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「オル窓」第2部/池田理代子

2006年05月01日
今回は、「オル窓」第二部について熱く語る!!語らせてください!!
(第一部への思い入れはこちら

オル窓関連の感想目次はこちら


前回も書きましたとおり、わたしはこれ、リアルタイムで読んでて(中学の頃)第一部はものすご~~~~~~~く好きだった、ある意味では「ベルばら」以上に好きだったんだけど、第二部に入ってからの、イザークが美女に骨抜きにされデレデしている様子はとても正視に耐えられず、コミックも揃えるのをやめてしまいました。
が、これもまた、子どもだったわたしのとんでもない誤りで、今読んでみると確かに第一部や第三部のようなドラマティックな迫力には欠けるけれど、それでも、とーーーーーってもすばらしい物語になっています。

第二部はイザークの人生を描いたものですが、その陰に日向に出てくる女たちの人物造形の際立ってすばらしいこと。どの女もただのひとりとして平凡で、つまらない女はいません。この女たちの人生を読むだけでも、第二部の価値は充分にあります。
が、そこにイザークの音楽家としての苦悩が描かれ、なんとこんなにも面白い物語を、当時の私は読めなかったのか、なんと言う失態。悔やんでも悔やみきれません。くぅ~!

まず、アマーリエカタリーナ

アマーリエは、イザークのウィーンでのピアノの先生、シェーンベルグ教授の娘です。この女、名前からして「アモーレ」とか「アムール」みたいな、いかにも男をたぶらかしてなんぼ!みたいな女なんです。
初心な、初心すぎるイザークは彼女にあっという間にツイラクしてしまう。
時を同じくして、ウィーンに「音楽の勉強をする」と両親に偽り、看護婦となるために勉強しようとやってきたカタリーナ。もちろんイザークへの思慕は失われていない。
でも、イザークは美女との情事に夢中でカタリーナには目もくれません。
しかし、アマーリエにとってイザークとのコトはホンの遊びだったんですねぇ。
イザークが順にのっとってシェーンベルグ教授のところに「アマーリエをぼくに下さい」みたいな挨拶に行く。
寝たら結婚!!みたいな、実直さ、悪く言うと愚直な感じ。ここがちょっと萎えちゃう。遊びがないんだよね。疲れちゃうわ、アナタと付き合ってると。と、言いたくなる女もいるはずですが。
で、そのイザークのプロポーズに教授とその夫人はいたく戸惑ってしまい「アレには婚約者がいる」と言うのです。痛い失恋。イザーク。
結婚したけど、もともと奔放に生きてきたアマーリエ、両家の奥様としてじっとしておれず結婚後もイザークにちょっかいをかけます。が、イザークはちょうどピアノへの情熱を再燃させており、アマーリエよりもバックハウスを選びます。と言うことで振られてしまったアマーリエ、狂言自殺を試みます!
入院した先で、看護士となっているカタリーナにイザークは「この責任をとり彼女と結婚する」というのです。愚直!!しかし、なんと心の綺麗な人なんでしょう!!(すきなのか嫌いなのか…!)
カタリーナはアマーリエに「イザークを縛り付けるのは愛ではない」と詰め寄るのだけど、アマーリエは言うことも聞かないばかりか、病院を抜け出し夜遊び三昧、挙句火の不始末から病院を火事にしてしまう。そして、そのうえ自分だけが助かろうと防火扉も開け放しにして逃げるのだけど、患者たちを救ったのはカタリーナの勇気ある行動。(しかし、患者に『燃え移りやすいからガウンやナイトドレスを脱いで!』と言うわりに自分はしっかり着込んでるのが納得できないが)
カタリーナは、嫉妬に駆られたアマーリエに、実家ブレンネル家に看護士の勉強をしていることを告げ口され、親がカタリーナを連れ戻しに来ていたのだけど、この火事騒動の時に見たカタリーナの仕事に対する情熱と責任感を目に焼き付けて、結局娘の意思を尊重することにします。
そんなカタリーナにアマーリエも完敗。初めて自分と言うものを振り返り深く反省し、カタリーナに助言を求める。
その答は「お仕事をお持ちなさいませ。今まで身につけてきた教養や知識や才能を人のためにお役立てなさいませ。自分の存在の確かさ、生きていることの手ごたえをお見つけになります」とのことば。
そしてアマーリエはイザークのもとを去るのだった。
ちょっぴりサビシそうなイザークでした。
次に、イザークのウィーンでの教え子、ザイデルフォーファー家の美しき姉妹、長女イングリット、二女マルヴィーダ、三女クララ
と、モーリッツの妻ベッティーナについて。

この二女マルヴィーダはイザークの妹フリデリーケに瓜二つなんですね。
これに驚いたのはイザークだけではなく、商用でウィーンに来たモーリッツも。
モーリッツはかつての宿敵だったけど、ここではよき友人となってるのがなんか、胸が温かくなるような第一部ファンには嬉しい発展ですね。
マルヴィーダは、なんとザンクト・ゼバスチャンの「オルフェウスの窓」で、フランツという学生と知り合い恋に落ちていたのだけど、音信不通になってしまったうえ、モーリッツに「フランツは婚約した」と知らされる。そして大打撃を受けるのですが、もともと、フリデリーケを忘れられないモーリッツはついつい、泣いてるマルヴィーダに差し出してはいけない手を差し出し、抱きしめてしまう。
二人に甘い蜜月が訪れます。悪いな~モーリッツ!!
さて、モーリッツの妻ベッティーナがウィーンにやってきました。モーリッツが別れ話をしたのでしょうか。そして、その原因がマルヴィーダにあると知り、モーリッツに詰め寄るベッティーナ。
モーリッツがマルヴィーダに惹かれたのは、フリデリーケに似ているからだと見破ったのです。
自分が悪いと言うのなら諦める。だけど、叶わなかった初恋の夢を追って、現実の大切なものを見失ない、いっしょにはぐくんできたものを手放そうとしているモーリッツに
「忘れられないのなら一緒に苦しんであげる。いくらでもいくらでも寄りかかっていい。愛してるのよ。あなたのためならいくらでも苦しんであげる!!」と…。
わたしはこのベッティーナが結構好き。
第一部でもモーリッツを支えてあげる、と、フリデリーケの死で打ちのめされてるモーリッツに寄り添うけど、彼女がいたからモーリッツも大成したと思う。感謝しろよな、と言いたいです。
なかなか出来ないですよ!ベッティーナみたいには。おっとこまえな妻ですよ。

マルヴィーダはいったんは妻ベッティーナと対決する覚悟でしたが、このベッティーナの言葉を陰で聞いてしまい自分の敗北を知ります。
そんな時、フランツが現れる。
結局、フランツの婚約や、音信普通はフランツの意思によるものではなく、今でもマルヴィーダを愛しているという本心を知ったとき、マルヴィーダの体はモーリッツによって汚されてたということで、二人が選んだ道は「死」でありました。
出会いが「オル窓」であっただけに、結末は悲劇でしかありえなかったのだろうけど、ちょっと不倫の過去があったとしても、そこはしたたかに生きてほしかった。

イングリットは、使用人アントンが好きでした。が、アントンとはお互いの気持ちを打ち明けるも、親の勧めるままに結婚。結局は幸せな生活をしていたんだけど、アントンはイングリットを忘れられず、イングリットの息子、キースを連れ去ってしまいます。
その続きの話が「オルフェウスの窓・外伝」に書かれてます。
オルフェウスの窓外伝
池田 理代子 宮本 えりか
4087850757

三女クララは足が不自由だけど音楽の才能に恵まれていて、イザークとは師弟でありながらも、互いを深く理解しあうと言う間柄に。時々鋭いことを指摘してイザークをドキッとさせたり。
彼女は後に音楽家としての道を歩いていきます。

感想その2へ続く…
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[あ行のマンガ家]池田理代子 | Comments(0) | Trackback(0)
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