ってもらうと「なんでそんなにイイコぶるの?」と「イラッ!!」としてしまい、ストレスになる場合があるのですが、爽子だったら全然、嫌な気持ちになりません。この辺の持って行き方、作者の椎名さん、上手いですね♪
おばさんはこの子達がこのままいつまでもじれったいままでいて欲しいぐらいですよ。(倒錯しているかな??)
2007年06月14日
![]() | 半神 萩尾 望都 小学館 1996-08 by G-Tools |
収録作品
●半神 1984/1 プチフラワー
●ラーギニー 1980/2 SFマガジン
●スロー・ダウン 1985/1 プチフラワー
●酔夢 1980 イラスト集「金銀砂岸」
●ハーバル・ビューティー 1984/10 ぶ~け
●偽王 1984/9 プチフラワー
●温室 1975/5
●左ききのイザン 1978
●真夏の夜の惑星 1990/11
●金曜の夜の集会 1980/11 SFマガジン
なんと言っても圧巻は「半神」。16ページの作品なのです。
腰でくっついている双子の姉が「わたし」です。
わたしの養分を吸い取り、わたしよりも健康そうで美しい妹。知能が低く、一人では満足に食事もできない妹の世話は全てわたしの仕事になってしまっているのです。自分にかかる負担や、美しく誰からも愛される妹への憎しみと羨望。しかし、いよいよ二人を離す手術が行われた時、わたしは・・・。
16ページというと、漫画スクールの投稿作品の規定ページ数!描いてみれば結構長く、そして短く、むずかしいページ数です。(単に実力がないだけとも言う)それを思うと(比較するほうがおこがましいのですけど)この完成度の高さにまず驚く、いや、驚くというのは違うかも・・・ひれ伏してしまいます。そして物語が持つメッセージ。わたしの中にある愛憎と葛藤、アイデンティティーの喪失、不安・・・主人公の感情に圧倒され言葉もありません。いやいや、ほんとに言葉もありません。
先日からアップしている山岸凉子作品、と、「半神」はMMさまにお借りしました。ありがとうございました♪
2007年06月13日
ツタンカーメン (第3巻)
山岸 凉子

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ツタンカーメン (第4巻)
ツタンカーメン (第2巻)
ツタンカーメン (第1巻)
イシス
青青(あお)の時代 (第1巻)
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山岸版、ツタンカーメン発掘実録となりましょうか。
主人公はモチロン、ハワード・カーター。
彼がいなければツタンカーメンの名はまだ誰も知らないままだったのかもしれません。今でこそ一番有名なエジプトの王様の名前ですが、今からホンの100年ほど前までは誰もその存在を知らなかったほど、砂に埋もれていた人物だったようなのです。
これは、エジプトの遺跡発掘にひとかたならぬ情熱を持つ主人公ハワードが、勤めていたエジプトの考古局を上司との諍いでクビになり、その後イギリスの貴族、カーナボン卿に雇われて王家の谷で根気よくツタンカーメンの墓を探し、ついに発掘しうるまでの汗と涙の物語なのです。
発掘権を手にした西洋人もエジプト人も、みんなが私利私欲に走っていたと言っても過言ではなかった当時、ハワードは純粋にそのロマンと芸術、知的欲求などのために発掘を続けます。学究心が高く博愛主義者で現地人をないがしろにしないで接する紳士なので、好感度の高い主人公です。
結局彼がツタンカーメン王の墓の発掘に貢献した功績はもの凄く偉大なのですが、だからこそ、ハワードはファラオに「選ばれた」のです。
不思議な少年、カーという姿を借りてファラオはハワードを発掘に密かに導きます。時にはライ病患者の姿を借りてお守りを渡したり(このお守りは、『ウジャト』と言う名前の古代エジプトの護符で、『ホルス神の万能の目』と言う事です。目の形をモチーフにしてあり、この目がいつもカーを思い出させ、ハワードを危険から守ってくれます)カーの口から危険を知らせたり、そうして導かれるように感動きわまる発掘までこぎつけるのです。
この大変な事業を成し遂げるまでのドキュメンタリー風の部分や、面白かったのは王墓の話!!
山岸 凉子

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彼がいなければツタンカーメンの名はまだ誰も知らないままだったのかもしれません。今でこそ一番有名なエジプトの王様の名前ですが、今からホンの100年ほど前までは誰もその存在を知らなかったほど、砂に埋もれていた人物だったようなのです。
これは、エジプトの遺跡発掘にひとかたならぬ情熱を持つ主人公ハワードが、勤めていたエジプトの考古局を上司との諍いでクビになり、その後イギリスの貴族、カーナボン卿に雇われて王家の谷で根気よくツタンカーメンの墓を探し、ついに発掘しうるまでの汗と涙の物語なのです。
発掘権を手にした西洋人もエジプト人も、みんなが私利私欲に走っていたと言っても過言ではなかった当時、ハワードは純粋にそのロマンと芸術、知的欲求などのために発掘を続けます。学究心が高く博愛主義者で現地人をないがしろにしないで接する紳士なので、好感度の高い主人公です。
ツタンカーメン王墓はハワードの詳細な記録のお陰で現在も発見当時を再現する事ができる。」これは、ハワード・カーター以外が発見者であった場合、あり得ないことと賞賛される。
結局彼がツタンカーメン王の墓の発掘に貢献した功績はもの凄く偉大なのですが、だからこそ、ハワードはファラオに「選ばれた」のです。
不思議な少年、カーという姿を借りてファラオはハワードを発掘に密かに導きます。時にはライ病患者の姿を借りてお守りを渡したり(このお守りは、『ウジャト』と言う名前の古代エジプトの護符で、『ホルス神の万能の目』と言う事です。目の形をモチーフにしてあり、この目がいつもカーを思い出させ、ハワードを危険から守ってくれます)カーの口から危険を知らせたり、そうして導かれるように感動きわまる発掘までこぎつけるのです。
この大変な事業を成し遂げるまでのドキュメンタリー風の部分や、面白かったのは王墓の話!!
2007年06月12日
![]() | シュリンクス・パーン―自選作品集 山岸 凉子 文芸春秋 1997-06 by G-Tools |
こちらも文庫版の自選作品集です。 第5弾。
収録作品は↓です。
●シュリンクス・パーン
●パニュキス
●パイド・パイパー
●グール―(屍鬼)
●鏡よ鏡
●シュリンクス・パーン
若い新進作家が親族の遺産相続で古い別荘を貰い受けます。遺書には「そこに住むように」と言う事と「パーン一匹飼育する事」という2つの条件が書かれています。そこで暮らし始めた主人公が出会ったのは、不思議な浮浪児のような少年だった。「愛されないもの」と自分を思い込んでいるシュリンクス・パーンと若い作家の心温まる童話のような物語です。
●パニュキス
片時も離れることなく成長してきた兄と妹。あるときから兄は学校に入れられ妹と引き離される。妹は嘆きながら人生を送るが兄は自分の人生を生きていく。兄への依存が捨てられない妹の人生は…。
●パイド・パイパー
忌まわしい思い出の土地、M市に夫の転勤でやってきた主人公。妹を変質者に殺されてしまった彼女が、トラウマと闘いながら再び起きようとする惨劇を防げるのか。
詳しい感想はこちら
●グール―(屍鬼)
船の難破により無人島に打ち上げられた二人の男女。思わず女に襲いかかれば女は男の腕をかじりだし…。ふたりは「そんなもの」になってしまった。表紙絵は、美しい姿の女が「顔」をはいで見ればそこにある顔は醜い化け物。うーん、深い!
●鏡よ鏡
女優の娘は太っていて醜い。クラスでも苛められっこの彼女が、母親の取り巻きの一人によって変貌を遂げる。
●パニュキス
ハリーとネリーの幼い兄妹。叔母夫婦に育てられています。あまりにも浮世離れしたふたりの行く末を懸念して、また、ハリーの音楽の才能を伸ばそうと、叔母さんはハリーを遠くの音楽学校にやります。
この後のネリーの嘆きようがもの凄い。
ハリーに依存しきっている妹。
ハリーは音楽学校で友達も出来て恋人も出来て、そしてついには結婚し子どもも生み・・・と順当に人生を歩いてゆくのですが、ネリーの時間は止まったままなのです。
ハリーの友達のチャールズがネリーに思いを寄せるのですが、ネリーは気付きもしません。ひたすらハリーを奪っていった音楽や友達を恨んでいます。
しかし、戦争が起きハリーの出兵。そしてハリーの死。
チャールズをかばったために死んでしまったと聞き、ネリーはチャールズをさらに恨みます。
その後、童話作家として成功したネリーの元へ一通の訃報が。それはハリーの妻のクレアモントの死の知らせでした。
まだ幼いハリーの息子を引き取る事にしたネリーとおばさん。そこにジュニアを連れてきたのはチャールズでした。片腕がありません。
童話を書くことで自分の姿を客観的に見つめられるようになったネリーは、自分がハリーを愛していると言うよりも、ハリーを通して自分を、自分だけを愛していた事に気が付きました。
そんなネリーにチャールズは「同じ心を持つ人」と求愛するのです。
物語の冒頭と最後に「パニュキス」の詩が効果的に使われています。
おりょーさまの描く漫画は、いつもいつも「人間の人格」を大切にするように、という示唆が含まれているように感じます。
前回書いた「ブルー・ロージス」もそうなのだけど、人が人として幸せになるためには、まず自分自身の人格を大切にする事、それが出来ない限りは他人の人格も尊重できない。すなわち、それでは真に幸福にはなれない…と言う示唆です。(「天人唐草」の岡村響子なんかもね)幸せとは、自分自身の人格を尊重してもらった上で相手を愛する事が出来る事なのですよね。
ネリーは、兄ハリーに自分自身を投影して、自分だけを愛していることに気が付いたのです。それが子供のエゴだったと、気が付いたとき彼女に幸福が訪れる。
優しいエンディングに胸が暖かくなる素敵な物語でした。
2007年06月08日
![]() | ブルー・ロージス―自選作品集 山岸 凉子 文芸春秋 1999-11 by G-Tools |
文庫版の自選作品集です。
収録作品は↓です。
●パエトーン
●星の素白き花束の
●化野の…
●ブルー・ロージス
●銀壺・金鎖
●学園のムフフフ
●パエトーン
チェリノブイリ原発が爆発して史上最悪の事故となりましたが、当時広瀬隆氏の「危険な話」というのが一世を風靡しました。この本に感銘を受けたおりょーさまが絵解きという方法で反原発を語る一作。
●星の素白き花束の
絶世の美少女である母違いの妹を引き取った主人公の、戸惑いと苛立ち、そして妹と父親の衝撃の真実。
●化野の…
ある女性、歩いても歩いても中々家に帰れない、道中に出会った色んな不思議はいったい何を意味するのか…。
●ブルー・ロージス
自分が傷つく事を恐れて男性を正面から見られない女性、それをブルー・ロージスという。自分に自信がない主人公は、初めて出来た彼氏に誉めてもらう事で自信が出来て性格も明るくなるのだけれど…。
●銀壺・金鎖
画家とその妻がいた。画家は美しい妻と一緒になるために家族を捨てた。その妻もまた娘と夫を捨てて画家のもとへ来た。今画家が死にその妻も死に、二人の娘が、ふたりの元の家族の子供たちを呼び寄せる。それぞれが画家とその妻、そして自分の半生を振り返る。
●学園のムフフフ
クラスの注目を集めるしとやか美人の正体は!
今回初めて読んだのは「ブルー・ロージス」です。
イラスト画家の主人公、黎子(たみこ)は29年間彼氏のない生活。そろそろ本気で彼氏が欲しいと思っていたところに現れたのが、2歳年下の編集者、中嶋和久。カッコよくて一目で気に入った黎子ですが、和久もまた黎子が気に入ったようで、ふたりはすぐに恋人関係に。
しばらくは甘い時間が続きますが、やがて和久には妊娠までしている恋人がいる事がわかります。打ちのめされる黎子ですが、いつかはきちんと立ち直る事ができるのです。皮肉な事に、その立ち直るための自信をくれたのは和久だったのです。
これは、何気なく口にしている言葉が相手を呪縛したり、傷つけたりしていると言う事が根底に描かれています。そもそも、黎子はすごく自分に自信がないのです。それは幼いころから「何をやってもダメ」とか「妹を見てご覧、もっと上手だよ」などといわれ続けてきたので、それが「何事にも自信がない」性格を作り上げてきたと。
でも、和久と知り合い、ちょっとしたお料理も「美味しい!」と言ってくれたり「可愛い」と誉めてくれたり。それが黎子を明るく前向きな性格にしてゆく。
実家の法事に行くくだりがあるのだけど、ここで妹に「結婚するかも」と打ち明けると妹は何気なく「でも、姉さんの事だからすぐに離婚するかもね」と言うのです。これを「言ってはいけない言葉」と思わないこの妹、こう言う人はどこにでもいるし、また自分の中にもそんな部分があるかも。
自分の価値観のなかで苦労なく生きてきた人間は、価値観が違えば傷つく言葉も違うのだと言う事すら分からない…と、おりょーサマは言います。
山岸作品、不倫モノは多いけど中々こんな風に気持ちよい終わり方をするのはありません。この主人公は皮肉だけれど、和久からもらった自信があるから「また人を愛せると思う」と前向きな気持ちになります。
自分に自信を持つ事ができれば、自分を愛せる。そして自分を本当に愛する事ができる者が、他人を心から愛せるのだと。
そこにきちんとトラウマを払拭して立ち直ろうとする「人の強さ」が見えて深い感動を覚えます。
2007年06月02日

心優しいお友達から借りまくって、山岸凉子フェアーを続けています。「日出処の天子」は以前にも貸していただいたんだけど、2回目になる今回、よりいっそう皇子の孤独が見に沁み切なくなり母性本能をくすぐられ、そしてなおかつその「オレ様」ぶりに(圧倒的なオレ様ぶりですよね。千秋も負けるよね。。。って比べるのが間違ってるのか)くらくらさせられ…。読むのがもったいないくらいです。
で、今回お初なのが「アラベスク」と「ツタンカーメン」。「ツタンカーメン」はまだ読んでないんだけど「アラベスク」読みました。もう一気読み!!面白いっっっ!!!
やっぱりどこか「テレプシコーラ」に似ています。主人公のノンナがものすごく自分に対して自信がないところとか、姉がいて姉のほうが一見才能が豊かで母が期待を寄せている所など。
(というわけで、これからはちょっと「テレプシコーラ」のネタバレに関係する記述も出るかも知れず、「テレプ」未読の方はご注意くださいね。)
でも、ノンナはユーリ・ミロノフに見出されて、中央(レニングラード)に出てゆく事になり、華やかで栄光ある…だけど、とっても厳しいバレエの世界で心身ともに翻弄されつつ、ミロノフに見守られ指導されながら見事に開花してゆくのです。
べそべそ泣いてばかり、劣等感の塊のノンナがその劣等感とは裏腹に際立った才能を発揮して頂点までのし上がってゆく。これが自信満々の主人公であればこんなに面白く感じなかっただろうけど、ノンナの性格にどうにも引き付けられました。こんなに気が弱いと普通はイライラさせられるのだけど、それがそうじゃなくって応援したい気持ちになるんですよね~。
そのほかにも、この話の素敵なところは、嫌なやつがいない所じゃないでしょうか。最初にノンナに対してライバル心をむき出したり、嫌味な事を言ったりしたりしても結局はノンナにとって大事な「友達」になって行くのです。その点「テレプシコーラ」よりも気持ちの良い爽やかさのある物語だったと思う。
それに一番大事なのは、ノンナとミロノフのじれったい関係ですよ!もったいぶるのが好きだから、おリョー様は(レミル談)。まんまとその手に引っかかりじらされて翻弄されたよ。読者として!(笑)
また舞台が日本じゃなくロシア(当時はまだソビエト連邦でした)だから、スケールが大きい。日本が舞台だと親近感はあるので、そこがよいのだけどね。
物語は大きくは4つの流れに分かれます。
第一部
その1:ミロノフとの出会い。そして、キエフからレニングラードに行き、生涯の親友となるアーシャやマイヤと出会う。最初はヘタクソながらも見るものが見れば才能を感じさせる、宝石の原石を見せる。またミロノフの友達で映画監督のリジンスキーにも出会う。リジンスキーは映画「アラベスク」を撮るつもりなのだった。
その2:モスクワのボリショイに行き、ラーラと「瀕死の白鳥」をダブルキャストで競い合う。最初ラーラばかりが評判よく、ノンナは酷評しか書かれなかったけれど、公演が続くうち次第に演技がよくなり認められるようになってゆく。しかしやっかんだラーラの企みで、最後の日に全く良い演技が出来ず、映画の「アラベスク」の主役モルジアナはラーラに決まる。落ち込んだノンナは逃避行。家にも帰れず彷徨うノンナは見知らぬ街の年配のバレリーナ、オリガに助けられバレエへの情熱を取り戻す。オリガの息子のアレクがキュートですなムッフッフ♪
オリガの代役で舞台に立ったノンナの素晴らしい演技は誰もが目を奪われ、それが元でミロノフのところにノンナの所在が分かる。さっそくレニングラードに飛ぶミノロフ。
舞台の上で知らないうちに相手がミロノフに代わっていて、顔を見ずともミノロフの存在を確信するノンナ。舞台が終わってから噴水あたりでノンナを待ってるシーンは…萌える~~!!!
映画「アラベスク」の主役は結局ノンナに決まり、ラーラはあっさりバレエを捨てて去っていく。「天才はとんとん拍子に簡単に地位と名声を手に入れる。だから同じようにあっさりと手放すのだ」と。
その3:舞台はパリに。ノンナとミロノフの二人は、パリ・オペラ座バレエ団から客員舞踊手として招かれる。モダンバレエの洗礼を受けつつ、基礎から完璧な演技も披露して火花を散らす。
団員のマチューとロベールとはミラージュの演技やアラベスクを踊りあい自分たちにないところを吸収しあう。ロベールは「面白い顔」からは思いもつかないすごいダンサーなので「ふざけた顔からは想像もできない」などとノンナに言わしめる。
しかしマチューには辛い運命が。白血病だったのだ…。マチューはノンナに「影」の踊りを託して急遽舞台を降板、そのまま入院。ジゼルを踊りたい!その夢半ばにして逝ってしまう。兄妹が多いのも涙を誘うが、ロベールの悲しみも胸に迫る。ロベールはマチューの死を見取るよりも舞台で踊る事を選ぶ。そしてノンナは「私がマチューよ、マチューの心を踊るわ」と。ロベールは踊りながら「病院にかけつけないぼくを、君は怒らないね。舞台で死にたいと言ったきみだもの。今ぼくはきみと踊っている」と思い、またノンナは「マチュー見てて、いま私はあなたとひとつになって舞台に立っているのよ。あなたはやはり舞台の上で散ってゆく・・・」と思う。泣ける~~!!
ジゼルの衣装を着けて棺に横たわるマチューの姿にまた泣ける~~!!
そのあとノンナたちはソビエトに帰るので、また別れも泣ける。
が、戻った二人を待っていたのはミロノフに与えられた。ソ連邦人民芸術家賞だった。そしてノンナにもウラノワ特別賞が与えられたのだった。
2007年06月01日
![]() | フラワー・オブ・ライフ 4 (4) よしなが ふみ 新書館 2007-05 by G-Tools |
ついに完結編です。
ハルと翔太とコラボマンガはどうなるのか
真島と滋はどうなるのか
ハルのねーちゃんの引きこもりはどうなるのか
笑いの中にもシビアな展開、泣けました。
オススメです。
まだ読んでない人、大人買いしてどうぞ♪
![]() | フラワー・オブ・ライフ (1) よしなが ふみ 新書館 2004-04 by G-Tools |
![]() | フラワー・オブ・ライフ (2) よしなが ふみ 新書館 2005-05-25 by G-Tools |
![]() | フラワー・オブ・ライフ (3) よしなが ふみ 新書館 2006-04 by G-Tools |
2007年06月01日
![]() | とめはねっ! 1 (1) 河合 克敏 小学館 2007-05-02 by G-Tools |
参加しているSNSで話題に出たマンガ、「とめはねっ!」です。
なんと高校の書道部が舞台です。
マイナーにも程があるって言うほどマイナーな部活ですよね?
(あ、書道部の人ゴメンナサイ)
だけどこれが面白い!!
舞台は鎌倉市の私立鈴里高校。(すずり=硯?)
新入生の歓迎会で部活紹介のときに、書道部の書いた文字に心惹かれた主人公、大江縁(おおえ ゆかり・男子・1年3組)は8年間カナダのプリンスエドワード島で過ごして帰国したばかりの「帰国子女」だった。
この学校は全校生が1600人と言うマンモス校で、体育会系クラブが21、文科系のクラブが33と言う、非常にクラブ活動の盛んな高校です。
しかし、部員が3人という書道部は廃部の危機に瀕しています。ひと月内に5人以上にならなければ廃部、というそのときユカリは部員たちに強引に入部させられます。
そして、クラスメートの望月結希(綺麗な女の子、でも柔道部、強い)もなぜか書道部に引っ張られる事になり・・・。
これは例に違わず、男子生徒が、好きになった女生徒とのからみで初心者でありながらその部に入部し、実は自身の中に眠っていたその才能を開花させてゆく、そして弱小チームを優勝に導く・・・と言うパターンでしょうか。
ストーリーの流れとしては「体育会系」にこそ相応しいような設定となっているのに、「文科系」と言う所がミソ!!「文科系クラブ」に隠された「体育会系」のノリ。どう言う展開が待っているのかワクワクさせてくれますよ~~♪
面白い作品には面白いキャラクター!
ここでもやっぱり特異なキャラクターを持つ部員たちが面白く、ナンセンスギャグの世界が展開するのかと思いきや、実は書道に対する案外にも真摯な登場人物たちの姿勢が物語の筋を一本しっかりと通していて爽やかさをかもし出しています。そして、書道の薀蓄などがバランスよく散りばめられていて飽きさせません。
この書道部の元のメンバーは、天使のように優しく面倒見がいい日野ひろみ、そして邪悪な根性と天然ボケの名コンビ、加茂杏子と三輪詩織の3人です。そこに生徒の面倒を全然見ない部活の顧問(彼がユカリと望月結希の担任でもあり)と、個性的で面白いメンバーが話を盛り上げます。
上手いのかと思いきや、下手だったり。また強いのかと思えば弱かったり・・・上手く読者を逸らし「ずっこけ」させてくれます。いい意味で予想外な展開が笑いを誘うのです。
面白かったところはたくさんあるんだけど、特に「一」と「十」の書き方とか、余白のバランスが大事と言う話とか、すごく「深い!」と感じてしまったよ。
日本人でありながら、文字や習字の事なんて全然知らないなぁとしみじみ思いましたことよ。「へぇ~」とか「ほうほう!」と驚きとともに、書道がすごく興味深いものに見えてくるのですよ。
だいたい、日曜の新聞に掲載される子どもの習字や、たまにスーパーなどに張り出される「なんとか賞」を受賞したような子どもの字を見て、その上手さに唸ったりするものです。決して書道が嫌いなわけではないし、いざ「書道の何たるか」を、こんな風に解説してもらうと非常にスルルっとと頭に入り込んできますね!!
これを読んでるとね!絶対にお習字がしたくなる!!(笑)
で、作品中に部員たちや先生の書いた字が登場するのだけど、これ、巻末を見て分かるのだけど本当に誰かが書いた字なのですね。今後、一般募集するそうです。我こそはと、思う方がいらしたら応募してご覧になってください。
応募要領は以下の通りです
墨と筆で紙に書いたものなら何でもオッケー
〒119-0139 小学館ヤングサンデー 「とめはねっ!」係
必ず住所氏名電話番号を明記の上送ってください。返却はされません。掲載されたら粗品がもらえるらしいです。
あと、表紙の折り返しに作者が書道部を実際に取材した時の事が書かれてます。で、最近の女の子たちは字が上手い男子がいたとしたら「キモイ!」だって…!!
え~~?なんで~~?
字が上手いと3割増しでカッコよく見えるもんだとばかり思っていたのに、いまどきの女子高生たちは違うの???
イチローだって城島だってすっごく字上手いよ。カッコよいと思わんのか?
わたしは好きです。字の上手い男子!!(それがどうした)
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