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ツタンカーメン/山岸凉子

2007年06月13日
ツタンカーメン (第3巻)
山岸 凉子

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山岸版、ツタンカーメン発掘実録となりましょうか。
主人公はモチロン、ハワード・カーター。
彼がいなければツタンカーメンの名はまだ誰も知らないままだったのかもしれません。今でこそ一番有名なエジプトの王様の名前ですが、今からホンの100年ほど前までは誰もその存在を知らなかったほど、砂に埋もれていた人物だったようなのです。

これは、エジプトの遺跡発掘にひとかたならぬ情熱を持つ主人公ハワードが、勤めていたエジプトの考古局を上司との諍いでクビになり、その後イギリスの貴族、カーナボン卿に雇われて王家の谷で根気よくツタンカーメンの墓を探し、ついに発掘しうるまでの汗と涙の物語なのです。
発掘権を手にした西洋人もエジプト人も、みんなが私利私欲に走っていたと言っても過言ではなかった当時、ハワードは純粋にそのロマンと芸術、知的欲求などのために発掘を続けます。学究心が高く博愛主義者で現地人をないがしろにしないで接する紳士なので、好感度の高い主人公です。

ツタンカーメン王墓はハワードの詳細な記録のお陰で現在も発見当時を再現する事ができる。」これは、ハワード・カーター以外が発見者であった場合、あり得ないことと賞賛される。



結局彼がツタンカーメン王の墓の発掘に貢献した功績はもの凄く偉大なのですが、だからこそ、ハワードはファラオに「選ばれた」のです。
不思議な少年、カーという姿を借りてファラオはハワードを発掘に密かに導きます。時にはライ病患者の姿を借りてお守りを渡したり(このお守りは、『ウジャト』と言う名前の古代エジプトの護符で、『ホルス神の万能の目』と言う事です。目の形をモチーフにしてあり、この目がいつもカーを思い出させ、ハワードを危険から守ってくれます)カーの口から危険を知らせたり、そうして導かれるように感動きわまる発掘までこぎつけるのです。

この大変な事業を成し遂げるまでのドキュメンタリー風の部分や、面白かったのは王墓の話!!

・・・・エジプトの王様たちの死後、その墓はすぐに当時のエジプト人たちに荒らされ、宝物はほぼ残らず盗まれていたそうです。墓荒らしってもっと後年の話かと思ってたらビックリですわい。
で、トトメス一世のときに「わたしの墓は荒らさないぞ!」と、すっごく分かりづらい場所(西テーベの崖肌)に墓を作らせた。以後の王たちもそれに倣ったので、そこが「王家の谷」と呼ばれるようになりました。
しかし、トトメス一世の安息は続かず・・・何度も引越しをしているのです。移動のたびに、誰も墓の場所をもらさない様にと、偶然通りかかったものも含めて、建築や移動に関わったものを全て殺したにもかかわらず、王墓の位置は漏れて墓はあらされてしまいました。警備の最高責任者たちも墓泥棒と手を組んでいたからだそうです。
忠実な家来たちと墓泥棒とのイタチごっこのすえに、ミイラたちがたどり着いたのは王たちの共同墓地。そこでは王たちは3000年間安全に眠る事ができたのですが、大雨によりその入り口が現れ(1881年)ついに王たちの墓が現代人の目に触れる事になったそうです。・・・
と言うような話からして、へぇ~!ほぉ~~!の連続で面白かったです。
また、いよいよツタンカーメン王の墓を見たときの関係者たちの感無量の様子や、その発見のあとのイギリスとエジプトの宝物をめぐる利権争いや駆け引きなど、どろどろした部分も目を逸らせない所です。それに、これが「ツタンカーメンの呪い」と言われるものでしょうが、カーナボン卿が謎の高熱で死んでしまうのです。(他にも王墓発掘に関わった人のうち、何人かが死んでしまうんですね)
ハワードは知らなかったようだけど、カーナボン卿が死に、その家族たちは遺跡発掘を続ける意思がなく発掘権を手放すつもりだったのに、唯一の理解者である娘のイーブリンが、身売りと思えるような結婚により、発掘権を維持しハワードはそのお陰でツタンカーメン王墓に関わり続ける事ができたのだとかも・・・。イーブリンとハワードの淡い濃い模様も切なく、この発掘権をめぐるイーブリンの行動がいじらしく、切ないですね。

3000年以上前・・・想像もつかないくらいの年月に、人知を超えた壮大なロマンを感じたしだいです。
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[や・ら・わ行のマンガ家]山岸凉子 | Comments(4) | Trackback(1)
Comment
はい!わたしもカーターに好感が持てました。こう言う人はたから見てるのは好き。イブリンの気持ちになったらちょっとじれったいと思うけど、安易にラブロマンスに走ってないのが良いです。史実的にそうだから当然かもしれませんが・・・。カーの存在などちょっと中途半端だったかもしれませんね?

そして、なんと白土三平さんのファンって、驚きですね!でもある意味分かる気がする!だからカジックさんもこの2人の作品がお好きなのかも。わたしも!
で、一番すきなのはどの作品なのか、伺ってみたい(*^_^*)
こんばんは。

これも読んでますよ~。
全体に地味な印象なんですが、カーターが好感の持てるキャラクターなので、爽やかな読後感がありますね。でも、もう少し盛り上がりが欲しかったかな?

話は違いますが、昨日ゲットした『妖精王の帰還』という作品に山岸さんのインタビューが載ってて、好きな漫画家が何と! 
白土三平さんなんだそうです。
shortさん、知ってました?
お二人の漫画のどちらも好きな僕としては、感激のコメントでしたね~。
こんばんはー千華さん!!わお、待っていていただいたのですか?恐縮です♪
エジプトのこう言う話も面白いのですね!こないだテレビで特番をやってて、途中までは見たのですがなんせ長かったので挫折してしまいました(^^ゞ
でも、この漫画とそっくりな内容であった記憶が・・・。厨子のところとか「これこれ!」と、漫画を読みながらテレビを思い出していました。
うんうん、カーター君、なんだか切なかったですね。恋愛と情熱は相容れないのか・・・イブリンの影ながらのサポートも切なかったです。人類に偉大な貢献をした恋心だったのですね。
ああ、千華さんがおっしゃっている作品群わたしも大好き!でしたが、最近は「クリスマス」とか「パニュキス」みたいな心温まる話も良いなぁと思います。
重い内容だとしてもしんどくないんです。稀有な漫画家です♪
こんにちは、shortさん。
山岸さんの「ツタンカーメン」を読む予定…とお聞きしていたので、記事のアップを今か今かとお待ちしていました。
私にとっては、久しぶりに読んだ山岸作品で、そしてすごく好きな作品です。
どこがこう…っていう風にはいえないんですけど。カーターくんが何か切なくてね。
最近の作品はほとんど読んでいないんですが、山岸さんの作品は、どれもみなすごくインパクトがありますよね。
私としては、ちょっと怖い「天人唐草」や「スピンクス」「黒のヘレネー」などの、精神的に崩壊していく人間の弱さや怖さを描いた、ちょっとホラーな作品群が大好きです。

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イシスイシスはエジプト神話の女神。オシリスの妻で、ホルスの母。ナイル川|ナイル河畔のサイスに大規模な神殿があったことで知られる。イシス信仰は、共和政ローマ|共和政末期にローマへ持ち込まれて発展し、ほぼローマ帝国全域で崇拝された。イシスがホルスに授乳する様子