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10年も20年も/いくえみ陵

2009年07月20日
プールの水面に反射するキラキラのように刹那的、でもその一瞬が何ものにも換えがたいほど強いインパクトで目に焼きつき、胸に刻み付けられる・・・それこそ、10年も20年も色あせないままに、忘れられることがない。そんな思い出のひとつが描かれているイメージです。

とある高校生が、ひとりの同級生に振り回される夏の一部分を切り取った、ただそれだけと言えばそれだけの作品なんですが、思春期のもやもやや切なさが夏のきらめきを背景に描かれている名作で、私のなかではいくえみさんの作品としてトップ3のひとつです。(他の2つは「ベイビー・ブルー」と「My dear B.F」)

高校一年、水泳部員の小梨実。夏休みの始まる直前、それまで一度も登校しなかったクラスメートの江口洋暁が登校したとき、最初の出会いがプールサイドであった為になんとなく、彼の「面倒」を見る羽目になってしまって、彼の生活は振り回されてしまいます。
一度も登校したことがないほどの「問題児」なのだけど、意外にもひとなつこく、ビジュアル的にも人好きがして、特に女の子たちにモテモテ。自分の片思いの和江も江口に一目惚れしてしまうし、自身もそのキャラに好感を持ちながら、片方では自由人で勝手気ままなのにモテてしまう(いいとこどり?)の江口に嫉妬も感じている。そしてそんな自分にも嫌気が差してしまう。
なんとなく世話を焼いてしまうだけなのに、水泳のタイムが上がらずコーチに叱られてしまったりもするし。。。どうも、江口が登場してからの自分は、いいところがないぞ・・・なんだかわからないけど、イライラするぞ・・・・と言う感じがとってもよく出ていて、小梨の気持ちが手に取るように伝わります。

江口は江口で、「いいやつ」なんですよね。
和江にしつこくされても邪険にしないし・・(笑) 誠意を持って断るところは断るし。ちゃんと小梨が和江を好きなのを分かってて、和江に迫られても手を出さないし。妹思いだしね。ちゃんと「長男」クンである部分が切なかったりします。


江口は言います。
「時々さあ 自分のいるところから わーって逃げ出したくなんない?
ぜーんぶぶんなげて」

ぜーんぶ捨てる
自分の 
本も
CDも 
レーザーディスクも
好きな服も
家も
学校も
友だちも
親も
恋人も
ぜーんぶ捨てて
わーっと
逃げる
きっと
爽快だよ

実は江口は恋をしていて、その恋が作品中いたるところに散りばめられてて、読み終えてみれば江口の恋物語でもあるんだけど、私はやっぱり、少年たちのお互いを思う気持ちが心に残ってます。

夏になると、読み返したくなる作品です。何度読んでも大好きな作品。読むたびに泣けてきます。

平成2年 別冊マーガレット9月号掲載。こちらに収録。

4088497945ベイビーブルー (マーガレットコミックス)
いくえみ 綾
集英社 1991-08

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4088650735いくえみ綾THE BEST-PREMIUM!長編セレクション (クイーンズコミックス)
いくえみ 綾
集英社 2002-06

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[あ行のマンガ家]いくえみ陵 | Comments(0) | Trackback(0)
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