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夕凪の街桜の国/こうの史代

2005年11月14日
夕凪の街桜の国
こうの 史代
4575297445


ぜんたい
この街の人は
不自然だ
誰もあの事を言わない
いまだにわけがわからないのだ
わかっているのは「死ねばいい」と
誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
--------------------------
しあわせだと思うたび
美しいと思うたび
愛しかった都市のすべてを
人のすべてを思い出し
すべて失った日に
引きずり戻される
おまえの住む世界はここではないと
誰かの声がする
--------------------------
嬉しい?

十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」
とちゃんと思うてくれとる?

原爆投下から10年後の広島。主人公の平野皆実はバラックにお母さんと住んでいます。街は復興の兆しを見せて行きかう人には笑顔も浮かんでいる。笑いあいお洒落をして、好きな人もできる。でも、皆実は「それは自分の本当の姿ではない」と思ってる。生き延びてしまったことへの深い罪悪感にさいなまれながら生きてるようなのです。自分がここに存在してはいけないと、思ってるようなのです。

戦後60年。私たちにはいろんな情報がある。曲がりなりにも教育もあり、何が起きたのか一応は教えてもらっています。でも、戦後10年のこの皆実はまだ混乱から抜け出せないのかも知れません。

そんな皆実に訪れる淡い春。「生きててくれてありがとう」と言ってくれる人がいて、初めて皆実は緊張を解くことができるのだけど…。

そして物語は、それからさらに、皆実の弟、そして皆実の弟の子どもへと引き継がれていきますが、苦しく切ない物語を柔らかな絵と優しいユーモアをもって、とつとつと描いてあり、ぜひとも読んでもらいたいと思う一冊です。

この本はネッ友のゆこりんさんに教えていただきました。
ありがとうございました♪

こうのさんのほかの作品のレビューです。↓

さんさん録
長い道   
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[か行のマンガ家]こうの史代 | Comments(9) | Trackback(3)
Comment
No title
short様が引用されている、この街の人は誰もあのことを言わない。
にあるように、
当時、被爆者が原爆について話すことができない、タブーとされていた空気がわかります。
日本人による被曝者差別がたびたび描かれ、現代でもそれは結婚する時に現れる。
突然倒れ、若くして命尽きる皆実。京花、皆実の母。
放射能の内部被曝により命を落としたのだ、と私が知ったのは福島原発事故の後、色々と調べ学んでからでした。
作者は病名を書いていませんが、皆実は白血病だったのではないでしょうか。
原水爆禁止大会の看板が立ち、当時の街の雰囲気の再現力は並大抵ではなく、一気にその世界に引き込まれてしまいます。
ナメクジがわくバラックに母と二人で住む皆実を見て、後ろめたく感じる自分がいました。
それでも私の心に一番残っているのは、登場人物の恋や結婚にまつわる部分です。
「桜の国」で七波が、”この二人を選んで生まれてこようと決めてきたのだ”の場面は圧倒的で言葉がありません。
原爆による大惨事を伝えながらも、それを上回る荘厳なメッセージを舞い散る桜
の中で表現していて、本当のメインテーマはこちらなのではないかとも思いました。



タウムさん、いらっしゃいませ♪
TBとコメントありがとうございます。
残念ですけどTB届いてないみたいなんですけど…。
またこれを機に宜しくお願いしますm(__)m
TBさせていただきました。

静かで激しい、素晴らしい作品でした。
毛ミーさん♪
こんにちは!!
コメントありがとうございます!
もっと評判になっても良い漫画ですね。
この雰囲気は「文芸」のほうでは表しきれないと思うのですよね。
すばらしい漫画と思います!
またお越しくださいませ♪
こちらこそ。
TBありがとうございます。
本当に来世に伝えていきたい本って感じですね。
この本に出逢える人がもっと増えればいいですね。
また遊びにきますので宜しくお願いします♪
おそくなりまして…。
ほんと、感動しました。
忘れてはいけないですね。
いつか、広島に子どもたちと一緒に行きたいです!
作者の描きかたも無理がなく、でも、心に訴えるものでしたね。
他の漫画も読んでみたいです。
読んでよかった
本も、漫画も、全部が全部、読んでよかった~とは思わないのですが、これは、「読んでよかた。」としみじみ思いました。原爆どころか戦争も経験しない作者なのに、これだけ説得力のある作品を作り上げた、ということが、なんか、頼もしい気がして、又、希望が見えた気がしました。
こんばんはー♪
ゆこりんさん、事後報告になってしまいましたが
TBさせていただきました。
それと、記事中にもお名前拝借しました。
良い漫画を教えていただいてありがとうございます。
涙ボロボロでした。
同時に「はだしのゲン」の7巻だけ図書館から借りてきて読んだんですけど、7巻ってゲンのお母さんが死んじゃうのですよね。
これも涙ボロボロでした。
子どもたちにも伝えなければいけないですよね。
おはようございます。
何気ない日常生活を営んでいるように見えて、
主人公の女性の心の中には常に暗く重いものが
ある・・・。
彼女が悪いわけではないのに罪悪感を抱えて
生きている姿に胸を打たれました。
悲惨な描写がなくても、戦争や原爆のむごさが
伝わってくる、心に残る作品でしたね。

記事に私の名前が・・(∩。∩;)ゞ

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