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わが友フランケンシュタイン/和田 慎二

2009年05月01日
わが友フランケンシュタイン (1980年) (マーガレット・コミックス)
わが友フランケンシュタイン (1980年) (マーガレット・コミックス)和田 慎二

集英社 1980-01
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初出 昭和47年(1972年)別冊マーガレット 9月号
シリーズとして「谷間に鳴る鐘」48年9月号
「怒りの十字架」50年2月号
「炎の地平線」50年10月号 それぞれ掲載ののち、1977年(昭和52年)3月にコミック発行。

frankenstein

連作短編集の形をとっていて、主役は巨大なフランケンシュタイン(博士の作った怪物)です。
シリーズの一作目で、首に醜い痣があるとコンプレックスから心をねじけてしまったお姫様のミアが、「サイラス」と名前をつけたので、シリーズ全編サイラスで通ってます。
心のねじけたミアは、物言わぬこの怪物の、包み込むようなやさしさに触れ、心を開いていきます。
村人たちも最初はサイラスを恐れていたけど、馴染んでゆきます。
あるとき、森に大火事が起こり、サイラスは身を挺して村を守ります。その後、この村ではサイラスの姿を見たものはいないのでした・・・。
という、良くある昔話のような単純で明快で、でもグッとくる物語展開。
そう、これ、だいだらぼっちとかの類ですよね。
斉藤隆介の「八郎」なんかも、同じようなカンジで、何も見返りを求めずひたすら自己犠牲に徹する姿に涙涙です。よく似てます、サイラスも。
人間の悪意がない気持ちのよい物語になっています。ちなみに18世紀末の西ドイツの話。(・・ん?ドイツが東西に分裂したのは・・第二次世界大戦後じゃないの??と、大人の目線で見ないように(笑))


2話目の「谷間に鳴る鐘」では19世紀初頭のスイスの山岳地方が舞台。
氷穴で氷詰めになって冷凍保存(笑)されているサイラスを子どもたちが発見。主人公のイルゼはじめ、子どもたちはサイラスを温かく迎え入れます。ただし頭の固い大人たちにはナイショで。
山の頂上に大きな風穴があり、風がそこを抜けるとき出す音が、ふもとに届くときにまるで悪魔の叫び声のように聞こえる⇒その風穴に鐘をつるす⇒その役目を負ったサイラス⇒そのまま姿を見せず。
というように、このお話のサイラスもまた村の為に大きな仕事をなし終えて、去って行くんですが、子どもの小さな裏切りが、大きな犠牲を呼ぶと言う、なかなかシビアな部分もあって面白いです。


さて、第3話目の「怒りの十字架」。これは当時ものすごく印象に残っていて、特に大好きなお話。
今回サイラスを見つけたのは、喋る事ができない、村の居候で小間使いのヒルダと言う少女。
湖の底に沈むサイラスを見つけ、たすけ上げ、友達になります。
村の領主は冷酷で強欲。伝説の宝探しの犠牲になってヒルダが死に、サイラスは怒りをたたえて村人や領主に復讐して去っていく・・・。と言う結構血なまぐさい話ですが、ヒルダが徹底的に可哀想な娘に描かれていて(なのに優しい)勧善懲悪が凝縮されてて、とても感情移入してしまうのです。
しかし、和田さんの「説明文」がこのころから多くなってきてますね。(笑)


第4話目はなんだかSFチックで、今ならちょっとターミネーター3でも思い出すんじゃないでしょうか?
フランケンシュタイン博士がサイラスに復讐する為に(婚約者とその弟を殺された)完全人間型のヒューマノイドってやつですね、イボンヌと言う名前のターミネーター・・もとい、人造人間をつくっちゃうんですね。で、イボンヌには心がないんだけど、サイラスと接するうちに「心」を持ち始め、サイラスを愛するようになり、やがてサイラスの為に犠牲になって死んで行く・・と言う話。
斜陽貴族のブレイク家の娘クリスチーネは足が悪く、車椅子生活。彼女、麻宮サキが演じています。といいたいぐらい、サキに似ていて、サキの・・いや、クリスチーネの世話係が「スガ」ちゃん。これは名前もスガなんですもん。それに、クリスチーネって、ジャイ子のペンネームですから。なんか、ツッコミどころが多いんですよね・・(^_^;)。
ここでサイラスはまた、果樹園の火事で(爆発物が火山噴火を誘引し、果樹園が燃えた)炎に包まれ、姿を消します。例によって死体などはなく、どこかで生きていると思われます。フランケンシュタイン博士もまだまだ復讐に燃えています。続きを和田先生は描くつもりだったのかな?

わが友フランケンシュタイン (1980年) (マーガレット・コミックス)
和田 慎二
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わが友フランケンシュタイン (St comics)
和田 慎二
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[や・ら・わ行のマンガ家]和田慎二 | Comments(0) | Trackback(0)
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