AX
fc2ブログ

えんじぇる/岩館真理子

2005年07月13日
4088508025えんじぇる
岩館 真理子
集英社 2000

by G-Tools

angel



◆えんじぇる…1982年16号
◆えんじぇるⅡ…1982年21号
◆えんじぇるⅢ…1982年25号
◆えんじぇるⅣ…1982年29号  週間マーガレット掲載


友達の結婚式に仲睦まじげに出席するスウと周作。スウは高校卒業と同時に周作と見合い結婚。今では2才の可愛い娘、つくしもいる理想的な夫婦だった。
しかし披露宴が終ると二人は別々の家に帰る。実は二人は離婚寸前、別居状態だった!
いきなり別居を言い渡されて戸惑う周作。そしていよいよ家族を一堂に会して、家族会議が行われる日がやってきたが…。

お見合いで知り合い、盛り上がりも何もなく結婚してしまったために、夫の気持ちがわからない。自分だって結婚したのは失恋して、その相手にあてつけのように結婚したのだから、夫の事だけ責められない。それどころか、どんどん夫に惹かれていく。相手のことを一方的に好きなのは自分だけ?…だったら辛すぎる…。そんな気持ちをもてあましたスウは、離れて暮らすことにしたのだった。

ふたりの娘、つくしちゃんもとっても可愛いけど、小さな子どもに対する愛情と苛立ちや、気持ちを口に出さない夫へのじれったさなどに翻弄される若妻スウの気持ちが初々しくてかわいい!
しかし、ほんとうに振り回されているのは周作だった。(笑)


このお話の魅力のひとつは、なんといっても主人公スウの突拍子もない行動をとる天然要素でしょう。だって、自分が周作を愛していると実感したからといっていきなり「別居」に踏み切る。
またある時はカクテルバーで知り合った男を「お持ち帰り」しちゃう。
そしてまたある時は寂しさを紛らわすために、ありとあらゆる室内ペットを買い込んだり、鉢植えを買い込んだり…。
小さなことも言えば、つくしちゃんのパンツを大量買いしてそれをシンク下に仕舞い込んだり、お皿の上にパンツを乗っけてゴハンだと出したり。
周作を慰めるつもりでブルーのスーツ(!!)を買うように勧める一方、ちゃっかり自分のワンピースもねだっちゃうのも。あれ?周作さんを慰めてるのではなかったの?と。
やることがいちいち意表をつくというか、こちらの想像を越えてるので驚かされるし笑える!岩館さんにしか描けない天然系ですよね。
しかし、本当に魅力的なのは、夫婦になってしまってからも恋愛しつづける二人の姿です。

第1話目で、二人の本当の「恋愛」が始まる。結婚2年も経ってから。

第2話では、その気持ちをオープンにするスウに対して、まだまだテレがある周作との気持ちのちょっとしたすれ違いが起きる。会社を訪ねたスウに周作が冷たかったので、スウが傷つくのだ。だけど、後に会社の同僚に聞くところでは、仏頂面で面会に行ったはずの周作が、トイレで嬉しそうに鼻歌を歌いながら髪を梳かしているのを見たと。その鼻歌がまた「世界は二人のために」だって!(笑)普通妻のために身づくろいする夫っていますかね?それを聞いてますます周作への愛を確信するスウ。

第3話、長期海外出張が決まっているのに、言い出せない周作。スウは悲しみの中から、それが仕事上仕方がないことだから、2年間はなれていても二人の愛は変わらないからと一応は納得。だけど、ちょっと寂しい第3話です。

そして第4話です。周作がいない間、寂しくないようにと、ペット…猫から始まって、熱帯魚やウサギ、文鳥オカメインコなどのトリを合計9羽と亀、部屋を埋め尽くす観葉植物の数々。周作が家に帰るたびに、気が付くたびに何だかんだと新メンバーが登場する。
一種の神経症ですよね。寂しさから逃れるための強迫神経症?
元カレの先輩まで引っ張り出されては、周作は心穏やかではなく、スウと気持ちがスレ違うけど冷静に考えて、スウの愛情の深さに自ら気付き(ここがエライ!!!)単身赴任をやめ、スウとつくしもアメリカに連れて行くことにする。離れたくない、いつも一緒にいたい、それが結論。

夫婦でも恋愛できるんだ…と言うのを、微笑ましさと笑いと、そして切なさのうちに描いている、とってもステキな物語です。

岩館真理子自選集 (3) えんじぇる 集英社文庫―コミック版
岩館 真理子
4086172305


408855079Xえんじぇる,月にはChristmas,赤い淡い夜がすき
岩館 真理子
集英社 1991-10

by G-Tools

スポンサーサイト



[岩館真理子]Review | Comments(8) | Trackback(1)
Comment
Re: はじめまして。
はるのふゆさん、こんにちは!
お返事が遅くなってすみません!
書き込みありがとうございました!
はるのふゆさんも、岩館ファンなんですか。
お仲間大歓迎です(^^)
「ふたりの童話」うんうんうん!!いいですよね!!
いとしくて切なくてかわいい~~。
どろどろしたものも好きなんですが、ああいう切ないのも大好き。
最近の「見上げてごらん」なんかは、あの路線に戻った感じです。
次の作品が読めるのはいつか、楽しみですね!
はじめまして。
やっと探してた本のタイトル見つけられました!
ずっと探しててなかなかタイトルとストーリーもあやふやで……
私も岩館ファンです☆
特に私のフェイバリットは『ふたりの童話』。
ありがとうございます!!
goldiusさん、いらっしゃいませ。
沢山のコメントとTBありがとございました!!
わたしもTB返しをさせていただきたいのですが、おいおいとぼちぼちとさせてください。

主観マーガレットで主婦ネタはそぐわないような気もします。わたしは単行本で読んだのですが(別冊マーガレットが好きでした)初期のお話のような中高生が主人公の話から、作者の成長振りが伺えますね。
主婦が主人公なので、レディコミ時代の作品と思い込んでましたが、週マ掲載作品でしたか。自分の記憶違いが正され参考になりました。
>karinさん♪
いえいえどういたしまして。いつでもおっしゃってくださいね(笑)
ブログにアップした写真は(ってAmazonの画像だけど)文庫版ですね。
わたしも古いマーガレットコミックスで持っていますよ。おおきい絵のほうが好きなので文庫はイマイチ苦手です^^;
でも、文庫はあとがきがあったり解説がついていたりしてそれが嬉しかったりもしますよね♪
おお,ありがとうございます。何でもないことですが,喉に魚の骨の刺さった気持ちでした。またぜひ来ます!
それと気づいたのですが,本の装丁が変わっているんですね。自分は古い本を持っています。また売っているなら探そうかな。
>Karinさん♪
ようこそいらしゃいました!見つけてくださってありがとうございます!岩館さんのマンガはほんっとに大好きで大好きで。だからコメントをいただけて本当に嬉しいです!お褒め頂いてありがとうございます。でも、まだまだ美味くない部分が多いので、時々は読み返して手直ししたり書き加えたりしています。「えんじぇる」ももっとちゃんと感想を書きたい作品の筆頭です。また近日中に書き直しておきますから、よかったらたまに覗きに来てくださいませ。岩館さんのファンの方とはぜひとも色々お話したいですね♪
あ、周作さんの苗字(ですね?それともスウの結婚前の苗字?)はたしか、天森ですね♪
岩館真理子さんの作品情報を探していてここを見つけました。素晴らしいです!こんなにうまくまとめているサイトがあったなんてっ!
自分もたくさん岩館さんの作品が好きで特にこの「えんじぇる」と「ふくれっつらのプリンセス」,「チャイ夢」,「4月の庭の子供たち」等のホカホカした時代の作品が好きです。
ところで,スウさんの苗字ってなんでしたっけ?思い出せなくて。

管理者のみに表示
Trackback
デビューしたての頃の岩館真理子の方が好きですが、レディースコミックに流れ着いても乙女チックで、主婦が夢見るシーンが延々と続くこれは、凄いバラダイムシフト。主婦になっても、純真な少女の精神の持ち主の物語。「私は結婚してしまったんだ、結婚してし