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アリスにお願い/岩館真理子

2005年06月30日
アリスにお願い
岩館 真理子
4088640799


集英社ヤングユーコミックスワイド版

収録作品
◆アリスにお願い…ヤングユー1990年11月号
◆アリスにお願い第2話…ヤングユー1991年1月号
◆アリスにお願い第3話…ヤングユー1991年2月号
◆対談 吉本ばなな…ヤングユー1990年9月号
後書き付


+++あらすじ+++

美名子は両親を亡くし、従姉妹の江利子の家で育てられている。江利子は小学生のころ、川べりの小屋で遊んでいる時、土砂崩れにあい友達数人と一緒に死んでしまった。小屋には外から鍵がかけられていたのだ。生き残った美名子とアリスは寄り添うように大きくなったが、崩れた小屋から江利子の死体だけが見つからなかったために、家族は不審に思っている。そして、鍵をかけたのは誰か…。
みんなと一緒にいながら、一人だけ助かったアリス…アリスが鍵をかけたのか?それとも…。

すっごく綺麗な本です。裏表紙まで綺麗。
ミステリー仕立てで、鍵をかけたのは誰なのか、どうして江利子の死体だけが見つからなかったのか…。それらが追々分かってくるんだけど、ミステリーとしても読み応えがある。作者自身も、「こんな怖い話を書いたのは初めて」とのこと。わたしは大好きな一冊。

+++ラスト、ネタばれにつき反転してね。↓

小屋に鍵をかけたのは、美名子だったんです。
女王のような存在のアリス。そして孤独な美名子。
ほんのイタズラ心で鍵をかけたその直後、地滑りで小屋が潰れてしまう。
美名子のいとこ、江利子だけはアリスたちと小屋に入らなかったため、すべてを見ていたのです。
事の次第を目撃された美名子は、今度は江利子を手にかけてしまう。
アリスは、自分だけは逃げ道から這い出してきて、地滑りの犠牲にならなかった。そして、江利子が川に流れているのを見る。沈んでいくのも…。
二人は誰にもいえない秘密を共有することでお互いを拘束し合い依存しながら寄り添って生きてきたのです。
考えてみればアリスが言うように自分が殺した相手に成り代わるように、その家の一員となり、信さんを好きでいる。アリスに罪をなすりつけるように…。そんな美名子は、罪に対する贖罪の気持ちや、罪を抱いて生きていく事の辛さ苦しさを感じてるとしても、やっぱりしたたかで、残酷さだとわたしは思ってしまうのです。
そんな美名子の代わりに死んでいったアリス。
冷たい人間なのはアリスなのか美名子なのか…。
美しい背景とロマンチックな描写の中で、少女の残酷さや虚無感を見事に表現しています。江利子のように川面にアリスが浮くラストは泣けて泣けて…。また、薔薇の花が泣かせる。

こんなにも怖くて美しくて、そして哀しい物語は、初めてでした。
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