2007年07月09日
![]() | 青青(あお)の時代 (第1巻) 山岸 凉子 潮出版社 1999-01 by G-Tools |
青青(あお)の時代 (第4巻)
山岸 凉子

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あるときキナのところにやってきた頭のボケた老婆とその孫の壱与(いよ)。壱与はばばさまを大事にして仲睦まじく暮らしていた。
あるとき、伊都国の王子がやってきた。
王子は「照日女(ティラヒルメ)さまと7~8歳の少女」を探していたのだ。
壱与とばばさま、村人からは邪険にされていたふたり(なんと、村の少年たちに陵辱さえされてしまった壱与)だけれど、実は大和の国の「聞こえさま」と呼ばれる巫女、日女子の血縁者だった。
伊都の国の王、天日男(アマヒルオ)が今にも崩御しそうなので、そのまえに日女子の妹「照日女(ティラヒルメ)」を担ぎ出そうとしたのが、伊都国の第四王子の狗智日子(クチヒコ)で、彼らに探し出された壱与とばばさま(日女)は伊都国に渡る。(村の中で唯一、ふたりに優しく接したシビもついてゆく)
しかし、日女は今では正気ではなく、妹の日女子を見ては取り乱す。そのわけは、日女と日女子の過去にあった。その過去とは・・・。
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さっと言えば、卑弥呼の勢力の衰え始めた頃、その後の権力争いを中心に、その中で翻弄される主人公壱与を描く物語です。
うーん、こう言う物語って読むと「良くこんな話を考え付くなぁ」という驚きが起ってきます。実際にこう言う時代があり、ここに描かれている人物も歴史上に存在して(存在したとされて)そのひとたちをモチーフにして、いかにも本当にあった物語のように語る、それがすごいです。
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卑弥呼、というとわたしはやっぱり「火の鳥」の1巻黎明編の卑弥呼の印象が強いんだけど、あの卑弥呼もこっちの卑弥呼(こっちの卑弥呼は『日女子』と書いて『ヒミコ』と読みます)も、どっちも「美」への執着が強いんですけど。そういう定説でもあるのでしょうか。
(しかし、どうしても「ワルモノ」みたいな感じがしますね、ヒミコ。善人には描いてないな、どこを見ても。本当のところはどうだったのでしょうね。この時代にタイムスリップして確かめてみたくなります。ドラえもーん!)
最高権力者としてその地位を確保するために、なかなか生臭いこともやっていく日女子ですが、逆に主人公壱与の心の美しさ、いじらしさが好ましく、死体処理の仕事をしていたクロヲトコ=シビとの信頼関係も胸を温かくしてくれます。いろんな不思議現象も出てきますが、それがあながち超常現象としてだけに終わらず、どこか科学的な解明もあり、どちらとも取れるのも面白い。
盛り上がるのは盟神探湯(クカタチ)という儀式の場面!第一王子を殺したとしてシビが死刑になりそうになった時、それをかばった壱与に対して日女子が命じたもの。煮えたぎったお湯に手を入れると言う、儀式というより公開処刑みたいなもんで、もしもシビが潔白ならクカタチをやっても壱与は火傷も負わずに無事であると。
それまでにも多少不思議な体験をしている壱与ですが、まだまだ10歳そこそこの幼い少女、煮えたぎったお湯は怖くて溜まりません。震えるその姿を見てシビは「自分は王子を殺していないけど、このまま処刑されても良いから、クカタチを止めろ」と言うのです。うーん、男です!そのシビの声を聞いて、壱与はお湯の中に意識朦朧となりながらも手を入れるのですが、不思議な事にお湯は一瞬だけ冷めて、壱与の手は無事でシビも助かり壱与のちからを世間に見せしめたわけです。
そして、日女子の姿があまりに若いということの種明かしも面白かった。これは日女子が自分で言うのだけど、自分は歯が丈夫だから若さを保てると言うのです。ここんとこ、女性は必読です!(笑)↓
トシを取り、奥歯が磨耗したり虫歯になったりすると、奥歯が短くなる→噛みあわせが悪くなり、下あごが奥に引っ込んでしまう→物を噛む時に下の前歯が上の前歯に当たらず(たとえばトマトの皮が歯で噛み切れなかったりするわけです。)→下あごの歯で頭の重みを支えきれなくなる。(と、書いてあるんです)→歯で支えきれない顔の前面の部分、ようするに顔の筋肉や皮膚とか?が垂れ下がってくる。
と、こう言うことらしいのですよ。
だから、トシを取ってくると人の顔は顔の真ん中から下がってゆく、目じりも下がり、鼻梁が下がり口角が下がる、あごが短くなり、奥歯をかみ締めているのでえらが張る・・・要するに、年取ってくると、顔が大きくなりアゴも太くなりますよね。そういうことが書いてあったんです。
まぁ日女子は実は「臨月に満たずに生まれた胎児」を食べているから若いらしいのですが。
もう一つインパクトがあったのは、ばばさまの預言。「女の首が転がっている」と言って壱与や女官たちを怖がらせたのですが、実はそれは、日女子が死んだ後、その殉死のために女官たちを何人も生き埋めにします。首だけが地面から出ているので、首が転がっているように見えるのです。
さて、主人公の壱与。みんなに苛められ虐げられ、はては陵辱されてしまい、大好きなばばさまは死んでしまうし・・・不幸の連続で、めげまくってしまうのですが、シビがばばさまを葬る時お墓を花で一杯にしてくれたことで、壱与の気持ちは慰められます。後にシビにそのときいかに自分の気持ちが慰められたかを伝え「すばらしい仕事だ。一緒に手伝わせて欲しい、わたしをお嫁さんにして」と、大胆にもぷろぽーずしちゃいます。シビはせめてもうちょっとハンサムに描いて欲しかった・・・と言うのは本音なのですが、ハンサムでなくともシビにはとても好感が持て、この先もふたりで幸せになってほしいなと思うのです。このラストは感動的。うるるんでした。
ハンサムでないといえば、狗智日子。のっぺりした顔で全然萌えませんが、物語的にはなかなか魅力的。なので、彼もせめてもうちょっとハンサムだったらよかったなぁ。かろうじて第3王子の弟日子が、可愛い顔でそのうえだんだんと逞しくなっていくのが救いでした。
物語はものすごく面白かったし、ラストは感動もしたのですが、やっぱ少女マンガだもん、ハンサムは欲しいよね!(笑)
同時収録は「牧神の午後」です。
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