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黄泉比良坂/山岸凉子

2007年01月19日
4253091210黄泉比良坂
山岸 凉子
秋田書店 1985-11

by G-Tools


yomotuhiraksaka


収録作品  (掲載雑誌)
●黄泉比良坂(よもつひらさか)1983年ボニータ9月号
クリスマス 1976年プリンセス1月号
●海底より(おぞこより)1983年ひとみデラックス11月25日
●シュリンクス・パーン 1976年プリンセス5月号
●幸福の王子 1975年プリンセス1月号




●黄泉比良坂(よもつひらさか)

暗闇の中で目覚めた女。体があってないような奇妙な感覚に慄きます。
悶えながらまた気を失い再び目覚めたときは、それまでの自分がどうあったのか忘れかけている事に驚きます。それどころか、何も聴こえず何も見えない・・・。自分はどうしてしまったのか。
そんな女もふと、道行く人やクルマを見たり音を聞いたりすることがあり、次にそういうことがあったら必ず声を掛けて助けてもらう事を念頭に置く事にする。

実はこの女は死んでいるのですが、それが自分で分かるのは、自分と同じように世の中を呪っている女に出会ったから。
暗闇の中で生への執着から抜けられず、苦しむ女の様子がリアルです。
自分も死んだらこんな風になるのだろうか?
そして、自分の何かがこう言う女を呼び寄せるのだろうか?
そんな怖さがある一遍です。


●海底より(おぞこより)

高校生の登(みのる)の家に、先日までアイドル歌手だった翼マミが身を寄せることになった。マミは失明してしまい、芸能界から去り今は親戚一同のお荷物となって、登の家に身を寄せたのだ。
が、そこが壇ノ浦であり、平家の滅んだ場所である事から、平家の怨霊に魅入られてしまう真美。耳なし芳一と同じく目が見えないということと、生への執着がなく自暴自棄な雰囲気を身にまとっているから。
少し見えていた真美の目がついには見えなくなったとき、本当に平家の怨霊が真美を迎えに来るのだった。


真美ちゃん、人気があるときはちやほやされて、でも目が悪くなったら誰からも見向きされなくなってしまったその絶望感とか虚無感が平家の怨霊を引き寄せたと言う感じだよね。
目が見えなくなるぐらいなら命がなくなればよかったとか思っているから。
マモルから見ればちょっとイヤなこなんだけど本当は世を拗ねているだけで、立ち直ってないだけ。でもそこに付け込まれたという。

平家物語を初めて知ったのはもちろん、「耳なし芳一」を読んだときですが、見えない中であの生臭いにおいや鎧のこすれる音などが響くと言う設定に、ぞーっとなったもんです。
それをこの真美は体験するのだから怖い。
おりょーサマの描く平家の人々がまた物悲しく(安徳天皇の入水シーンなども)平家の無念が押し寄せてくるようです。

主上ことしは八歳に
ならせ給へども
御年の程より はるかに
ねびさせ給ひて
御かたちうつくしく

・・・・・

「波のしたにも
都のさぶらうぞ」
なぐさめたてまて
ちひろの底へぞ
入り給ふ

・・・・・・


汀に寄する白浪も
うすぐれないにぞなりにける
主もなきむなしき船は
塩にひかれ風にしたがって
いづくをさすともなく
ゆられゆくこと悲しけれ




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[や・ら・わ行のマンガ家]山岸凉子 | Comments(2) | Trackback(0)
Comment
はに~♪コメントありがとう!!
嬉しい反応だったので記事をもうちょっとだけ、丁寧に書き足しといたよ(笑)
うんうん、あの安徳天皇の入水シーンは気の毒だよね~。
しかし、よく覚えているね。相変わらず。
脱帽しますぞ!
「ガシャリ」ね!!うんうん。
あの後やっぱり真美は生きる気力を失って、波の下に・・・?
あの終わり方がまた不気味じゃ~~!
海底より・・・
実は地味に好きな作品だったりします。
マミの周囲で展開される平家物語が哀しくて怖いよね。「水の底にも都がありまする…」とかね。
さいごの“ガシャリ・・・”も怖いね^^;

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