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リアル/井上雄彦

2005年09月20日
リアル (4)
井上 雄彦
4088766954


車椅子バスケというスポーツ、障害者の姿を真っ向から捉えた力作!!
ともかく、各登場人物の造詣がすばらしいんです。
リアリティのある設定に、魅力的な個性。
主人公の3人に限らず、その周囲を固める家族や友人たちまでも、「もしも、こんな立場にたったら、自分もこうなるのではないか」というものすごいリアリティ。
つい最近まであたりまえのようにあった自分の体が、突如なくなってしまうという想像を越えた苦しみ、その気持ちとかリハビリの過酷な様子とか家族の心理状態とかの描写も本当に見事です。


バイク事故で高校中退した野宮朋美。
部活を辞めてバスケもできなくなってしまった。
彼と車椅子でバスケをする戸川清春との出会い。
戸川は、車椅子バスケのチームに入っていたが勝負へのこだわりが他の部員よりも強すぎてチームの中で浮いてしまってチームから離れていたのだった。
傷つくことを恐れて自分の殻に閉じこもってしまうきらいのある清春。
幼馴染であり心の恋人?安積にも、本当の自分をさらけ出せないでいるのに、なぜか野宮には違う反応。
それもそのはず、野宮と言うヤツは、人の心にずかずかと踏み込んでくるのだ。でも、決してそれは嫌な感じじゃなくて…。
本当のバリアフリーって、野宮のような気持ちの持ち方のことではないのだろうか?最初に清春に出会ったとき、車椅子に乗ってるのでどうやって話せばいいのか迷うのだが全然「障害者」とか「健常者」とかいう枠組みに縛られない。言いたいことを言うし、また、清春の車椅子を「実力、才能」と言い切る。
野宮との出会いが清春を変えた!!
そして、また、清春の車椅子バスケを見ているうちに、野宮も変わる。

清春がかっこよくってハンサムでいいのですが野宮がまたいいキャラなのです!事故を起こして夏美を歩けなくしてしまったことへの後悔にさいなまれながら、自分を変えたいと…「もっと ましな人間になりたい」と泣く野宮の姿には胸キュンです。

4巻では、清春がどうやって足の切断にいたったかそこから車椅子バスケをするようになったいきさつなどが描かれているけれど、その心の動きが手のとるように描かれていてものすごい迫力。「命よりも脚が大事」と思って毎晩泣く清春の姿にはこっちも泣かされる。
そして、勝田虎、山内人史と、タイガースとの出会い。

自分のありのままを受け入れてくれない父親への哀しみをぶつける清春に「じたばたするな」「子供にできることは信じるだけ」と、アドバイスしてくれた虎。
「ひとりじゃないぞ」
この台詞は、「バガボンド」の胤舜が、師匠に言われていたな。
あの時も感動でだーだーと涙が出た。この4巻は何度読み返しても泣けてしまう。

また、もうひとりの主人公、高橋久信。
すごく嫌なやつなんだけど、野宮の元チームメイトでエリートである彼(自分はAクラスの人間で、野宮のことはEクラスと言い切る)が、事故で脊髄損傷して車椅子生活になってしまう、彼の心の葛藤もまた見応えあり。普通の人間だったら、この高橋のように自暴自棄になり、世間を恨み、世をすねてしまうと思う。
しかし、この絶望から這い上がる高橋を、わたしたちは見たい。
這い上がって来い!高橋くん!!
待ってるよ!!


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井上 雄彦
408876143X

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井上 雄彦
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井上 雄彦
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5巻の感想はこちらです。
6巻の感想です。
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[あ行のマンガ家]井上雄彦 | Comments(0) | Trackback(0)
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