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天上の弦/山本おさむ

2004年12月03日
天上の弦 5 (5)
山本 おさむ
4091871151

1929年、現在の韓国慶尚北道の小さな村で生れた少年、陳昌鉉。
お乳の出ない母親は、日に日に栄養失調で弱っていく我が子にお乳を恵んでもらうために、毎日山の向こうの隣村まで足を運んだ。
お陰で一命を取り留めた昌鉉だったが、お乳をくれた母親の赤ん坊が、突如死んでしまう。
もう、お乳をもらいに来ないでくれというその家のあるじ。
自分の子供が死んだのに、人の子供に乳をやることはあまりにも母親にとってむごい事だと。
死んだ赤ちゃんのために祈る昌鉉の母。赤ちゃんのために祈りながらも我が子昌鉉をお守りくださいと念じずにいられないのだった。
そのとき、天上から聞こえてきた美しい音、それは旅人が奏でるバイオリンの音色だった。そして、その音を聞いて全身で喜びを表す赤ん坊の昌鉉、それがバイオリンと昌鉉の出逢いだった。

「東洋のストラディバリウス」と呼ばれる名器を作り上げた稀代のバイオリン製作者、陳昌鉉氏。
その波乱の人生を描いた自伝「海峡を渡るバイオリン」(河出書房新社)を2002年に出版。
それを漫画化した作品が、本作だということです。
今5巻までを読んだのだけど、誕生から戦争、来日、終戦、そして戦後の混乱を生き抜き、バイオリン作りへの道を歩もうとするところまでが描かれている。
ここまでが既に波乱万丈の少年時代なのだ。
どのシーンもすごく印象的で感動せずにいられません。
お母さんの愛情も大きく感動的だし、日本人教師相川喜久衛さんとの出会いと分かれ。
日本の軍国主義が幅を効かせる韓国で、辛い思いをする昌鉉や村の人たち。
日本に渡って、教師資格をとろうとしても韓国籍だということがその夢を阻む。母親と誓った夢なのに。
そして、その絶望の中で、バイオリンを作ると言う目的を見つける。けれど、その夢もまた韓国人だということで思うようにならないのです。
また、母と妹のいる祖国でも、朝鮮戦争という同族人同士の悲惨な戦争が悲劇を生んでいる。

ただ、こんな暗い時代に、絶望的な状況に置かれながらも、いつも前を見て諦めず自分にできることに挑戦していく主人公や、遠く離れているけれどお互いに思い合いながら生きる母と妹の真摯な姿が、読者をひきつけて離しません。
とりあえず5巻までの感想まで。


海峡を渡るバイオリン
陳 昌鉉
4309014941

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山本 おさむ
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4091871119

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[や・ら・わ行のマンガ家]山本おさむ | Comments(1) | Trackback(0)
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