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セルロイド・ドリーミング/森川久美

2006年06月23日
セルロイド・ドリーミング

森川久美さんの「セルロイド・ドリーミング」をご紹介します。
本土返還前の香港を舞台に、シャノンとリュウを中心に繰り広げられる珠玉の名作集。

セルロイド・ドリーミング・1巻
●第1話:暗闇の天女(エンジェル・イン・ザ・ダーク)
●第2話:上海灘(シャンハイビーチ) 
セルロイド・ドリーミング・2巻
●第3話:Sey Good-By
●第4話:ミッドナイト・スリーパー
すべて『ララ』1984年3月号~12月号まで連載


●第1話:暗闇の天女(エンジェル・イン・ザ・ダーク)
 
香港にビジネスでやってきて、歓楽街で強盗殺人にあい銃殺されてしまった父親の死が納得できない岩間治子は、父親が美術収集家たちと会ったと教えられ、父の足跡を追う。
その最中に治子に近づく謎の美女。彼女は香港の大企業家チェンの妻、スン・メイリン。そしてもう一人、治子に近づくのは謎の美少年シャノンだった。
シャノンは治子の父親の死亡時の第一発見者だったのだ。シャノンは自分にかけられた嫌疑を晴らすために治子に近づくが、次第に明らかになる事実は、戦争時代の重く哀しいスン・メイリンと治子の父親の過去だった。
++++++
中国と日本の間にえぐられた大きな溝は、決して埋められることはないのかも知れない。中国の歴史、香港の歴史、そしてスン・メイリンの人生…。たかが一枚の絵のために人を殺すなんて!と、スン・メイリンを責める治子に、彼女は言い放つ。「わたしには殺す権利があった」と。メイリンの言葉や背負ってきた果てしない虚無が胸に突き刺さるようです。
そして、のこされた治子の孤独感、喪失感…。
救ったのはシャノンの笑顔。
「友達がいるだろ 
 あんたのことを大事に思ってくれてる人が
 囲りにいるだろ
 大丈夫 やっていけるさ 一人でも
 寂しくなったらこの街に来いよ
 俺たちがいるよ」
一見けちなチンピラだけど、暖かい心のシャノンの言葉が胸に心地よく、だけども切なくて寂しいラスト。

●第2話:上海灘(シャンハイビーチ)

ここではシャノンが、とある浮浪少年を拾うのだけど、じつは少年は少女で人気歌手だった。そのうえ、麻薬シンジケートの一員だった…。と言う話。
孤独な二人が出会って恋に落ちるまでは、そう時間はかかりませんが、しかし、バックについてるものが大きすぎて二人にはどうしようもなく…。
ステラのために一所懸命になるシャノンが健気です。そして、シャノンを巻き込むまいとするステラも…。

わかってるさ
いつだってあたしは疫病神だ……
古郷と呼ぶには
あまりにも
せちがらい
この街だけど…
それすら失くして
他国をさまようことに
あんたまで
巻き込みたくはないんだ…

ねえ…シャノン
海の向こうには
幸せなんて
ないんだよ

あんたは
あたしの人生で
はじめて出会った
いい事だったんだ…

それすら失くしたら

あたしはもう
生きてはいけないよ……


香港の喧騒を飲み込んでしまうような寂しい孤独感に圧倒される名作です。


●第3話:Sey Good-By

今回シャノンが拾うのは、浮浪少年ではなく、美少女歌手でもなく、中国人財閥の後継者、チェン・リーレン。チェンを亡き者にして、財閥を乗っ取ろうとする一族のお家騒動にはまってしまったシャノン。チェンを、やっぱり捨てて置けなくて助ける。
大金持ちのチェンと貧乏暮らしのシャノン。奇妙な友情が生まれるけれど、所詮は住む世界が違いすぎると思わざるを得ない。切なくて、そしてちょっぴりユーモラスな幕切れが微笑ましい。
突き放してるようで、ちゃんと見守ってるリュウがイイ感じ。


●第4話:ミッドナイト・スリーパー

シャノンとリュウの関係がより明らかになります。かっぱらいなどをしてストリートチルドレンのように生活していたシャノン。飲んだくれの父親の元で育ち「女の子ならもっと稼げたのに」と言い放つ父親を、リュウはその場で殴り倒してシャノンを引き取ったのだ。
さて、突然現れた男に、リュウの行動を報告する『スパイ』になれ、といわれたシャノン。おまえはリュウのスリーパーだというのだ。スリーパーとは、ふだんは普通に暮らしているがいざ指令が降りれば彼のために働く人間のこと。
リュウは自分をスパイにするために育ててくれたのか?次第に惑い不安になるシャノン。
リュウに直接確かめようにも、本心を見せず冷たく突き放される。そんな折にシャノンの父親が死に…。

シャノンの過去もだけど、リュウの過去が明らかになります。リュウは文化大革命の傷跡を背負っていた。アメリカで教育を受けた高名な大学教授というだけでなぶり殺しにされた父親。リュウ自身も恋人を置いて香港に逃げねばならなかった。そして何年も過ぎ、中国側は今更リュウを必要としている。当然拒むリュウ。そこにシャノンが巻き込まれて大怪我をしますが、そこで初めてリュウがどんなにシャノンを大事に思い、必要としているかがはっきりと分かるのです!!ぐっと来つつ「もう~、それならそうと、ちゃんと言ってあげなよ~。」って感じです。背中を見せられることを辛く思うのは、シャノンがそれだけリュウが好きだってこと。この二人の関係が、胸キュン!なストーリーです。ステラの元へ、シャノンを行かせてあげたいけれど、このままずっと香港で二人で暮らすのも、いいんじゃない?と思ってしまう。行くならリュウも連れて行ってあげて欲しい…なんてね…。

13年後 香港は
どうなっているのか

そのとき
オレたちは
どこでどうして
いるのか…

それは
誰にも
わからない

香港か
カナダか…

それともまったく
別の土地か…

どこで

どうやって
生きていようと…

オレはきっと
あんたのことを
考える度に
思うだろう

人生は
悪いことばかりじゃないってね…



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[ま行のマンガ家]森川久美 | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
千華さん♪
こんにちは!TBありがとうございました!
森川さん、記事を書くために読み返したんだけど、いいですよね~。じわーんとします。
シャノンの「オレの寂しさと彼女の寂しさを」と言うのもすごく良かったし心に残りました!これも引用したかったんですが、わたしはステラの気持ちに大きく感動してしまいましたよ。どちらの気持ちもすごく切なくて、相手のことを思っているのがいいですよね。
たしかに、この4編のなかでは、ミッドナイト・スリーパーが一番良いと思うので、千華さんが取り上げられたと言うのもうんうん!!って感じがしました!!
もっと上手に感想が書けたらよいのですけどいかんせん、文章力がなく。
ちょうど、終末持ち主の妹が帰省していたのでまたまたマンガ談義で盛り上がりました!(笑)
ゆっくりですけど、また森川作品順次アップしてゆきますね~♪
やっぱり涙腺にくるマンガですね
こんばんは~~。
「セルロイド・ドリーミング」、short さんの記事を拝見して、改めて、すばらしくそして切ない作品だったなあと感動を新たにしています。
私は「ミッドナイト・スリーパー」しか取り上げませんでしたが、ほかの3作もすごく好きです。
「上海灘」では、シャノンの「オレはただ… オレの寂しさと彼女の寂しさを 重ね合わせて生きていったら 二人の寂しさは少し減るんじゃないだろうか… そう思ったんだ」っていうセリフがひどくツボでした。
作者である森川さんの優しさがにじみ出ているような、ステキなシリーズでしたね。

トラバとコメント、ありがとうございました。
こちらからのトラバは、「蘇州夜曲・南京路に花吹雪」の方に送らせていただきました。

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