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シュリンクス・パーン―自選作品集/山岸 凉子

2007年06月12日
4168110451シュリンクス・パーン―自選作品集
山岸 凉子
文芸春秋 1997-06

by G-Tools


こちらも文庫版の自選作品集です。 第5弾。
収録作品は↓です。

●シュリンクス・パーン
●パニュキス
●パイド・パイパー
●グール―(屍鬼)
●鏡よ鏡


シュリンクス・パーン
若い新進作家が親族の遺産相続で古い別荘を貰い受けます。遺書には「そこに住むように」と言う事と「パーン一匹飼育する事」という2つの条件が書かれています。そこで暮らし始めた主人公が出会ったのは、不思議な浮浪児のような少年だった。「愛されないもの」と自分を思い込んでいるシュリンクス・パーンと若い作家の心温まる童話のような物語です。

●パニュキス
片時も離れることなく成長してきた兄と妹。あるときから兄は学校に入れられ妹と引き離される。妹は嘆きながら人生を送るが兄は自分の人生を生きていく。兄への依存が捨てられない妹の人生は…。

●パイド・パイパー
忌まわしい思い出の土地、M市に夫の転勤でやってきた主人公。妹を変質者に殺されてしまった彼女が、トラウマと闘いながら再び起きようとする惨劇を防げるのか。
詳しい感想はこちら

●グール―(屍鬼)
船の難破により無人島に打ち上げられた二人の男女。思わず女に襲いかかれば女は男の腕をかじりだし…。ふたりは「そんなもの」になってしまった。表紙絵は、美しい姿の女が「顔」をはいで見ればそこにある顔は醜い化け物。うーん、深い!

●鏡よ鏡
女優の娘は太っていて醜い。クラスでも苛められっこの彼女が、母親の取り巻きの一人によって変貌を遂げる。




●パニュキス

ハリーとネリーの幼い兄妹。叔母夫婦に育てられています。あまりにも浮世離れしたふたりの行く末を懸念して、また、ハリーの音楽の才能を伸ばそうと、叔母さんはハリーを遠くの音楽学校にやります。
この後のネリーの嘆きようがもの凄い。
ハリーに依存しきっている妹。
ハリーは音楽学校で友達も出来て恋人も出来て、そしてついには結婚し子どもも生み・・・と順当に人生を歩いてゆくのですが、ネリーの時間は止まったままなのです。
ハリーの友達のチャールズがネリーに思いを寄せるのですが、ネリーは気付きもしません。ひたすらハリーを奪っていった音楽や友達を恨んでいます。
しかし、戦争が起きハリーの出兵。そしてハリーの死。
チャールズをかばったために死んでしまったと聞き、ネリーはチャールズをさらに恨みます。
その後、童話作家として成功したネリーの元へ一通の訃報が。それはハリーの妻のクレアモントの死の知らせでした。
まだ幼いハリーの息子を引き取る事にしたネリーとおばさん。そこにジュニアを連れてきたのはチャールズでした。片腕がありません。
童話を書くことで自分の姿を客観的に見つめられるようになったネリーは、自分がハリーを愛していると言うよりも、ハリーを通して自分を、自分だけを愛していた事に気が付きました。
そんなネリーにチャールズは「同じ心を持つ人」と求愛するのです。
物語の冒頭と最後に「パニュキス」の詩が効果的に使われています。

おりょーさまの描く漫画は、いつもいつも「人間の人格」を大切にするように、という示唆が含まれているように感じます。
前回書いた「ブルー・ロージス」もそうなのだけど、人が人として幸せになるためには、まず自分自身の人格を大切にする事、それが出来ない限りは他人の人格も尊重できない。すなわち、それでは真に幸福にはなれない…と言う示唆です。(「天人唐草」の岡村響子なんかもね)幸せとは、自分自身の人格を尊重してもらった上で相手を愛する事が出来る事なのですよね。
ネリーは、兄ハリーに自分自身を投影して、自分だけを愛していることに気が付いたのです。それが子供のエゴだったと、気が付いたとき彼女に幸福が訪れる。
優しいエンディングに胸が暖かくなる素敵な物語でした。



●鏡よ鏡

もう一つ、取り上げたいのは「鏡よ鏡」です。
有名な美人女優、その名も羽深緋鶴(うぶか ひづる)を母親に持つ主人公、鈴木雪。太っていて決して可愛くないのに、しぐさや笑い方などの立ち居振る舞いは一生懸命母を真似ている、そのアンバランスが人目にはおかしく映るのかクラスでは苛めにあっています。
母には7人の取り巻きがいるのですが、8人目の取り巻きが登場した時に、母の仮面が壊れます。8人目の紳士は母親の初恋の相手だったらしく、彼が雪に関心を寄せたため雪に激しく嫉妬するのです。
それまでは冷たい態度を取ってはいても、真剣に雪を叱ったり怒りをぶつけたりはしなかったのに。
母親に愛されていない、と気付いた雪は8人目の紳士の下へ身を寄せ、幸せに。ダイエットをして綺麗に変身してアイドルとして芸能界にデビュー。まさにシンデレラ・ガールとして。
母は王子様(8人目の紳士)を逃した惨めな「悪い魔女」。今日も鏡に向かって「この世で一番美しいのは?」と訊いているのが、雪には想像できるのでした。

今までもたびたび登場する「言葉による呪縛」。これをこの母親は娘に与えています。「お前がマネージャーになるなんて私の恥だ」とか「まるでブタ」とか「この子の父親も脂性だった」とか・・・。これで雪は自信のない子どもになっています。初めて自信を与えてくれた8人目の紳士。自信によって雪は生まれ変わった、と言うのがおりょーさまらしい展開です。
特筆したいのは母親が自分の裸を鏡に映して見つめるシーンです。
オールヌードで、ナイスバデ~なのに、全然色気がない!!
それはこのお母さんの顔があまりにも怖いから!
母親としてよりも女として生きる徹底振り。天晴れ!と言ってもよいのかもしれないけど、それは幸福そうには見えません。娘すら愛せない、自分のみを愛している母、ある意味ではもう一人のネリーなのかも知れません。

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[や・ら・わ行のマンガ家]山岸凉子 | Comments(0) | Trackback(0)
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